No.88 【水泳選手】HIIT/高強度トレーニング(論文まとめ)

競泳

HIIT(High Intensity Interval Training)高強度インターバルトレーニング
当ブログでも頻出ワードです…。

HIITの効果やパフォーマンスへの影響を研究した論文の多くは「陸上」での運動が実施されています。

陸上での運動と
水中での運動の違いに「力学的なストレス」があります。
筋肉・腱・関節といった人体組織にかかる負荷が、
水中運動では異なると言われています。

ですので、陸上運動で得られた結果を
そっくりそのまま「水泳」運動にも当てはめるのは困難かもしれません。

もちろん、陸上運動でも水中運動でも
多くの部分で共通点はあることでしょう。
※陸上と水中での負荷の定量的な違いについて、私は詳しく知りません。どなたかご存知の方教えて下さい。

ということで、
今回の記事では、「水泳(競泳)」での高強度トレーニングがパフォーマンスへどのような影響を与えるのかを調査した論文をご紹介いたします。


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論文紹介①:対象者(ジュニアスイマー)

High-intensity interval training improves VO2peak, maximal lactate accumulation, time trial and competition performance in 9–11-year-old swimmers
著者:Billy Sperlichら
公開日:2010年8月4日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2974202/

内容:高強度トレーニングと多量トレーニングでどちらがパフォーマンス向上させるのか?

(参加者)
・26名(男性13名/女性13名)の若年水泳選手が実験に参加しました。
・平均年齢10.5歳(9〜11歳)
・週4回以上のトレーニングを少なくとも3年以上は継続しています。
・そのうち5名の選手はジュニア代表レベルです。

(実験手順)
・参加者は、実験期間が合計で25.5週間となりました。
・クロスオーバー設計で、HIIT期間(5週間)とHVT期間(5週間)の両方を実施しました。
※HVT(High Volume Training:多量トレーニング)という意味です。
※実験の期間を文字列で詳細な説明をすることが困難ですので、オープン論文中のMethods(方法)の「Fig.1(図1)」をご覧ください。

(トレーニング内容)
・トレーニングの頻度は週4−5回
・「HIIT」「HVT」どちらの群でも以下のトレーニング順序でした。
①ウォームアップ400m
②テクニカルドリル
③「HIIT」もしくは「HVT」
④クールダウン
・HIITの所要時間は30分間、HVTの所要時間は60分間となりました。
・HIITは1週間で5500m、HVTは1週間で11900mという平均距離でした。

(テスト項目)
・各トレーニング前後に以下のテストを実施しました。
①100mタイムトライアル
②2000mタイムトライアル
③LEN-Pointという欧州水泳連盟独自の水泳大会(100mFR/50mBR)に参加
④その他には、血中乳酸濃度やVO2peakやVTやRPEなども計測していました。

結果:HIIT期間後のテストで効果が明らかであった。

・2000mタイムトライアルでHIIT期間後にパフォーマンス向上。
・100mタイムトライアルではHIITもHVTも変化が見られませんでした。
・水泳大会でのポイント制度は、HIIT後のほうが効果が高くなりました。
・VO2peakは両方の期間後で向上が見られました。
・血中乳酸濃度はHIIT期間後で顕著に増加。
・RPE(主観的運動強度)はHIITの方が明らかに高く申告されていました。


論文紹介②:対象者(マスターズスイマー)

Effects of manipulating volume and intensity training in masters swimmers.
著者:Pugliese Lら
公開日:2015年2月24日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25710182

内容:高強度トレーニングと多量トレーニングでどちらがパフォーマンス向上させるのか?

(参加者)
・10名の男性マスターズスイマー(平均年齢32歳)が実験に参加しました。
・平均11年のトレーニング経験があり、週3回以上のトレーニング頻度でした。
・FINA世界マスターズ選手権に出場した選手たちであった。

(実験手順)
・参加者は、実験期間が合計で20週間となりました。
・実験期間の順番としては以下となります。
①1週間Taper期
②1週間テスト
③6週間の多量・低強度(HvLi)トレーニング期間
④1週間Taper期
⑤1週間テスト
〜1週間空白
⑥1週間Taper期
⑦6週間の少量・高強度(LvHi)トレーニング期間
⑧1週間Taper期
⑨1週間テスト

(テスト項目)
・VO2peak
・嫌気性閾値(IAT)
・100mFRタイムトライアル
・400mFRタイムトライアル
・2000mFRタイムトライアル

結果:HIIT期間後のテストで効果が明らかであった。

・VO2peakテストはどちらの期間後も向上しました。
・高強度トレーニング後では、100m/400m/2000m全てでタイム短縮。
・多量トレーニング後では、400m/2000mでタイム短縮。100mでは効果が見られませんでした。


論文紹介③:対象者(シニアエリート選手)

Effects of 12 Weeks High-Intensity & Reduced-Volume Training in Elite Athletes
著者:Anders Kilenら
公開日:2014年4月15日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3988165/

内容:高強度トレーニングと多量トレーニング(普段通り)でどちらがパフォーマンス向上させるのか?

