前回の記事(No.94)では、
肩の痛みがある人たちを対象に
「スリング」エクササイズと「ウォール」エクササイズで効果の違いを比較した論文を紹介しました。
スリング(Sling)とは、吊り下げる。というような意味があります。
エクササイズなどで使用されるスリングは、TRXのような上から吊るされたサスペンションのことを指します。
今回の記事では、スリングを利用したエクササイズの効果を研究した論文をご紹介いたします。
腕立て伏せ運動で、スリング状態の場合どこの筋肉の働きが強くなるのかを調べた内容となっています。
論文紹介
Muscular activities during sling- and ground-based push-up exercise
著者:Sumiaki Maeoら
公開日:2014年3月28日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3986648/
内容:sling(スリング)とground(地面)でのpush-ups(腕立て伏せ)の違いを調査
参加者)
体育を専攻している20名の男子大学生(平均21.4歳)が実験に参加。
EMG測定部位)
大胸筋、広背筋、上腕三頭筋、上腕二頭筋、腹直筋、外腹斜筋、内斜筋、脊柱起立筋
運動方法)
sling(スリング)とground(地面)それぞれで実験しました。
①Static(静的)運動:肩関節(外転)90°・肘関節(屈曲)90°の状態でプランク姿勢をキープ
②Dynamic(動的)運動:腕立て伏せ運動を10回実施
※上記の論文中で紹介してある画像リンクです↑
結果:sling(スリング)のほうがground(地面)と比べて、多くの筋肉で筋電図の活性化が大きかった。
Static(静的)運動では、
上腕三頭筋・上腕二頭筋・腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋の筋電図に有意差がありました。
Dynamic(動的)運動では、
上記のStatic運動時に有意差があった筋肉にプラスされて大胸筋の筋電図に有意差がありました。
私見まとめ
今回紹介した論文の結果から、
スリングでの腕立て伏せは、通常の腕立て伏せよりも体幹前面部においての筋活動が大きく見られました。
腕立て伏せとしては、スリングの方が「強度が高い」と言えそうです。
筋電図(EMG)をどのように評価するかという点については、酒井医療株式会社のページがとても参考になります。
つまり、通常の腕立て伏せが充分に出来ないようなトレーニング初心者に対して
スリング腕立て伏せをやらせることはNGでしょう。
動作の習得段階と筋力レベルを見極めてトレーニングを進めて行きたいものです。
次回の記事では、またもや「スリング腕立て伏せ」について取り上げます。
強度の高いスリング腕立て伏せは、今回紹介した論文とは「違う部位の筋肉」を調査した論文をご紹介します。