No.179 水泳スプリントトレーニング【パラシュートの効果】

競技力向上

スプリンターにとって、『テンポが上がらない』『最後までテンポを維持できない』

こんな課題に対するトレーニング方法として、抵抗(パラシュート)スイムというものがあります。

今記事では、抵抗(パラシュート)スイムについて考察していきたいと思います。

継続的に取り入れることで、どのような効果が期待できるのか?

ストローク技術的に、どのような点へのアプローチが可能なのか?

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論文紹介

題名:The influence of an 11-week resisted swim training program on the inter-arm coordination in front crawl swimmers
著者:Ioannis Valkoumasら
公開日:2020年6月19日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32552582/

論文結論:11週間(週4回)のトレーニング期間後、パラシュート着用群でタイム短縮が見られた。

✔抵抗(パラシュート)スイムトレーニングを実施したグループで、クロール50mのタイム短縮が見られた。

✔ 抵抗(パラシュート)スイムトレーニングを実施したグループで、 ストローク率(Stroke rate)の向上が見られた。

論文内容:女性ジュニアスイマーが実験に参加

<参加者>

・14名の女性水泳選手が実験に参加(年齢12~14歳、競技歴の平均は約4年)

<実験内容>

・11週間のトレーニング期間が設定された。

・期間の前後で、50m全力クロールを2本(壁プッシュスタート)測定した。

・2つのグループに分けられた
①抵抗(パラシュート)着用グループ
②抵抗(パラシュート)無しグループ

・週に4回のスプリント・トレーニングを実施
月曜:15m×6本×3セット(60秒サイクル/セットレスト5分)
火曜:25m×4本×2セット(90秒サイクル/セットレスト5分)
木曜:15m×6本×3セット(60秒サイクル/セットレスト5分)
金曜:25m×4本×2セット(90秒サイクル/セットレスト5分)

ストロークへの影響について

私見まとめ

今回紹介した研究論文では、11週間というトレーニング期間でした。

その期間の抵抗スイム(パラシュート)トレーニングによって、泳速度の向上が見られました。

泳速度が向上した要因は何か?

泳ぎの指標としては、

✅「ストローク長」の変化は見られなかった。

✅「ストローク率」の上昇が見られた。

この事実をどのように考えるか?

トレーニングによって向上する能力を、大きく2つ(ハードとソフト)に分けて考えてみます。

①ハードウェア(筋肉・筋肥大)

②ソフトウェア(神経・運動単位)

参考記事↓

No.135 ウエイトトレーニングを実施する意味について説明する際に用いる例え話【スポーツ選手と競技コーチへ】


抵抗(パラシュート)トレーニングによって、向上した能力を『ストローク率の向上』だと考えてみます。

ストローク率の向上を深堀してみる

ストローク率が向上したというのは、つまり、「1かき」の時間が短くなった・速く腕を回せるようになった。ということになります。

「1かき」の”どの部分”が速くなったのか?

✅クロールストローク局面は「4つ」に分類されます。

①エントリー&キャッチ(Entry & Catch)
②プル(Pull)
③プッシュ(Push)
④リカバリー(Recovery)

参考記事:No.173 【水泳】クロールにおける腕ストロークのコーディネーション【3種類】

✔抵抗(パラシュート)トレーニングを実施したグループは、推進力を生み出していない局面(①&④)にかかる時間が短縮されたと考えられます。

なぜ、ストローク率は向上し、ストローク長は伸びなかったのか?

仮定として、

ストローク長を「筋肉系」つまり『ハードウェア』

ストローク率を「神経系」つまり『ソフトウェア』

というように分類してみます。

11週間という期間の介入によって、

「神経系(ソフトウェア)」の適応は発生したが、

「筋肉系(ハードウェア)」の発達は明らかなほどに貢献しなかった。

このように考えることが出来ます。

つまり、ストローク長を向上させるには

別のアプローチまたは、もっと長期間の介入が必要であると言える。

“身体”という大きな枠で考えると、水泳練習も筋トレと同様であると捉えられるね。


当チームで使用しているパラシュートはコチラ↓

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