高強度トレーニング(HIIT)は、女性と男性で同じ内容で良いのか?

トレーニング指導者の間で、よく聞くテーマの一つ

「女性は1本で出し切れない人が多い!だから女性と男性でトレーニングの内容は異なる!」

競泳コーチの方々から、お話を伺っていても同様のことが聞かれます。

性差によって、トレーニング内容はどのように異なるのか?

またはどのように変えていくべきなのか?

だれかの成功談を、そのまま鵜呑みにして取り入れていくことが正解なのか?

そのようなコトについての考えるヒントとなるような記事となったら幸いです。

目次

論文紹介①

題名:Recovery from Different High-Intensity Interval Training Protocols: Comparing Well-Trained Women and Men
著者:Laura Hottenrottら
公開日:2021年3月2日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/labs/pmc/articles/PMC8000557/

論文結果:性差が見られる

✅全力30秒×4本HIIT中の出力低下は、女性よりも男性のほうが明らかに大きかった。

✅女性のほうが男性よりも、インターバル中での回復が早かった。(つまり出力低下が少ない)

✅しかし、主観的な運動強度は、女性のほうが男性よりも回復が遅かった。

論文内容:30秒×4回のHIIT(サイクルエルゴメーター)

<参加者>

女性11名(平均年齢32歳)、男性11名(平均年齢33歳)の持久系(トライアスロンおよび自転車競技)アスリートが実験に参加。

<実験内容>

1週間ごとに3種類のレストの異なるHIITプロトコルを実施。

①30秒×4本×レスト1分
②30秒×4本×レスト3分
③30秒×4本×レスト10分

論文紹介②

題名:Sex Differences in High-Intensity Interval Training–Are HIIT Protocols Interchangeable Between Females and Males?
著者:Boris Schmitzら
公開日:2020年1月29日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/labs/pmc/articles/PMC7000457/

論文結果:性差が見られる

✅「30秒×4本×レスト180秒HIIT」を実施した女性は、1回目の実験でも8回目の実験でも、1本目から4本目にかけての走速度低下は見られなかった。

※男性では、1回目の実験で走速度の低下が見られたが、8回目の実験では走速度低下が見られなかった。

✅「30秒×4本×レスト180秒HIIT」を実施した女性は、1回目の実験と比較して、8回目の実験でもトレーニング効果は見られなかった。

※男性でもトレーニング効果の有意差は見られなかったが、データを見ると若干の効果があるのでは?と見える。

✅「30秒×4本×レスト30秒HIIT」を実施した女性は、1回目の実験と比較して、8回目の実験で、走速度の向上が見られた。

✔つまり、特に女性の場合は「レスト」を短くすることでトレーニング効果が向上する可能性が示唆される。

論文内容:4週間(週に2回)のHIIT実験

<参加者>

体育学部の大学生38名が実験に参加。

グループ1(30秒×4回、レスト180秒):17名(女性12名/男性5名)

グループ2 (30秒×4回、レスト30秒) :21名(女性14名/男性7名)

<実験内容>

4週間(週に2回)の高強度インターバルトレーニング(ランニング)を実施。

論文紹介③

題名:Metabolic response in type I and type II muscle fibers during a 30-s cycle sprint in men and women
著者:M Esbjörnsson-Liljedahlら
公開日:1999年10月
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10517759/

論文結果:性差が見られる

✅筋肉グリコーゲンの減少は、男性よりも女性の方が42%小さかった(Ⅰ型繊維において)

論文内容:30秒の全力スプリント

<参加者>

20名の男性と19名の女性が実験に参加。

競技者ではないレクレーションレベルの大学生。

<実験内容>

30秒の全力スプリント(サイクルエルゴメーター)


私見まとめ

女性は男性よりも、高強度インターバルトレーニングによる疲労に強い(パフォーマンス低下しにくい)
女性は男性よりも、高強度インターバルトレーニング中のレスト時間で回復する速度が早い
女性は男性よりも、スプリント運動後の筋肉グリコーゲン減少率が小さい

このような傾向があると言えそうです。

女性は男性よりも疲労に強い。という表現は語弊があるかもしれませんが…。疲労に強いのではなく、1本目から”全力を出し切れない”や”高強度になりにくい”というほうが適切かな。


指導現場でも、トレーニングの「負荷」や「刺激」を考えるうえで、

「トレーニング刺激が充分に与えられていないような気がするな~」と感じるケースがあります。

そんなときは、”レストを短くする”という方法が有効かと。

しかし、なんでもかんでも”レストを短くすればいい”というワケではありません。

【高強度】のトレーニングになっている上で、レストを見直していくことが重要かと思われます。

女性選手のトレーニングを担当されている方は、「高強度トレーニングのレスト設定」に関する参考になれば幸いです。

そもそも論

大切なことは、トレーニングによる刺激が充分であること。

高強度インターバルトレーニング(HIIT)は、

「運動時間○○秒、レスト時間○○秒」というような方法の詳細にこだわり過ぎなくていい。

性差もあるだろうし、年齢や競技歴によっても異なるでしょう。

スモールステップで進めていくんやで。

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