【肩の痛み】ウォールスライドエクササイズの効果

スポーツケア

肩の痛みを抱えている人たちの肩甲骨(アライメント)には特徴的な姿勢の傾向があります。

その中のひとつに「SDR : scapular downward rotation(肩甲骨の下方回旋)」という姿勢があります。

このような肩甲骨の姿勢が、肩峰下疼痛症候群につながっている可能性も指摘されています。

このSDR(肩甲骨の下方回旋)を抱えている人は、腕を上げる動作(肩関節外転)をするとき

✔肩甲骨が上方回旋がスムーズに動かない

✔肩甲骨の挙上で動きを代償してしまう

それによって僧帽筋上部繊維が過度に働き、痛みの発生につながることもあります。

では、肩甲骨の上方回旋がスムーズに動かない場合、どこの筋肉の働きが弱いのか?

この場合「前鋸筋」の弱さが考えられるでしょう。

今記事では、肩の痛みを抱えている人を対象に2種類のエクササイズを4週間にわたって実施し効果を比較した研究論文をご紹介いたします。


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論文紹介

The effects of wall slide and sling slide exercises on scapular alignment and pain in subjects with scapular downward rotation
著者:Tae-Ho Kimら
公開日:2016年9月29日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5080198/

内容:肩の痛みを抱える人に対する2種類のエクササイズ効果を比較

対象者

・肩甲骨の下方回旋角度(DRA)が0°未満
・4週間以上に渡って僧帽筋上部に痛みを感じている人

この2点を満たすことで被験者として選択されました。

22名の男性(大学生)が実験に参加。

実験参加者を半数に2種類のエクササイズへ分けられました。

①wall slide exercise(ウォールスライドエクササイズ)11名
②sling slide exercise(スリングスライドエクササイズ)11名

ウォールスライドエクササイズとは、

・壁に向かって足を肩幅に広げて立つ
・肩関節と肘関節を90°に曲げる
・前腕(尺骨)を壁に当てる
・前腕をそのまま上下にスライドさせる

スリング(TRXのような道具)スライドエクササイズとは、

・足を肩幅に広げて立つ
・サスペンションを肘関節の高さに調整
・肘関節を90°に曲げてサスペンションに腕を置く
・体を前方に移動(体重をサスペンションに乗せる)
・ウォールスライドと同様に、肩関節を屈曲していく

実験内容

実験参加者は、エクササイズを4週間(週に3回)実施しました。

・1週目:10回×3セット
・2週目:15回×3セット
・3週目:20回×3セット
・4週目:25回×3セット

結果:ウォールスライドエクササイズが効果的である可能性が発見されました!

実験前後で以下の3点を調査しました。

・肩甲骨のアライメント
・圧痛(デジタルアルゴメーターを使用)
・主観的な痛み数値化(ビジュアルアナログスケールを使用)

【比較した結果】ウォールスライド運動を実施したグループで
◎肩甲骨のアライメント改善
◎僧帽筋上部の圧痛が減少
◎主観的な痛みの数値も改善

以上のような結果が出てきました。


私見まとめ

今回の研究で比較されたエクササイズは、

「ウォールスライド」と「スリングスライド」の2種類でした。

結果としては、肩甲骨下方回旋を抱えており肩の痛みを感じている人に対しては、「ウォールスライド」が優れている可能性が示唆されました。

前鋸筋を強く働かせるため、肩甲骨の上方回旋運動に関与するエクササイズとしては

「ウォールスライド」の動きが適していると考えられます。

だからとって「スリングスライド」TRXのようなサスペンションを使用したトレーニングは不要であるということではありません。

当たり前ですが、何をターゲットとして運動を実施するのか?

どんな効果を期待してエクササイズを選択するのか?

こういった点を再認識させられる研究論文だな〜って感じながら記事を書いておりました。

次回の記事では、スリング(サスペンション)を使用した論文をご紹介したいと思います。

ウォールスライドエクササイズ動画

肩甲骨の挙上(肩が上がるような動作)は、なるべく無くしたまま、前腕を上昇させていきます。

肩甲骨の上方回旋(下角が外側へ広がるような動作)をイメージしながら動かしていくことがオススメです。

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