水泳選手のトレーニングにおいて、従来から明らかになっている基礎的アプローチに加えて、新しいアプローチを追加検討することは、常に選手の競技力向上を追求する指導者にとって欠かせなくなっているように感じます。
水泳パフォーマンスを向上させるためのひとつの手段として、「音やリズムを用いたトレーニング」という方法が挙げられます。
音やリズムを用いたトレーニングは、メトロノームなどの一定の音や、拍子・リズムなどを用いて、運動することによるトレーニング効果を期待するものです。
今記事では、そんな内容をお送りしていこうかと。
基礎や当たり前のレベル底上げを疎かにしてしまうようではアカンので、目の前の選手にとって”今”なにを取り入れていくべきか?しっかり考えていかなきゃね。
期待する効果
運動学習の強化
水泳の動きは推進力を高めつつ、抵抗を減らすことが重要な取り組みですが、その動きをマスターすることが運動学習の目標となります。
特に泳動作の初学者にとって、音やリズムをトレーニングに組み込むことで、泳ぎのパターンをより良く学習することができるかと。
運動を音やリズムで聴覚へ刺激することによって、運動学習の効果を高めることが期待できます。
※参考文献(2019:Nina Schaffertら)
ストローク長を伸ばす
「音・リズム」と「泳ぎ」を組み合わせたトレーニングは、ストロークのコーディネーションにも影響を与えることが期待できます。
メトロノームを使用してリズムに合わせたトレーニングは、ストロークレートを調整し、ストローク長を向上させます。特に高強度なトレーニングではスタミナ向上に寄与し、適切なテンポコントロール泳をサポートするでしょう。
※参考文献(2023:Marco Fassoneら)
テンポ・トレーニングに使えるアイテム
キックとプルのタイミングを合わせる
水は空気の800倍以上の密度があると言われます。そのため、水中で発生する抵抗を克服するには特定の運動パターンが必要です。
水泳選手は、ストロークによる抵抗を最小限に抑えながら、最大限の推進力を生み出すために、手足のリズミカルな動きを使ってバランスをとらなければなりません。
陸上で実施するリズムトレーニングを取り入れることで、水泳でのキックとプルのタイミングを合わせるコーディネション能力の向上が期待できます。
※参考文献(2023:Xiaofeng Yinら)
私見まとめ
「音・リズム」と「泳ぎ」を組み合わせたトレーニングを取り入れることで、動作技術の向上だけでなく、レースに対するペース配分を学習させるような狙いにも用いることがあります。
トップアスリートの中には、自分の調子の良さを「音」で表現する人もいます。「今日のエントリー動作はズボッって感じで良かった」「調子の悪いときはバシャって感じ」などなど。
少し胡散臭い言い方になりますが、人間の身体が持つ”五感”へのアプローチはまだまだ開拓されるべきなのかもしれませんね。
メトロノーム・アプリ
スマホのアプリで「メトロノーム」と検索すると、無料のアプリがいくつか出てきます。
そのうちのいづれか使いやすいやつをスピーカーに繋げて使ってみると良いかと。
いざ【実践】リズムトレーニング
ダッシュスイミングスクールの青山コーチがリズムトレーニングをInstagramで紹介してくれました。投稿のリンクを掲載します。
特にジュニア選手のみんなは取り組んでみてね!
1秒間に1拍子(BPM:60)
1秒間に3拍子(BPM:180)
1秒間に6拍子(BPM:360)
なぜリズムが必要なのか?考えてみよう
クロールで「6ビート」や「2ビート」という言葉があります。1ストローク中にキックをする「回数」を指します。
ストロークのテンポを上げる場合、キックのテンポも上げることとなります。
そこで、リズムトレーニングのような手足の協調(コーディネーション)が必須の技術となります。
6ビートでストロークテンポを1.0秒にしたい場合は、1.0秒でキックの回数は?
脚を鍛えなくちゃいけない理由がはっきりと見えてくると思います。