トレーニングと「お休み」は、セットで計画していこうね。【アスリートの睡眠について】

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アスリートのパフォーマンスを上げたいなら、どうすればいいか?
たぶん多くのアスリートはこう答えるでしょう。
「もっと練習する」「もっと追い込む」「もっと努力する」

練習やトレーニングに励むことは、大前提として、「睡眠」という視点を今記事では加えていきたい。

「あなたは、“ベターな状態の自分”で練習に向かえているだろうか?」

トレーニングは身体を変える手段です。けれど、“どんな状態でトレーニングに臨んでいるのか”によって、その効果は大きく変わってくるはず。
それにもかかわらず、多くのスポーツ現場では「寝不足だけど気合いでどうにかしろ」「睡眠は削るしかない」といった声があふれているようにも感じます。

回復が追いついていない状態での練習およびトレーニングは「疲労の上書き」にしかなりません。。

この記事で読者に伝えたいこと

「睡眠と向き合うこと」は、単なる健康管理ではなく、競技力を根本から変える“戦略”であるということ。

睡眠時間は足りているか。
その質はどうか。
夜中に目覚めていないか。
朝、脳がぼんやりしていないか。

これらを、なんとなくでも良いから振り返ってみたい。

われわれは、練習やトレーニングに対しては繊細な調整を加えます。
だけど、「休養」や「回復」に対しては、あまりにも雑になってしまいがち。

自分の身体が「出し切れない状態」のまま、努力を続けてしまっていないか。一度、立ち止まって考えてみたいね。

目次

研究論文の紹介

題名:Effects of sleep deprivation on sports performance and perceived exertion in athletes and non-athletes: a systematic review and meta-analysis
著者:Yan Kongら
公開日:2025年4月1日
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11996801/

睡眠不足の種類(完全な剥奪、前半の短縮、後半の短縮)が、どのようにスポーツ能力に影響するかを分析した研究。

論文結論

✅すべての睡眠不足のタイプがアスリートの運動能力をマイナスに作用させることが明らかになりました。
中でも注目すべきポイントは以下の通りです。

  • 一晩全く眠らない状態(TSD)では、有酸素持久力の低下が顕著
  • 就寝時間を遅らせることによる睡眠不足(PSDE)では、爆発的パワー、最大筋力、スピードに強く悪影響
  • 起床時間を早めることによる睡眠不足(PSDB)では、スキル制御能力が非常に大きく低下

また、RPE(きつさの感じ方)はどの睡眠不足でも増大し、午後の時間帯の方が悪影響が強く出る傾向があった。

これらの結果から、以下のように結論づけられています。

「睡眠の質とタイミングは、アスリートのパフォーマンスに大きな影響を及ぼす。競技力を維持・向上させるためには、単に睡眠時間を確保するだけでなく、“どの時間帯にどのように眠るか”にも注意すべきである」

研究内容

この研究では、「睡眠不足の種類がアスリートの身体能力にどのような影響を与えるのか?」を明らかにするために、過去の研究を分析・比較したシステマティックレビューとメタアナリシスが行われました。
具体的には、以下の3つの異なるタイプの睡眠不足を取り上げています。

1. 完全な睡眠剥奪(TSD)
 → 一晩まるごと眠らない状態。

2. 睡眠の前半だけを削る(PSDE)
 → いつもより遅く寝るが、起きる時間は変えない。つまり、入眠が遅くなる。

3. 睡眠の後半だけを削る(PSDB)
 → いつもと同じ時間に寝るが、早く起きる。つまり、早朝に無理やり目覚める。

これらの睡眠パターンによって、次のようなスポーツパフォーマンスの指標がどう変化するかを調査。
有酸素持久力
爆発的パワー
最大筋力
スピード
スキル制御(運動の正確さや協調性)
RPE(運動中の主観的なきつさ)

研究では、過去の複数の実験データを統合し、それぞれの項目に対する影響の大きさ(効果量)を算出。

私見まとめ

アスリートにとって「休むこと」は「止まること」とイコールではないのよ。
むしろ、戦略的に休むことが“成長を進める時間”であるとも言えるね。

トレーニングは、ストレス刺激に対して、「身体が適応」することによって成長していくものです。

トレーニングとセットで計画される「お休み」は、身体の適応を進める大切なピースとなるもの。

睡眠不足のまま練習することは、潤滑油のないエンジンを回し続けるようなものだね。
いつか壊れるだけでなく、性能のすべてを使いきれないまま、努力が浪費されちゃう。
であれば、われわれの「トレーニングの質」とは、練習時間や強度だけではなく、「どんな状態で挑むか」で決まると言っても過言ではないかも。練習やトレーニングが始まる前に、ある程度の「質」は決まっているのかもね。

そして、こう考えてみてください。

なんだか成長が止まっているように思えたら、
見直してみるリストは「新しい練習メニュー」だけでなく、「質の高い睡眠」も追加したい。

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この記事を書いた人

山﨑 裕太のアバター 山﨑 裕太 コーチ

アスリートのコーチングが仕事
オリンピック選手指導
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