No.83 【低酸素トレーニング】の効果(論文紹介)

トレーニング

先日、担当アスリートの「パーソナルトレーニング」で豊洲へ行ってきました。
アシックスの低酸素トレーニングジム
広いし開放感あるし、控えめに言って最高な施設でした。

アシックス施設の売りは【低酸素】です。
東京の豊洲にいながら【高地トレーニング】でしか出来なかった低酸素環境でのトレーニングが可能だと言う。

本当にそうなのだろうか?
どのような効果をもたらすのか?
高地トレーニングとの違いはあるのか?

「正常気圧・低酸素」と「低気圧・低酸素」との違いを比較した論文を漁ってみました。

※5つだけですが…。
まとめ記事としてご紹介いたします。

私個人的には、高地トレーニングを実施した経験がありません。
今後、高地へ遠征し、トレーニング作成する際の予習としても記事にしてみます。

日本における乳酸研究の第一人者(著書紹介)↓

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環境の説明(気圧と酸素)

アシックスの「低酸素トレーニングジム」というのは、窒素で低酸素環境を作り出しているという仕組みです。よって、
「正常気圧・低酸素」となります。

それに対して、
山の上にあるような標高2000mというのは「高地環境」と言います。
「低気圧・低酸素」環境です。

早速、結論のまとめ

高地トレーニングと完全に一致する効果とはいかないが、

「正常気圧・低酸素」環境は、通常よりも効果がある可能性が高いと言える。

※効果の大きさが非常に大きい!とまでは言えないですが、
明らかにいくつかのパフォーマンスや体内変化は認められていました。
当たり前ですが、劇的な魔法のようなトレーニングはありません。コツコツ積み重ねた人だけが見えてくる景色を楽しみましょう。

【低酸素トレーニング】研究論文の紹介

論文紹介①

論文:Endurance Training in Normobaric Hypoxia Imposes Less Physical Stress for Geriatric Rehabilitation
著者:Stephan Pramsohlerら
公開日:2017年7月20日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5517449/

結論:正常圧低酸素グループでは、通常環境グループよりもトレーニング効果が高められる可能性が示された。

方法:65歳以上(35名)のリハビリ病院通院者が実験に参加。正常圧低酸素グループと通常環境グループで比較。3週間のトレーニング前後で計測。


論文紹介②

論文:SpO2 and Heart Rate During a Real Hike at Altitude Are Significantly Different than at Its Simulation in Normobaric Hypoxia
著者:Nikolaus C. Netzerら
公開日:2017年2月13日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5303738/

結論①:酸素飽和度(SpO2)は、正常圧低酸素よりも低気圧低酸素で有意に低かった。

結論②:平均心拍数(HR)は、正常圧低酸素よりも低気圧低酸素で有意に高かった。

方法:6名の健康な男女が実験に参加。正常圧低酸素グループと低気圧低酸素(標高4205m)グループで比較。7時間のハイキング中と前後で計測。


論文紹介③

論文:Comparison of “Live High-Train Low” in Normobaric versus Hypobaric Hypoxia
著者:Jonas J. Saugyら
公開日:2014年12月17日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4269399/

結論①:正常圧低酸素・低気圧低酸素どちらも、最大酸素摂取量(VO2max)・最大パワーを有意に向上させた。

結論②:血液パラメーター(EPO/RBC/HGBなど)は、低気圧低酸素グループでのみ有意に変化が認められた。

結論③:トレーニング後21日では、低気圧低酸素グループが3kmランニングテストで有意にタイム短縮した。

正常圧低酸素グループでも同条件でタイム短縮が若干見られたが、有意差ありとは言えなかった。

方法:トライアスリート(24名)による実験。正常圧低酸素グループと低気圧低酸素グループで比較。18日間のトレーニング前後を計測。


論文紹介④

論文:Eight Weeks of Intermittent Hypoxic Training Improves Submaximal Physiological Variables in Highly Trained Runners
著者:Holliss, Ben Aら
公開日:2014年8月
https://journals.lww.com/nsca-jscr/fulltext/2014/08000/Eight_Weeks_of_Intermittent_Hypoxic_Training.15.aspx

結論:正常圧低酸素トレーニング後、最大以下運動の心拍は低下し・酸素コストの低下が見られた。

方法:競技ランナー(12名)による実験。正常圧低酸素グループと通常グループで比較。8週間のトレーニング前後を計測。


論文紹介⑤

論文:Sprint interval training in hypoxia stimulates glycolytic enzyme activity.
著者:Puype Jら
公開日:2013年11月
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23604068

結論:正常圧低酸素で、スプリントトレーニングを実施すると「解糖系活性酵素」の活動が増加する。

方法:30歳以下の健康な男性(29名)が実験に参加。正常圧低酸素でSITグループ・通常環境でSITグループ・非運動グループの分けて比較。6週間のトレーニング前後で計測。


乳酸パラドクスについて

アスリートが高地合宿・低酸素環境へ行って
トレーニング中の体にどのような変化が発生するのかを事前に知っておくのは大切でしょう。

【乳酸パラドクス】という言葉があります。
高地合宿に行くと、最初は「血中乳酸値」が高くなります。
数日して高地環境に適応してくると、平地と同じような「血中乳酸値」へと減少していきます。
このような現象を乳酸パラドクスと呼びました。

この現象は、
未だに議論が終結していないもののようです…。

Reeves(1992)さんらの定義によると↓
高地環境での運動により、
血中乳酸濃度が増加するが、
順化に伴って酸素供給の変化なしに低下する。
というパラドクスであるという。

Kayser(1996)さんの定義によると↓
(低酸素環境下において)
高地環境に順応した人では、
平地環境に順応した人と比較して、
・最大酸素摂取量での血中乳酸濃度が減少
・高強度運動時の乳酸蓄積の減少
というパラドクスであるという。


乳酸パラドクスに関する論文

題名:Aerobic Capacity, Lactate Concentration, and Work Assessment During Maximum Exercise at Sea Level and High Altitude in Miners Exposed to Chronic Intermittent Hypobaric Hypoxia (3,800 m)
著者:Fernando A. Moragaら
公開日:2019年9月6日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6742696/

題名:The lactate paradox revisited in lowlanders during acclimatization to 4100 m and in high-altitude natives
著者:G van Hallら
公開日:2009年1月12日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2673779/

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