トレーニングの頻度を再考しよう – ダブルスレッショルド・トレーニングによる新たな視点 –

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「長時間のトレーニングをこなすほど強くなる」
多くのコーチや指導者が抱くこの考え方がありますよね。

持久力を高めるためには、トレーニングの長さだけでなく、頻度にも注目する必要があります。今回は、1回の長いトレーニングと2回に分けた短いトレーニングを比較した研究を紹介します。

それから、水泳選手のトレーニングは「これで良いのか?」という点についても考えを巡らせてみたい。最適なトレーニングの組み立て方を探っていこ\(^^)/

目次

研究紹介:1回の長いトレーニング vs 2回の短いトレーニング

✅持久系アスリートにおける「1回の長時間の中強度トレーニング」と、「2回の短時間で同じ強度と時間を確保したトレーニング」を比較しました。その結果、1回の長時間トレーニングでは、心拍数や乳酸値、運動感覚(RPE)がセッション後半にかけて増加することが確認されました。これに対し、2回に分けた短時間トレーニングでは、2回目のセッションでこれらの生理的な応答が減少しました。

さらに、1回の長時間トレーニング後には、疲労感や筋肉痛が翌朝にまで残る傾向が強く、短時間のセッションを2回行うよりも体への負荷が大きいことが明らかになりました。

このことから、長時間トレーニングはその分、生理的な負荷が高く、回復に必要な時間も増える一方で、短時間のセッションを2回行う(ダブルスレッショルドの)場合は、身体的なコストが低く、より多くの時間をこの強度で積み重ねることができる可能性があると示唆されています。

題名:Comparison of acute physiological responses between one long and two short sessions of moderate-intensity training in endurance athletes
著者:Rune Kjøsen Talsnesら
公開日:2024年7月30日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11319183/

▶︎実験参加者
・14名のトレーニングを積んだ男性アスリート(ナショナルレベルのクロスカントリースキー選手11名、ランナー3名)が実験に参加。

▶︎実験内容
・6×10分のインターバルトレーニング(SINGLE)または、2回の3×10分のインターバルトレーニング(DOUBLE)をそれぞれ6.5時間の回復時間を挟んで実施する2つのトレーニングに参加しました。
・運動形式はランニングで実施。

※詳しい内容はフルテキストをご覧ください。

私見まとめ

いわゆる「ダブルスレッショルド・トレーニング」のメリットを裏付けするような研究でした。中長期で見たときに、どのような効果が見られるかは今後を見守る必要があるでしょう。

乳酸閾値(LT値)を向上させる目的で実施する「中強度トレーニング」の総量を中長期で増やしていくには、ダブルスレッショルド・トレーニングを選択肢の一つに加えていきたいと考えさせられました。

水泳選手のトレーニング手法は?

「ダブルスレッショルド・トレーニング」や「ポラライズド・トレーニング」は、マラソンやクロスカントリーなど長時間を要する競技に最適化されてきた手法です。

それらの競技に比べて、水泳競技の運動時間はどうでしょうか?

400mや1500mといった水泳の中長距離においても、これらの手法が役立つ場合があります。さらには、100mのような短距離種目にそのまま適用しても成果が出ることがあります。

なぜ短距離でも成果が出るのか?それはおそらく、これらのトレーニング手法が目指す「生理学的な適応」によるものではなく、繰り返しの運動により「テクニックが最適化」されたためだと考えられます。

特に水泳では、抵抗減による効果が大きい。すなわち身体の使い方や技術の向上がパフォーマンスに直結することが多く、量をこなすことでそのテクニックが勝手に磨かれている可能性が高いです。

でも、これで良いのかな?

上記のように多くの選手が「とにかくたくさんの量を泳ぐことでテクニックを向上させよう」というアプローチを取る場面によく遭遇します。確かに、繰り返し泳ぐことで技術が向上することもありますが、それはある意味、選手の才能に依存するギャンブルのようなものです。

たくさん泳ぐことで体が覚えることもありますが、選手が意識的にテクニックを向上させられるように、コーチングと技術指導を通じて、着実に選手の能力と可能性を引き出していきたい\(^^)/

私から一つ言えることは、「水泳選手は、ちゃんと筋トレしよう」です。

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