(参加者)
・41名(男性30名/女性11名)デンマークでの国代表レベル水泳選手が参加しました。
・平均年齢は20歳
・普段のトレーニングは、週平均20000〜60000mで週平均8〜16時間を実施していました。

(実験手順)
・参加者は、実験期間が合計で12週間となりました。
・HITグループ(20名:男性14名/女性6名)と普段通りグループ(21名:男性16名/女性5名)
・トレーニング量は、普段通りグループと比べてHITグループで50%減少。
・高強度トレーニングの量は、普段通りグループと比べてHITグループで2倍以上となりました。

(テスト項目)
・トレーニング実験期間の前後で以下のテストを実施しました。
・100mタイムトライアル
・200mタイムトライアル
・VO2max(最大酸素摂取量)
・血液測定(乳酸値、pH、Kイオンなど)
・体組成

結果:HITグループと普段通りグループを比較しても「効果(変化)は見られなかった」

・タイムトライアルでは100mも200mでも同様の効果でした。
・VO2maxも有意差なし。
・血液代謝マーカーも有意差なし。
・体組成も有意差なし。


論文紹介④:対象者(ジュニアエリートスイマー)

The Effects of Low-Volume, High-Intensity Training on Performance Parameters in Competitive Youth Swimmers.
著者:Nugent Fら
公開日:2019年1月2日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30039991

内容:高強度トレーニングと多量トレーニングでどちらがパフォーマンス向上させるのか?

(参加者)
・16名(男性6名/女性10名)が実験に参加しました。
・平均年齢は15.8歳
・競技レベルは全国大会に出場している選手たちでした。
・普段の練習は、週6-7回の水泳練習と週2-3回の陸上トレーニングを実施しています。
・水泳練習の週間平均距離は35kmで12時間でした。

(実験手順)
・参加者は、実験期間が7週間となりました。
・HITグループ8名(男性3名/女性5名)とHVTグループ8名(男性3名/女性5名)に分けて比較。
HIT(高強度トレーニング)、HVT(多量トレーニング:普段通りのトレーニング)
・トレーニング介入の前後で「テスト」を実施。
・HITグループでは、HVTグループと比較して「量を50%減少」「高強度練習を2倍」としました。

(テスト項目)
・200m×7本(cycle 5分)の生理学的パフォーマンステスト
生理学的テストでは、乳酸値が測定されました。
・50mFRタイムトライアル
・400mFRタイムトライアル
タイムトライアルでは、ストロークテンポ/ストローク長/ストロークインデックスが計測。

結果:HITグループと普段通りグループを比較しても「タイムに効果は見られなかった」

・タイムトライアルの結果では効果(両群の有意差)が見られませんでした。
・HVTグループでは、ストローク長(SL)の低下が見られました。


まとめ(私見)

以上、4つの研究論文をご紹介しました。
ここから私個人的な「まとめ」としてお送りします。

HIITは時間効率が良い。

HIITは老若男女の能力を向上させる。

HIITはアマチュアレベル選手の能力を向上させる。

HIITだけではトップレベル選手の能力向上には影響が少ない。

以上を上記の紹介論文を読んでの「私見まとめ」としました。

HITのトレーニング効果は充分に理解が出来たのではないでしょうか。
特に私としては、
【短時間でも効果が得られる】という点が魅力的でありました。
多くの選手や指導者の皆様へお届けしたいと思える内容です。

しかし、一方で
ジュニア選手でもシニア選手でも
トップ層であるエリートスイマーを対象とした研究は「HITの効果なし」という結果。

まず、大前提として
エリート水泳選手たちが取り組んでいる普段のトレーニング中には「高強度トレーニング(HIIT)」も含まれている。という点があります。

その普段取り組んでいるHIITのトレーニング量を2倍に増やしても、パフォーマンスへの影響は見られなかった。
この事実から高強度トレーニングだけでは、タイム競技の記録に限界があるのではないか。と考えるのが自然な流れではないでしょうか。

強度の高いトレーニングだけでは、頭打ちになる。
中強度や低強度でのトレーニングも実施することで記録向上を目指す必要がありそうです。

ではなぜ、強度の低いトレーニングが必要なのか?
やはり答えは【テクニック】という点になるでしょう。
もちろん、低い強度の運動だけで【競技中のテクニック】が向上するわけではありません。

低い強度で【獲得したテクニック】を
高い強度でも【使えるテクニック】へと転化・進化させる。
このような意識でトレーニング計画を作成していきたいものです。

大切なのは「バランス」
なんだ。結局、この言葉に落ち着いちゃうじゃん…。
と感じております。

※次回の記事では強度のバランスに関する研究論文をご紹介いたします。

まぁ、今回ご紹介した研究結果を鵜呑みにし過ぎることなく
より良いトレーニングを追求する気持ちで常にチャレンジしているつもりです。
これからもきっとね。

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