水泳選手の肩の痛み(スイマーズショルダー)について取り上げた記事となります。
スイマーズショルダーの説明や特徴は過去記事をご覧ください。
今記事では、マスターズスイマーを対象とした研究をご紹介します。
肩の痛みを有する人には、クロール泳で特徴的な動きが見られたようです。
トレーナーの大きな役割としての障害予防。予防って評価をしづらいから称賛されることはほぼないけど、大切な役割だね。縁の下の力持ち。
マスターズ水泳選手に見られた特徴的な動作
題名:Shoulder and Neck Pain in Swimmers: Front Crawl Stroke Analysis, Correlation with the Symptomatology in 61 Masters Athletes and Short Literature Review
著者:Giuseppe Rinonapoliら
公開日:2023 年 9 月 27 日
https://www.mdpi.com/2227-9032/11/19/2638
論文結論
✅肩の痛みを抱えている選手には、プル局面の終盤まで内旋が見られた。
✅肩の痛みを抱えている選手には、リカバリー局面での手関節の過度な屈曲が見られた。
✅水泳トレーニングの量と肩の痛みとの間に関連が見られた。
論文内容
<参加者>
・平均年齢48歳(最高87歳、最低26歳)のマスターズ水泳選手61名。
・61名中45名が肩の痛みを経験したことがあり、ときどき痛みを感じる人は25名、頻繁に痛みを感じる人は20名であった。
<実験内容>
・参加者の水泳トレーニングの様子をビデオ撮影し、クロール泳のバイオメカニクスを分析した。
私見まとめ
今記事で引用した研究論文では、水泳選手で肩の痛みを抱えている人たちの傾向を示唆してくれました。しかし、特徴となる動作(肩の内旋や手関節の屈曲)についての明確な角度などはボンヤリしているように感じます。こういった研究をもとに、さらに詳しく特定されていくと思われる。
障害予防では、特徴となる傾向をよく認識し、未然に防げるように対策を実施していくことが大切です。
しかし、「特徴」と「痛み」との間にある関係は、相関関係です。ここは勘違いしやすい部分でもあります。
ハイエルボーによる肩の内旋が、痛みを引き起こしている因果関係のように理解してしまうのは浅はかです。
特定の動きを責めるべきではなく、なぜそのような動きが発生しているのか?筋力の問題なのか、可動域の問題なのか、運動意識の問題なのか、もっとマルチに体を見ていく必要があるよ。
相関関係と因果関係は違うよ
相関関係
2つのことが一緒に変動する傾向がある関係です。
例えば、夏にアイスクリームを食べる人が増えると、気温が高くなり暑い日が多くなります。これは、アイスクリームを食べる人が地球の気温を高くしているわけではありませんし、逆も同様です。単に、夏の暑い日にアイスクリームを楽しむ人が多いだけです。
因果関係
1つのことが別のことを引き起こす関係です。
例えば、植物が日光を浴びると、光合成が行われて植物は成長します。このケースでは、日光が原因で植物の光合成が引き起こされているので、因果関係があるといえます。
つまり?
相関関係は、2つのことが一緒に起こることを示すだけで、どちらかがもう一方を引き起こすわけではありません。
しかし、因果関係は、1つのことがもう一方を引き起こすという直接の関係を示します。