持久系アスリートの皆さんが一度は聞いたことがあるであろう「VO2max」という言葉。
VO2max(最大酸素摂取量)とは、1分間で体重1kgあたり何mlの酸素を体内に取り込みことができるかを表しています。単位は(ml/kg/分)
これは全身持久力の生理学的な指標として用いられ、有酸素性パワーや有酸素性能力とも呼ばれたりします。
本記事では、VO2max向上効果に対するトレーニング手法を比較した研究論文を紹介することと、記事下部の”私見まとめ”では、「VO2maxと競技成績は相関しない」ということについて比喩(メタファー)を用いて述べてみる予定です。
VO2max向上には、HIITか?持久力トレーニングか?
✅HITと持久力トレーニングはどちらも、健康な若年~中年成人のVO2max向上に大きく貢献することが確認された。
✅HITと持久力トレーニングを比較すると、VO2max向上は、HITのほうが大きいことが示唆された。
VO2max向上には、HIITか?SITか?
題名:Aerobic high‐intensity intervals are superior to improve V̇O2max compared with sprint intervals in well‐trained men
著者:Håkon Hovら
公開日:2022年11月18日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10099854/
論文結論:HIITはSITと比べて、有酸素性パフォーマンス向上のために推奨されるインターバル形式である。
✅HIIT4×4分は、SIT8×20秒およびSIT10×30秒と比較して、VO2max値を向上させるのに優れていたことが確認された。
論文内容
▼成人男性48名(持久力トレーニングを週1回以上取り組んでいる集団。競技者ではない)が実験に参加。
▼トレーニング介入はすべて週3回のセッションで8週間行われた。
▼3つのトレーニンググループへ無作為に分けられた。トレーニング様式は、トレッドミルを用いたランニングで実施。
・HIIT 4×4分 グループ
4分(95%VO2maxスピードが目標) ⇨ 3分(アクティブレスト)
これらを計4セット。
・SIT 8×20秒 グループ
20秒(150%VO2maxスピードが目標) ⇨ 10秒(パッシブレスト)
これらを計8セット
・SIT 10×30秒 グループ
30秒(最大努力) ⇨ 3分30秒(アクティブレスト)
これらを計10セット
私見まとめ
VO2max能力を向上させることは水泳などの持久系のスポーツにとって、とても重要な体力要素です。
高いVO2max能力は、酸素の効率的な供給を可能にし、持久力向上に貢献します。これによって中長距離レースなどでのパフォーマンス向上が期待できます。
持久系競技において、競技レベルが低いと、VO2max能力との関連がよく見られます。しかし、競技レベルが高いとその関連は見られません。
✅レクリエーションレベルのトライアスリート集団では、VO2max値とパフォーマンスタイムとの間に有意な相関が見られた。
✅持久系競技で高いレベルのアスリート集団では、パフォーマンスに対して、VO2max値だけでは説明が出来ない。
(Andrew M Jonesら:2021) (Kelsey J. Santistebanら:2022)
「VO2maxだけでは競技結果を直接説明できない」
VO2maxを向上させると持久能力がアップして距離を泳ぐ力が増すっていうのは期待できます。
しかし、水泳の競技パフォーマンスって、VO2maxだけじゃ決まりません。当たり前ですが…
その上で、「VO2maxは意味ねぇぜ!」などと考えてしまう短絡的な思考にはおちいりたくないものです。
VO2maxを比喩で説明してみる
VO2maxをスマホのバッテリー容量だとしてみよう。
バッテリー容量が大きければ長く使えて、小さければ短い間しかもたない。
しかし、大きなバッテリー容量であっても、そのスマートフォンがサクサク素早く動くかどうかは、中に入っているOSやアプリなどの「ソフトウェア」に大きく影響される。

それと同様で、VO2maxも体のエネルギーの容量みたいなもの。容量が大きければ長い間活動できるし、小さければ疲れちゃう。
でも、実際の競技では、スマホのOSやアプリみたいな「技術」も大事だよね。
つまり、VO2maxが高くても、技術やテクニックがきちんと機能しないと、競技結果に繋がらないことも多くあるよ。逆に、VO2maxが低くても、きちんと技術やテクニックを使いこなすことができたら、意外と良い結果に繋がることもあるかも。