なぜ低強度トレをたくさんやらなきゃいけないの?と聞かれたら何と答えるか。

low-intensity training

競技者の肉体を生理学的に鍛え上げるためには、「高強度」トレーニングが基本であると考えています。

しかし、実際には「低強度」トレーニングもたくさん実施しています。

量より質!なのに、量もやるのはなぜか?

そんな質問にも、キチンと答えられるだけの論理を準備しておきたい。

今記事は、そんな論理を考える上での出発点のような内容となれたら嬉しく思います。

目次

そもそも「強度」とは何か?

強度とは、英語で「Intensity」と表記されるものです。

運動強度は、高い低いという軸で評価されます。

その評価指標は、「最大酸素摂取量(Vo2Max)」「心拍数」「血中乳酸濃度」「自覚的運動強度」などによって分類されることが多いようです。

特に、タイム競技である水泳や陸上は「血中乳酸濃度」による運動強度の分類を用いることが多いです。

※血中乳酸濃度による運動強度の分類

■低強度:血中乳酸濃度(2mmol)以下

■中強度:血中乳酸濃度(2〜4mmol)

■高強度:血中乳酸濃度(4mmol)超える

低強度トレーニングのメリット

生理学的な能力を向上させるためのトレーニングとしては、

筋肉へのダメージ・損傷リスクが低い。

それはつまり、高強度トレーニングでは筋肉へのダメージが大きいということです。

毎回のトレーニングで高強度トレを実施することは、そういったリスクが高まることも考えられます。

一度立ち止まって考えてみたいこと(競技結果は生理学的能力だけでは説明がつかない)

パフォーマンスを向上させるための要素は何か?

このように考えてみると、様々なことがパフォーマンスに結び付いていることが思い浮かんでくるのではないでしょうか。

結果に結び付くのは、乳酸やATPなどの生理学的な能力だけではありません。

競技の技術面や、メンタル面なども大きく関わってきます。

実施するトレーニングで「高めたい要素は何か?」という部分を明らかにして取り組むことで効果を少しでも上げていきたいものです。

低強度トレーニングだけで効果を出すには、どのくらいの「時間と量」で取り組めば良いのか?

低強度トレーニング60分か?30分か?

<実験内容>

■健康的な男性20名が実験に参加(平均年齢28歳、身長173cm、体重75kg、体脂肪16%程度)

■半年以上の筋トレに取り組んでおり、週に16-18時間のトレーニング量を実施していた集団。

■10名ずつを2つのグループに分けて、4週間の比較実験が実施された
①低強度運動「30分×16回」グループ
②低強度運動「60分×8回」グループ

論文結論:4週間で「30分×16回」よりも「60分×8回」のほうが効果的かも

60分×8回グループのほうが、脂肪酸化能力やATP生成能力を改善させることが示唆されました。

さらに、血中乳酸濃度(1.5/2.0/4.0mmol)でのランニング速度向上が見られました。

2021:Doowon Leeら

私見まとめ

生理学的な能力を向上させるために実施するトレーニングの基本は「高強度」トレーニングである。

しかし、高強度トレーニングだけではリスクもあるので低〜中強度でのトレーニングも配置していくことが必要。

今のところ、このような考えに至っております。

LT値を向上させるためには高強度トレよりも低強度トレが効果的?

高強度トレーニングのほうが効果的または同等であるとする研究があります。。。

(2020:Apostolos Papandreouら)
(2017:Thomas L Stöggl , Glenn Björklund)
(2017:Niamh J Ní Chéilleachairら)
(2006:Johann Edgeら)

量をやってないと、ウォームアップやテクニック練習で解糖系が働いちゃうから、低強度トレをたくさんやっておけ?

これもビミョ〜ですかね。

初心者であれば、これで当てはまる考えだと思います。

ですが、ある程度の技術を習得している競技者や上級者になっていくと通用しない考えかと。

試合・レースでは1日に2〜3本泳ぐから、低強度で量を泳ぎ込んでおいたほうが良い。という考えを聞くこともあります。手段自体は同意ですが、「レースはアップダウン含めてたくさん泳ぐから普段の練習でも量をやる」という論理には同意しかねます。

チーム全体で同じ距離・同じサイクル・同じくらいの低強度で取り組むのは難しい

複数人が集まるチームで練習をしていると、中には持久力の高い選手もいれば低い選手もいます。

持久力の低い選手は、低強度トレーニングのつもりでも、本数を重ねていくと血中乳酸値の上昇が見られる。低強度のつもりでも解糖系が働き、どんどん体内の糖は失われていき、メインメニュー時にはカラカラかも…。

一方で、持久力の高い選手は、酸化系からのエネルギー供給が十分なため、あまり糖を分解することなく低強度トレーニングを実施することができる。

こういった意味で言うと、低強度トレーニングだけでチーム全体を伸ばしていこうとするのは難しいように感じられる。

重要なことは『トレーニングプラン』

今記事を通しての主張(私見)は何か?と問われたら、

『トレーニングプランは重要だと思うよ』ということです。

毎日の思いつきでキツイことしているだけでは効率が悪いのではないかと思ってます。

その本質は何かと考えると、私は2つの意識をもってプログラムを作成しています。

ひとつ目は、「継続性」です。

トレーニングの強度が高すぎたり、量が多すぎたらケガ故障を招いてしまいます。

トレーニングの強度や量が十分でなければ、結果に繋がりません。

ケガや故障などでトレーニングを中断するようなこと無く、さらにはトレーニングへの意欲を失うこともないようにする。

そういった継続性の視点も大切であると考えられます。

ふたつ目は、「刺激への適応」です。

どんなに素晴らしいとされるトレーニング手法でも、毎回同じでは刺激に「慣れ」てしまいます。

慣れてしまっては、能力向上も頭打ちとなってしまうでしょう。

一方で、毎回異なるトレーニング刺激を与えてしまっていては、適応すること無く、能力も十分に高まらないでしょう。

競技に必要であると考えられる様々な能力を高めていけるように、トレーニングプログラムを作成していきたいものですね。

イメージは通知表のように。

  • URLをコピーしました!
目次