肩関節の位置感覚を向上させるトレーニングとは?

前回の記事では、水泳選手のスイム練習後は「肩関節の位置覚にエラー(誤差)が生じる傾向にある」という内容の記事を更新しました。

No.139 水泳選手の「スイム練習」が肩関節へ及ぼす悪影響

今記事では、

肩関節の位置覚を調査した研究論文を2つご紹介したいと思います。

1つは、上半身の「筋力(ウエイト)トレーニング」での実験。もう1つは、いわゆる「肩のインナーマッスルトレーニング」

肩関節の位置感覚に良い影響を与えたトレーニングはあったのでしょうか??

目次

論文紹介①筋トレと肩関節位置覚

題名:Strength Training and Shoulder Proprioception
著者:José Inácio Sallesら
公開日:2015年3月
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4477923/

論文結論:ウエイトトレーニング(8週間/週3回)が肩の位置覚(神経筋制御)の改善に役立つことが示唆されました

☑筋力トレーニングを実施した群は、実施しなかった群と比べて、JSP(関節位置の再現性)能力が向上した

☑8週間の筋力トレーニングによって、肩の固有受容感覚の改善に貢献することが示唆されました

論文内容:3グループに分けられ、筋トレ4種目を8週間に渡って実験されました

🔽90名の男子大学生が実験に参加

🔽3つのグループに分類「①=4種目を同じ強度で実施(8-9RM) / ②=4種目を異なる強度で実施(8-9RM,12-13RM) / ③=筋トレ無し」

🔽筋トレ群は4種目を実施しました(ベンチプレス,ラットプルダウン,ショルダープレス,シーテッドロー)

🔽期間は8週間、筋トレは週に3回実施されました。

🔽肩関節の位置覚は、JPS(joint position sense:関節位置再現テスト)によって調査されました。

※詳しくは、リンク先のフルテキストを御覧ください。

論文紹介②インナーと肩関節位置覚

題名:Exercises focusing on rotator cuff and scapular muscles do not improve shoulder joint position sense in healthy subjects
著者:Yin-Liang Lin and Andrew Karduna
公開日:2016年7月29日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5026609/

論文結論:ローテーターカフ強化トレーニング実施(4週間/週3回)では、肩関節位置覚の改善が見られませんでした

☑トレーニング実施群では、実施しなかった群と比べて、肩の強さ(チカラ)は有意に向上しました。

☑どちらの群でも、JPS(関節位置感覚テスト)には影響がありませんでした。

論文内容:2グループに分けられ、肩ローテーターカフ運動を4週間に渡って実験されました

🔽36名(男性17名/女性19名)の大学生が実験に参加

🔽トレーニング実施群(18名)、トレーニング無し群(18名)にグループを分けました。

🔽トレーニング群は、4週間に渡り週に3回を実施しました。

🔽トレーニングの内容は、肩のリハビリテーション運動が実施されました。オープンチェーンもクローズドチェーンもどちらのエクササイズも取り組まれました。

私見まとめ

競技力向上において、必要な要素(能力)の1つは

自分の体を思ったようにコントロールすること」です。

肩関節および肩甲帯は動きの自由度も高く、イメージ通りにコントロールすることが難しい部位かもしれません。

関節の位置感覚を向上させるためにも「筋力(ウエイト)トレーニング」が効果的であることが示唆されました。

また、いわゆる「肩のインナーマッスルトレーニング」は関節位置感覚の向上には効果が見られなかったとされる研究もありました。

あらゆるトレーニングは手段であり、それぞれが期待する効果によって、取り組むべきトレーニングは異なるでしょう。

例えば、「肩のインナーマッスルトレーニング」が関節位置感覚にとって良い効果が見られなかったからといって、それ自体を否定するものではありません。

求める(期待する)効果と、実際に得られる効果をできる限り認識して取り入れていきたいものです。


こういった研究論文を読み、発信する際に「注意している点」があります。

それは、多角的・多面的にモノゴトを見ることです。

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