アスリートにとって効果的なトレーニング方法を選ぶことは、競技パフォーマンス向上への鍵です。その中でもインターバルトレーニングは、世界中で取り入れられているトレーニング手法です。
しかし、とりあえず「インターバルトレーニングをすれば良い」という単純な考えだけでは浅はかすぎます。
この記事では、アスリートの皆さんやコーチの方々に向けて、インターバルトレーニング(運動:レスト)の具体的な手法についての例を挙げていきたいと思います。
インターバルトレーニングとは何か?
インターバルトレーニングは、高強度の運動と回復期間(インターバル)を交互に繰り返すトレーニング方法です。この「運動と回復のリズム」が身体に適切な刺激を与え、能力を向上させます。
インターバルトレーニングが効果的な理由は、一定のペースで続ける持続的なトレーニングよりも、高い強度で区切られた時間の運動を繰り返すことで、心肺機能や筋肉により強い刺激を与えられるからです。また、運動と回復の組み合わせを調整することで、目的に合った能力を効率よく向上させることができます。
HIITの分類
— 山﨑 裕太(Yamazaki Yuta) (@hari_sports_YY) February 13, 2025
【Aerobic】有酸素性インターバルトレーニング
1. Aerobic HIIT traditional
運動時間2〜10分
(運動1 : レスト0.5)
2. Aerobic HIIT intermittent
運動時間15〜60秒
(運動1 : レスト0.5〜1)
【Anaerobic】無酸素性インターバルトレーニング
– スピード持久 –
3. Speed endurance… pic.twitter.com/2vq2EYxbrp
エネルギー産生システムとインターバルトレーニング
人体のエネルギー産生は大きく「ATP-PCr系」「解糖系」「ミトコンドリア系」の3つのシステムに分類されます。
インターバルトレーニングの本質は、これらのエネルギー産生システムに計画的に負荷をかけ、その回復過程を通じて適応を促すことにあります。
高強度の運動を繰り返し行うことで、体は複数のエネルギー供給系を切り替える能力を向上させます。特に注目すべきは、休息期間(インターバル)における不完全回復の概念です。完全に回復させずに次の高強度運動を行うことで、体はより効率的なエネルギー代謝能力を獲得していきます。

インターバルトレーニングの具体例
有酸素性能力(VO2max)の向上
✅HIIT (運動4分:レスト3分)×4
– 運動4分(95%VO2maxスピード)
– レスト3分(アクティブレスト)
×4セット
有酸素性および無酸素性能力の向上
✅HIIT (運動20秒:レスト10秒)×8
– 運動20秒(170%VO2maxスピード)
– レスト10秒(パッシブレスト)
×8セット
(参考:Tabata training in perspective)
✅HIIT(運動30秒:レスト4分)×4-6
– 運動30秒(スプリント)
– レスト4分(パッシブレスト)
×4-6セット
無酸素性能力の向上
✅SIT(運動10秒:レスト60秒)×6
– 運動10秒(全力)
– レスト60秒(パッシブ)
×6セット
(参考:Adaptive Changes After 2 Weeks of 10-s Sprint Interval Training With Various Recovery Times)
(参考:High-Intensity Cycling Training|The Effect of Work-to-Rest Intervals on Running Performance Measures)
✅SIT(運動6秒:レスト18秒)×6-10×2ラウンド
– 運動6秒(全力)
– レスト18秒(パッシブレスト)
×6-10セット×2ラウンド
スプリント能力の向上
✅SIT(運動6秒:レスト54秒)×6-10×2ラウンド
– 運動6秒(全力)
– レスト54秒(パッシブレスト)
×6-10セット×2ラウンド
インターバルトレーニングの効果を最大化するための原則
適切な強度設定
トレーニング効果を最大化するためには、目的に合った正確な強度設定が不可欠です。
心拍数ベース: 最大心拍数(HRmax)の割合で強度を設定する方法。有酸素能力向上には85〜95%HRmax、持久力向上には75〜85%HRmaxが適切です。ただし、短時間の高強度インターバルでは心拍応答が遅れるため、他の指標と併用することが望ましいでしょう。
主観的運動強度(RPE): 主観的な強度を評価。経験豊富なアスリートでは比較的正確ですが、個人差や日々の変動があることに注意が必要です。
生理学的指標: 乳酸閾値や最大酸素摂取量などの生理学的検査に基づく強度設定がより正確です。例えば、VO₂maxの90〜100%は一般的に最大心拍数の92〜100%、乳酸閾値の強度はVO₂maxの80〜90%に相当します。
競技パフォーマンスベース: 実用的なのは、実際の競技パフォーマンスに基づく設定です。例えば、レースタイムに基づいてトレーニング強度を算出する「VDOTシステム」などが有効です。
回復期間の最適化
インターバルトレーニングの効果は、運動時間と強度だけでなくレスト時間の設定にも大きく影響を受けます。
パッシブレストvsアクティブレスト: スピードや神経筋パワー向上を目的とする場合は、質の高い運動を確保するために完全回復に近いレストが適切です。一方、有酸素能力や乳酸緩衝能力の向上を目指す場合は、不完全回復(またはアクティブレスト)により、より大きな生理的ストレスを与えることが効果的です。
回復の個人差: 回復能力には大きな個人差があります。心拍数の回復速度や主観的疲労感を指標にして、個々のアスリートに適した回復時間を設定することが重要です。
漸進的過負荷の原則
トレーニング適応を継続的に促すためには、漸進的に負荷を高めていくことが必要です。
強度の漸進: まずは適切な強度でのトレーニングに適応し、その後徐々に強度を高めていきます。欲張らないようにね。
量の漸進: インターバルの本数や総距離を徐々に増やしていきます。
回復時間の短縮: 同じ運動強度・量を維持しながら、回復時間を徐々に短縮することも効果的な漸進方法です。例えば、最初は50m高強度:200mジョグの1:4比から始め、50m高強度:150mジョグ、さらに50m高強度:100mジョグと回復距離を減らしていく方法があります。
複合的漸進: 実際のトレーニングでは、これらの要素を組み合わせて漸進させることが多いです。ただし、一度に複数の変数を大きく変化させると過度な負荷になるリスクがあるため、取り組みやすい変数を少しずつ調整することが望ましいでしょう。
私見まとめ
インターバルトレーニングは、目的に応じて適切に設計することで、アスリートのパフォーマンスを向上させるためのツールです。重要なのは、「なぜそのトレーニングを行うのか」という目的を明確にし、それに合った内容を選択し実行すること。ただなんとなく、言われたからヤル。それでは効果も薄くなっちゃうかもよ。
トレーニングの本質は”継続”が鍵です。自分の体の反応を観察し、進捗を定期的に評価しながら、長期的な視点でプログラムを組み立てていきましょう。
そして何より、インターバルトレーニングの「キツさ」を乗り越えた先に、パフォーマンス向上という大きな喜びが待っていることを忘れないでね\(^^)/