レース本番前の「ウォームアップ」については頭を悩ませる課題です。
選手やチームによって、様々なウォームアップが実施されていると思います。
今記事では、100mクロールのタイム計測をする前に、2つのウォームアップを比較実験した論文をご紹介します。
その前に、
そもそも、100mレース前にウォームアップすることによる効果はあるのでしょうか?
先行研究ではこのような結果が出ています。
20名の競泳選手でウォームアップ「あり」と「なし」で比較したところ、
3名が「なし」で速く泳ぐことが確認された。
だが、その他の参加者は「あり」で速く泳ぐことが出来た。
結論としては、100mレース前に実施するウォームアップの重要性が示唆された。
(2013:Henrique P Neivaら)
論文紹介
題名:Warm-up for Sprint Swimming: Race-Pace or Aerobic Stimulation? A Randomized Study
著者:Henrique P Neivaら
公開日:2017年9月
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27806010/
論文結論:ウォームアップ「強度」の違いによる、100mタイムへの効果は見られなかった
■100mタイムへの差は見られなかったが、生理学的な測定数値は異なっていた。
■「有酸素性強度」では、100mトライアル前半50mでのストローク効率が高く、トライアル後の血中乳酸値が低かった。
■「レースペース強度」では、100mトライアル前半の50mでのストローク頻度が高かった。
■13名中、9名が「レースペース強度」後にタイムが良かった。4名は「有酸素性強度」後にタイムが良かった。
論文内容:「レースペース」と「有酸素性強度」とで比較!
<実験参加者>
・ポルトガルの全国レベル競泳選手
・13名(15〜20歳)が参加
<ウォームアップ内容>
共通(1) 300mクロール
共通(2) 100m×4本[1:50cycle](25m Kick + 25m ストローク長を長く泳ぐ)×2
レースペース(3) 50m×8本[1:00cycle](50m×2本ドリル、50m×2本 Build up 速度、50m×4本[25m RacePace + 25m イージー])
有酸素性(3) 50m×8本[1:00cycle](98-102% critical velocity)
共通(4) 100m イージースイム
私見まとめ
■100mレース前には、ウォームアップを実施したほうが良い。
■ウォームアップ強度によって、その後の運動パターン(ストローク技術・エネルギー供給システム)が変化する可能性がある。
■レース前半で「行き過ぎちゃう」人は、ウォームアップでAerobic強度を多め(レースペース少なめ)にするのもアリ。
このように考えました。
個人的には、50mレース前には「低強度でのダラダラW-up」は少ないほうが良い、と感じていました。
長くダラ〜っと泳いでいると、瞬発的なチカラ発揮がしにくい感覚があります。
みなさんはいかがでしょう?
選手の方々は、ご自身のルーティンを今一度、見直してみることで面白い結果が待っているかもしれません。
まぁ、普段からの積み上げてきた努力が、結果のほとんどを占めるワケですので
ウォームアップでどうにかしようという考えでは手遅れでしょうが…。
それでも、0,01秒で順位や標準突破の有無が変わってくるのも現実です。
選手の方々それぞれの個別性アプローチが必要だよね〜。当たり前だけど…。