ただ共感するだけでは届かない。コーチングで大切にしていきたい「相手を理解しようとする姿勢」

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「寄り添う」ことが大切だと言われるけれど、本当に寄り添えているのかな?

多くの指導者が、「選手に寄り添うことが大切」と語ります。
今記事では、「寄り添うこと」の一歩先にある「寄り添い方」について考えを巡らせてみたい。

われわれは本当に相手の心の奥にある“理由”や“背景”まで感じ取ろうとしているのかな?

コーチングの質を分けるものの中の一つに「シンパシーとエンパシーの違い」があるように思います。

目次

「シンパシー」と「エンパシー」

シンパシー(sympathy)

 →「その気持ち、わかるよ」「つらいよね」と一緒に悲しむこと。
共鳴しあい、感情に寄り添う姿勢。

エンパシー(empathy)

 →「なぜこの選手はこの場面でこんなに悔しがっているのか?」と背景を探ること。
相手の背景や課題を理解しようとする知的な寄り添い。

シンパシーは「感情的な同調」、エンパシーは「理性的な理解」

✅ シンパシーの場合(感情への同調)

▶︎状況:
レース2週間前、選手が緊張から「うまく泳げる気がしません…」と不安そうに言ってきた。

▶︎コーチの対応:
「そうだよね。緊張するよね…私も昔、レースが怖くて仕方なかったよ。気持ち、すごくわかるよ。」

▶︎特徴:
選手の“感情”に一緒に浸かってしまう

一時的な安心感や「共感された」という気持ちは生まれるが、選手の思考の整理や行動の変化にはつながりにくい

✅ エンパシーの場合(感情の理解と支援)

▶︎状況:
上記と同じく、選手が「うまく泳げる気がしません…」と不安そうに話す。

▶︎コーチの対応:
「そう感じているんだね。これまでの練習でどこに感じてる?スタート?後半?それとも全体的な体調?
恐怖を感じるのは悪いことじゃない。でも、何に対しての恐怖心なのかを整理できれば、自分で対応できる部分が見えてくるよ。」

▶︎特徴:
選手の“感情の背景”に目を向け、問いかけを通じて言語化を促す

「理解しようとする姿勢」によって選手が自分自身を客観視し、恐怖を対処可能なものとして捉え直すきっかけを得る


このように、同じ恐怖心への対応でも、「何を見ているか」「どこに立っているか」によって、コーチの関わりは大きく変わるのでしょう。
エンパシーは、感情に巻き込まれることなく、選手の内側にある課題を、言葉にして扱えるものに変えようとするアプローチです。

私見まとめ

現場でありがちな「共感の落とし穴」について。私自身も、かつて感情的に反応していた時期があったなぁ〜と思い出しながら書いています。

・「うまくいかない」と言う選手に、「そうだよな、大変だよな」と共感しすぎて、解決策を後回しにしがち。
・荒れている選手に同調し、「気持ちはわかるよ」とだけ伝えた結果、根本的な改善案は出てこない。

このような経験から痛感したのは、
シンパシーは一時的に選手の安心にはなるかもしれんけど、成長を支える土台にはなりにくいということ。

選手の「困っている感情」ではなく、「なぜそう感じているのか?」に向き合う視点がなければ、
コーチはただの感情の鏡で終わっちゃう。

きっとそんな時に求められるのは、「感情のナビゲーター」になることなのかもね。
エンパシーを持つということは、相手の感情にのまれず、しかし遠ざからず、
その中心にある真意を掘り下げる「問い」を持つこと。


たとえば、練習に消極的な選手がいたとき、

シンパシー:「最近つらいのか、わかるよ。無理しないで」

エンパシー:「なんで今、やる気が出ないんだと思う?最近の変化とか摩擦があった?」

こういった寄り添いを示しながらも前へ進もうとする問いの姿勢が、選手にとっての「気づき」と「行動の再設計」を生むと考えています。
とはいえ、問いを与えても「今じゃない」とか「お前じゃない」とかってケースもあるので、そこは互いの信頼関係とか立場とか関わり方とか考慮しないとですけどねw

エンパシーは、技術

勘違いされがちですが、エンパシーは「心が優しい人の才能」ではありません。
きっと誰もが意識し、鍛えることのできる思考の習慣だね。

たとえば、

「なぜこの人は、こう反応するのだろう?」
「自分がこの状況なら、どんなことを感じるだろう?」
「相手の過去の経験や価値観が、今の態度に影響していないか?」

こういった問いを日常的に持つことが、
「理解の解像度」を高めていくのかもしれない。

まとめ:「理解しようとする」ことが大切なんじゃなかろうか

きっと選手の心に届くのは、同情ではなく、
「あなたのことを理解しようとする姿勢」だと感じています。

そのために必要な手段が、エンパシー。
相手の感情にただ共鳴するのではなく、理性と想像力で意味を読み取ろうとする行為。

コーチみんなでブチあげてこ。

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この記事を書いた人

山﨑 裕太のアバター 山﨑 裕太 コーチ

アスリートのコーチングが仕事
オリンピック選手指導
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