「教えない」コーチングは奥が深くて難しい

近年、「教えない」ほうが良い。みたいなワードを見聞きすることが増えた気がしています。

指導・コーチングの対象者に「教えない」とはどういうことなのか?

「教えない」かわりに、何をするのか?それによるメリットは何なのか?

今記事では、「教えないコーチング」について少しだけ掘り下げて考えてみたいと思います。

目次

過度に教えることによるデメリット

✔反復練習中の動作における詳細を教えることや、その動作修正のためのフィードバックを過剰にすることによって、「過度な教え」を受け取った選手は自己制御(self-regulation)のチャンスを失ってしまう。それはアスリートにとっての成長を妨げる可能性のある行為かもしれない。

Fabian W. Otteら:2020

「教えない」かわりに、何をすべきか?

Less is more.

✔教える「量」に気を配るようにしよう。アスリートが解決策を考案できるように、練習を計画し、時間を充分に確保することが推奨される。

Paul Larkinら:2022

Q&Aアプローチ

✔アスリート自身による主体性や、自己制御(つまり、自己の行動をコントロールする能力)を促進するために、コーチは「質問」を用いる手法。

Fabian W. Otteら:2020

選手とコーチの間で双方向のやりとりが生まれるような質問をしてみてね。

例えば、選手が失敗したときに「今の”ターン”は壁を強く蹴れなかったから後半のタイムが落ちてしまったように見えたけど、次はどのようにしたら良い感じの”ターン”が出来るかな?」という質問をしてみる。

また、選手が上手くいったときに「前回の”ターン”は弱い蹴りになってしまったようだけど、今の”ターン”は通過タイムも短縮したね。どんなタイミングでターンを意識したの?」

質問は、こんな感じかと。

対象者の年齢や習熟度によって、質問の内容は適切に変化させていかないとだね。

タスク(課題)指向

✔コーチがタスク(課題)を与えることで、アスリートが自主的に課題解決にチャレンジしていく手法。

Fabian W. Otteら:2020

例えば、コーチが選手に「25mで1ストローク少なくして泳いでみよう」というような課題を設定してみる。すると選手は、その課題に対して解決策を探索して取り組んでいくようになるかと。

こういったアプローチでは、コーチが選手に対して過度に教えてしまいがちだけどグッとこらえて見守るのもダイジ。何度かチャレンジしても難しそうであれば適切なタイミングで、フィードバックしたり教えたりしたらいい。

「適切なタイミング」ってのがムズイんだけどねぇ。

私見まとめ

「教えない」というワードだけが一人歩きしているように感じてしまったので、今記事を書こうと思うに至りました。

そして、「教えない」かわりに何をするかと言うと、適切に質問をしたり、適切な課題を提示したり、様々なツールを用いてフィードバックしたり。。「教えない」というのはとっても奥が深いようです。

時代の流れなのか?コーチや指導者に求められる能力や手法はどんどん変わってきているようにも思えます。

何に対価を支払うのか?

記事の主題と話は逸れますが、

指導やコーチングを「受ける側」の人は、何に対価(お金)を支払うことになるのでしょうか?

スクールやレッスンに行って「教えてもらう」ことにお金を支払っているという感覚を持っている人が多いのでないかと予想しています。

そこで「教えない」に対してお金を支払うのはどういうことなのか?

結果(タイムが短縮した等)に対してなのか。それとも、話を聞いてくれたというホクホク感に対してなのか。

「教えない側」の人(コーチや指導者)は、きちんと説明できるようにしておかないとな。な~んて余計にも考えてしまう。悩ましい。

この項をまとめると2つ。

コーチングという言葉の理解がもっと広がっていくと良いねってコトと、両者の間で納得や合意が取れていれば良い結末になるのではないのでしょうかというコト。

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