競技スポーツにおける「メンタルの重要性」は、もはや常識として語られています。
しかし、具体的にどんな心理的要素がどのようにパフォーマンスに影響するのか、その構造やメカニズムについては、まだまだ解明されていない部分が多いのが現状かと。
水泳という個人種目は、技術の精度はもちろん、プレッシャー状態での集中力や自己管理能力が直接タイムに反映される競技だと思われます。
だからこそ、選手一人ひとりの心理的特性を理解し、それをどう活かして育てていくかが選手自身にとっても指導者にとっても鍵になるんじゃないかな。
この記事を通して読者に伝えたいこと
なんとなく「メンタルが弱い」で終わらせるのではなく、どういった要素をどのように伸ばしていけばいいのか、考えていこうぜ。
そして、「ストレスは敵じゃない」ということ。 ストレスそのものが悪いわけではなく、それをどう評価・解釈するかによって、パフォーマンスへの影響はきっと大きく異なるはず。この視点の転換ができれば、プレッシャーのかかる場面での立ち振る舞いが大きく変わるかもね。
こういった視点を持つことで、日々の指導や練習に対する姿勢が変わり、結果として選手のパフォーマンス向上に繋がっていけば良いなと思います。
研究論文の紹介
この研究は、中国の北京師範大学の研究チームによって行われ、中国国内から集められた水泳選手(n=603)を対象とした。参加者は国際レベルから国内レベルまで、様々な競技レベルの選手が含まれた。
これまで個別に研究されることが多かった心理的要素を統合的に分析すること。Peterson & Seligmanの「性格の強さ」理論と、Mischelの「認知的・感情的パーソナリティシステム(CAPS)」理論を組み合わせ、選手の心理構造を多角的に解明しようとしたもの。
題名:Psychological mechanism of character strengths and psychological stress affecting the athletic performance in swimmers
著者:Ze Wangら
公開日:2025年7月22日
https://www.nature.com/articles/s41598-025-11936-5
測定された4つの心理的要素
▶︎性格の強み(Character Strengths)
– 親近感(Affinity): 他者との関係構築能力、チームワーク
– 活力(Vitality): エネルギッシュさ、積極性
– 意志力(Willpower): 目標達成への持続力、自制心
▶︎心理的ストレス(Psychological Stress Appraisal)
– チャレンジ評価: ストレスを成長機会として捉える
– 脅威評価: ストレスを危険として捉える
– 怪我評価: ストレスを身体的リスクとして捉える
▶︎自己効力感(Self-Efficacy)
– 「自分にはできる」という信念の強さ
– 困難に直面した時の粘り強さ
▶︎未来の自己連続性(Future Self-Continuity)
– 現在の自分と将来の自分との一貫性の感覚
– 長期的な目標への意識
主な研究結果
✅「性格の強み」は競技レベルと正比例
高い競技レベルの選手ほど、親近感、活力、意志力のすべてが高いスコアであった。これは、技術的な能力だけでなく、人格的な成熟も競技成績に重要であることを示している。
✅「ストレス評価」の方向性がパフォーマンスを決める
同じストレス状況でも、「チャレンジ」として捉える選手は高いパフォーマンスを発揮し、「脅威」や「怪我のリスク」として捉える選手はパフォーマンスが低下する傾向があった。
✅「自己効力感」が「性格の強み」をパフォーマンスに変換する
性格の強みは、自己効力感を通じて間接的に競技パフォーマンスに影響することが明らかになった。つまり、いくら性格的な強みがあっても、「自分にはできる」という信念がなければ、それを結果に結びつけることは難しいということ。
✅「未来の自己連続性」が「ストレス評価」を好転させる
将来の自分への明確なイメージを持つ選手ほど、ストレス状況を「チャレンジ」として捉えやすく、結果的に高いパフォーマンスに繋がると考えられる。
私見まとめ
いわゆる「メンタルが強い選手」と表現されてきた選手たちの正体に関するヒントのようなものについて記事を通して考えてみました。
強い選手ってのは、単に「気が強い」わけではなく、心の働きをうまくコントロールできている人たちなのかもだね。
忘れがちだけど大切なこと
技術指導”だけ”では不十分
選手の人格にも目を向ける必要があるね。練習の中に、協調性や積極性、持続力を育む要素を意図的に組み込んでいきたい。
ストレスマネジメント教育の必要性
選手にストレス回避の方法を教えるのではなく、ストレスを成長機会として解釈し直す「リフレーミング」とか「メタ認知」とかの技術を教えると良いかもだね。これは普段から意識的に取り組むべき課題。
個別化された自己効力感の育成
ただの励ましではなく、それぞれの選手の現在地に合わせた「できる体験」を積極的に設計していきたいね。
小さな成功体験の積み重ねが、きっと大きな自信に繋がっていく。
長期的なビジョン共有の重要性
短期的で目先の結果だけでなく、中長期的な思考も獲得していって欲しい。
「なぜ今この練習をしているのか」「将来どんな選手になりたいのか」を選手と継続的に対話し、共有していこ。
最後に
本当に強い選手ってのは、技術や体力の優劣だけで測れるものではないですね。
心の扱い方が上手だったり、自分自身を理解していたり、他者との関係の中で成長し続けようとする力を持った人かもねと考えさせられました。
だからこそ、われわれコーチや指導者は、「練習を教える人」で終わっちゃいかんね。
選手とともに未来を描きながら、そんな成長を支える存在でありたいものです。そしてたまには痴態すらも晒していこw世の中はこんな理不尽で不合理なヤツもいるんだぞって。。
強さとは、教えられるものではなく、育まれるもの。
情報だけで知った気になりがちだけど、「身体を通して得られる心」を大切にしていきたい。

