アスリートにとって、怪我や故障は付き物であると言われます。
しかし、明らかな外傷や受傷原因の分からないものだけど練習すると痛みがあるといった、いわゆる慢性痛のようなケースも多くあるように感じています。
今記事では、「痛み」について定義されていることなどから考えを巡らせてみたいと思います。
IASP(国際疼痛学会)による痛みの定義
IASPによる「痛みの定義」は、1979年に作成され、2020年に改定されました。
An unpleasant sensory and emotional experience associated with, or resembling that associated with, actual or potential tissue damage.
・Pain is always a personal experience that is influenced to varying degrees by biological, psychological, and social factors.
IASP(国際疼痛学会)
・Pain and nociception are different phenomena. Pain cannot be inferred solely from activity in sensory neurons.
・Through their life experiences, individuals learn the concept of pain.
・A person’s report of an experience as pain should be respected.
・Although pain usually serves an adaptive role, it may have adverse effects on function and social and psychological well-being.
・Verbal description is only one of several behaviors to express pain; inability to communicate does not negate the possibility that a human or a nonhuman animal experiences pain.
「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」
<付記>
・痛みは常に個人的な経験であり、生物学的、心理的、社会的要因によって様々な程度で影響を受けます。
・痛みと侵害受容は異なる現象です。 感覚ニューロンの活動だけから痛みの存在を推測することはできません。
・個人は人生での経験を通じて、痛みの概念を学びます。
・痛みを経験しているという人の訴えは重んじられるべきです。
・痛みは、通常、適応的な役割を果たしますが、その一方で、身体機能や社会的および心理的な健康に悪影響を及ぼすこともあります。
・言葉による表出は、痛みを表すいくつかの行動の1つにすぎません。コミュニケーションが不可能であることは、ヒトあるいはヒト以外の動物が痛みを経験している可能性を否定するものではありません。
日本疼痛学会
痛みの種類について
様々な分類の表記がありますが、IASP(国際疼痛学会)の用語集ページにあるものを参考に記載していきます。
侵害受容性疼痛
侵害受容器の活性化による痛み。
神経障害性疼痛
神経系の病変や疾患による痛み。
痛覚変調性疼痛
なんらかの組織損傷や体性感覚系の疾患または病変の証拠がないにもかかわらず、侵害受容の変化から生じる痛み。
心因性疼痛
心理的・社会的などの様々な要因に由来する痛み。
筋骨格系の痛みや治療について、とっても勉強になるウェブサイト
私見まとめ
「痛み」は感覚であり、情動である。というのが現在の定義のようです。
急性痛と慢性痛との違い。鎮痛のメカニズム。などなど難しいところは多々あるかと思います。
このように考えると、私のような末端の治療者にとって出来ること・やるべきことは何か?
今記事で述べたいこと
痛みの原因は「歪み」や「筋力不足」などといった単純な理由ではないよ。
もっと言えば、筋骨格系の「痛み」と、X線やMRIなどの「画像所見」との間に因果関係が必ずしもあるわけではない、ということです。
痛みが発生している「現場の構造的な問題」と「痛みそのもの」は別々に考えなければいけないというように考えています。
痛みについての学びをスタートさせるきっかけのようなものにでもなれたなら幸いです。