「ウォームアップ運動は必ずやるべきもの」—— そう信じている人は多いでしょう。
しかし、どのようなウォームアップが効果的なのか、そもそも全員に必要なのかについては、実は科学的に明確な結論が出ていません。
最近の研究論文(メタ分析)によると、ウォームアップの主な効果は「筋肉の収縮速度向上」であり、「最大筋力にはほとんど影響しない」ことが示唆されています。さらに、能動的(運動を伴う)ウォームアップと受動的(温熱を利用する)ウォームアップの効果に大きな差がない可能性も指摘されています。
では、この研究結果をどう解釈すればいいのでしょうか?ウォームアップのやり方を変えるべきなのでしょうか?
今記事では、「ウォームアップ」について考えを巡らせていきたいと思います。
読者に考えて欲しいこと
本記事では、以下の3つのポイントをお伝えします。
- ウォームアップの科学的効果とは?(どのような要素がパフォーマンスに影響するのか?)
- 受動的ウォームアップ vs. 能動的ウォームアップの違い(どちらが優れているのか?)
- ウォームアップを最適化するための具体的な方法(どのように選択すればよいのか?)
単に「ウォームアップをすれば良い」という考えではなく、「目的に応じた最適なウォームアップを選ぶ」ことが重要であるという視点を持つことが大切。
論文紹介(科学的エビデンス)
題名:The effect of muscle warm-up on voluntary and evoked force-time parameters: A systematic review and meta-analysis with meta-regression
著者:Cody J. Wilsonら
公開日:2025年1月25日
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S209525462500002X?via%3Dihub
① ウォームアップの主な効果とは?
ウォームアップによる主な生理的効果として、以下の点が確認されました。
✅ 筋肉の収縮速度機能が向上する(例:スプリントやジャンプなどの動作が改善される)
✅ 最大筋力(最大挙上重量など)にはほとんど影響しない
これはつまり、ウォームアップは「動きの速さが重要な競技」では有効だが、「純粋な筋力を発揮する競技」ではあまり影響しない可能性があるかもねということです。
② 受動的ウォームアップ vs. 能動的ウォームアップの違い
温熱療法(ホットパック、サウナ、温水浸漬など)と運動を伴うウォームアップの効果に大きな差は見られなかったという結果が出ています。
しかし、これは「受動的ウォームアップだけでOK」という意味ではありません。なぜなら、受動的ウォームアップは筋温を上げる効果はあるものの、実際の運動に必要な神経系の活性化や動作の準備には不十分な可能性があるからです。
③ ウォームアップの「質」に関する重要なポイント
論文内では、ウォームアップの「質」に関する具体的な議論はあまりされていませんでした。
パフォーマンスを発揮する前に、自分の体が必要なことは何か?を見極められるようになれたら理想ですね。例えば、可動域が不足していたら?普段の練習で取り組んでいた動作を忘れそうになっていたら?
したがって、「とりあえず何かやればいい」という考えではなく、「目的に合ったウォームアップをする」ことが重要なのです。
私見まとめ(最適なウォームアップの考え方)
① ウォームアップは万能ではない
ウォームアップをすれば必ずパフォーマンスが上がるわけではありません。特に、最大筋力を発揮する競技では、それほど効果が期待できない可能性がある ことを理解しておくべきです。
逆に、スプリントやジャンプなどの動作速度が重要な競技では、ウォームアップの効果がより大きいことが示唆されています。
② 受動的ウォームアップと能動的ウォームアップを組み合わせるのがベスト
「温めるだけで十分」ではなく、やはり本番の動作を意識したウォームアップを取り入れることが重要です。
例えば、筋温を上げる目的で温熱療法を活用し、その後に本番の動作を確認するためのエクササイズを取り入れるという方法が考えられます。
③ ウォームアップは「量」ではなく「質」を重視すべき
長時間のウォームアップが逆効果になることもでしょう。目的を見失ってしまわないように「疲労を溜めない」ことも考慮して設計すべきですね。
ウォームアップの手法によっては、技術的な変化が発生することもあるよ↓

結局ね
「ウォームアップ=単なるルーチンワーク」ではなく、「目的を持って最適化する」という視点を持つことが、競技力向上のカギになります。
“絶対みんなに当てはまること”なんて無いから、安心して自分の道を行ったら良い。だけど、”多くの人に当てはまること”は知っておいた方が確率あがるから頭の片隅にでも置いとこ。