No.89 【水泳】トレーニング強度の分布バランス

競泳

No.88の記事では、
競泳選手の「高強度(HIIT)」トレーニングに関する研究論文を複数ご紹介しました。

高強度インターバルトレーニングは、
初級者〜中級者層では、パフォーマンスに良好な効果が見られました。
ですが、競泳選手のエリート層では効果をもたらさなかったように見えました。

競技のエリート層というのは、
そもそも競技パフォーマンスが高い集団です。
ですので、どんなトレーニングをしても目に見える形での「効果は出にくい」という点が当然にあります。

コーチや指導者は、様々なトレーニング方法を学び
目の前にいるクライアント(選手)がどの段階にいるのかを一時的には設定することが必要です。
その上で、最適と考えられるトレーニングを処方していきたいものです。

今回の記事では、
水泳選手のトレーニング強度分布に関する研究論文をご紹介します。

スポンサーリンク

論文紹介

Effects of a 6-Week Period of Polarized or Threshold Training on Performance and Fatigue in Elite Swimmers.
著者:Pla Rら
公開日:2019年1月2日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30040002

内容:2つのトレーニングモデル(THRモデル/POLモデル)でパフォーマンスの比較実験

(参加者)
・22名(男性12名/女性10名)が実験に参加しました。
・平均年齢は17歳。
・エリートジュニアスイマー(FINAポイントは男性485/女性498)
・1週間のトレーニングは8回で15〜18時間でした。

(実験手順)
・2つのモデルを実施するために、合計28週間のクロスオーバー手法で実験されました。
・それぞれのトレーニング期間前後でテストを実施しました。
・モデル①:Polarized training(6週間)
・モデル②:Threshold Training(6週間)
・どちらのモデルでもトレーニング総量は同じ距離としました。

※トレーニングモデルの説明
・トレーニング強度を3つのゾーンに分類します。
(ゾーン1:低強度)血中乳酸濃度(2mmol)以下
(ゾーン2:中強度)血中乳酸濃度(2〜4mmol)
(ゾーン3:高強度)血中乳酸濃度(4mmol)超える

●モデル①:Polarized Training 総トレーニング量の分布
(ゾーン1:低強度)81%
(ゾーン2:中強度)4%
(ゾーン3:高強度)15%

●モデル②:Threshold Training 総トレーニング量の分布
(ゾーン1:低強度)66%
(ゾーン2:中強度)25%
(ゾーン3:高強度)9%

(テスト項目)
・100mタイムトライアル
・最大血中乳酸濃度
・酸素消費量

結果:モデル①Polarized Training期間後のテストで100mパフォーマンス向上が見られた。

モデル①後のタイムトライアルでは「わずかに」タイム短縮が認められました。
モデル②後のタイムトライアルでは「ほぼ変化なし」という結果でした。

その他の生理的なテスト結果としては、明確な違いは認められませんでした。

自己申告による「疲労度」では、モデル①のほうが
全体的な疲労度が低かった。という結果となりました。


まとめ(私見)

上記で紹介した研究は、【Polarized Training】と呼ばれるモデルの効果を検証するような実験内容でした。
Polarizeとは、日本語訳すると「偏光・分極」などと訳されます。
高強度と低強度のトレーニング強度に「2極化」したモデルであるということです。

このトレーニング方法は
Stephen Seiler氏が、提唱した【持久的競技】においてのトレーニングモデルであると言われています。
「低強度80%・中強度5%・高強度15%」
このような割合でのトレーニング分布が提唱されています。

持久的運動の競技者においては、
Polarized Trainingによるメリットや効果が検証されて認められています。

どの運動タイプや運動時間にとって
このトレーニング方法が最適なのか。
スプリント(短距離・短時間)運動でも当てはまる方法論なのか。検討した上で取捨選択をしていただきたいところです。

こういったトレーニング論による強度の割合で、
最優先に考えるべきは「高強度運動の頻度」でしょう。
心身のダメージと回復を考慮して能力向上を狙う。こういったパズルのような作業が運動処方者の大仕事のひとつです。

もっとパズルが上手くなりたい…。

タイトルとURLをコピーしました