【水泳】レース後の血中乳酸濃度について【種目-距離別】

前回、「乳酸」について記事を書きました。

■水泳のレース後は、どのくらい乳酸が発生しているのか?

■距離や種目によって「レース後の乳酸値」に違いはあるのか?

そのような疑問に答えを与えてくれるような研究がありますのでご紹介したいと思います。

“私見まとめ”では、マルチスイマーとは?についても少しだけ考えを巡らせています。

目次

論文紹介:競泳レース直後の乳酸値(98名/149レース)を分析!

▼2009年カナダ水泳選手権で調査された。A決勝に出場した全選手が対象となった。

▼98名の水泳選手(149レース)を分析。年齢は14歳から29歳(平均20.2歳)であった。決勝レースの平均FINAポイントは899点。

<乳酸値の測定方法>

▼決勝レース後、すみやかに血液採取コーナーへ。

▼指先から血液を採取。乳酸測定器(ラクテートプロ)を使用し測定された。

▼レース終了してから、おそらく5分程度で血液採取したものと思われる。

・フルテキスト中にはこのような記述があります↓
“thus we feel confident our sample collection time was suitable in order to observe peak-postrace [BLa]”
測定はバッチリだったそうです。

論文結論:レース後の乳酸値が高かったのは「100mと200m」だったよ。

■100mと200mのレース直後に測定した血中乳酸値が最も高い傾向があることが分かった。種目(泳法)間での大きな違いは見られなかった。

・データの詳細を見ると、100mレース後の乳酸値では、平泳ぎが最も低い値だった。逆に最も高い値は背泳ぎ。

■最も乳酸値が低かったレースは「1500m」だった。その次に低いのは「50m」と「800m」である。

Jason D Vescoviら:2011

私見まとめ

今記事で紹介した研究は、2009年の測定結果ということでした。現在の分析を実施すると、また多少は異なる統計結果が出てくるかもしれませんね。

また、測定する「国」によっても違いがあるのか?興味深いところです。

「50m」レース直後の血中乳酸値は低い!

競泳競技において、最も「短い距離」のレースです。

そのため、最も大きなチカラ発揮が要求されるのではないかと思います。

ですが、50mレース後の血中乳酸値は低い!なぜか?

50mレースは、運動時間が「20~30秒程度」となります。

乳酸が発生する解糖系エネルギー供給システムよりも、より素早いエネルギー供給システムであるATP-PCr(クレアチンリン酸)系でカバーできる割合が多いと考えられます。

これらを考慮していくと、従来よりもベターなトレーニング方法が見つかるかもしれないわよ。

「100m」と「200m」レース直後の血中乳酸値は同じくらい高い!

これも、解釈が悩ましいところですかね。

運動時間で考えると、100mレースは約1分。200mレースは約2分です。

両者の差は1分もあります。なのに、血中乳酸値は同様であったとのこと。

■運動強度×運動時間

このように考えると納得感がありました。

LT値(乳酸閾値)を超える運動強度では、乳酸の発生が明らかに多くなります。

100mでは運動強度が高く時間が短い。200mでは運動強度が(100mと比べて)低いが時間が長い。

このような結果、100mと200mレース直後の血中乳酸値は「同様」であったのではないでしょうか。

血中乳酸値だけでトレーニングを語るのはムズイよ。

あえて、血中乳酸値だけを支点に、極端な考え方をしてみよう。

「50m」と「1500m」は乳酸値がおんなじくらいなんや。
だったら、50mの選手も1500mの選手もおんなじ練習でいいんや。
おっしゃ、スプリンターのみんな!毎日10,000mおよぐんやー。

こんな風に考えちゃうことはあまり無いかと思いますが…。

より良いトレーニングについて、共に考えて実践していきましょう。。

余談(だけど、ここが本記事で一番考えたこと)

ざっくりと、水泳界のトップ選手を見渡すと、いわゆるマルチスイマーと呼ばれる選手がいる。

それはとても憧れるし、羨ましくもあり、注目も集めることだと思う。

しかし、「運動エネルギー供給システム」という視点から考えると

50mも1番。200mも1番。

な~んてことは、変なことなのでありんす。

一方で、そういったマルチスイマー的な人が生まれるということは、

競泳の結果を左右するのは「生理学的なエネルギー供給システム」だけじゃないってことでもある。

「泳ぎの技術」による貢献度が、とっても大きいのかもしれないし、「根性」のようなメンタリティが勝敗を左右するのかもしれないわね。。

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