今回ご紹介する論文は、平泳ぎのバイオメカニクスについてです。
表面筋電図(EMG)を用いた比較実験となります。
初心者スイマーと上級者スイマーとの運動学的な違いについて考えてみましょう。
論文紹介
題名:Muscle coordination during breaststroke swimming: Comparison between elite swimmers and beginners
著者:João R Vazら
公開日:2016年2月15日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26878097/
論文結論:初心者と上級者との違いは、大きく2つ!
①<初心者>
■平泳ぎキックの「引きつけ動作」の終わりまで、大腿直筋の活動が見られる。
⇨股関節の屈曲が大きく・時間も長くなる。これにより抵抗も大きくなり減速の可能性。
②<初心者>
■平泳ぎキックの「引きつけ動作」の途中で、前脛骨筋の活動が見られる。
⇨足首の背屈するタイミングが早い傾向。これにより抵抗が大きくなり減速の可能性。
論文内容:筋電図の測定箇所は8つ!
<参加者>
・16名(8名の初心者/8名のエリート)の水泳選手が実験に参加。
・参加者は、ウォームアップ後に「25m全力での平泳ぎ」を実施。
・筋電図(EMG)は、上腕三頭筋、上腕二頭筋、僧帽筋下部、大胸筋、内側腓腹筋、前脛骨筋、大腿二頭筋、大腿直筋から測定。
私見まとめ
■初心者は「脚を引きつける意識」が強い
■初心者は「足の裏で水を蹴ろうとする意識」が強く、そのタイミングも早い
このようなことが、今回引用させていただいた論文結果から分かりました。
8箇所の筋肉から測定しているのは、拮抗筋としてのペアとなっていますので
「共収縮」についても見ることが出来ました。
エリート(上級者)は、筋肉の「共収縮」があまり見られず、
初心者ほど、「共収縮」が見られます。動きに対するイメージがスムーズではないのでしょう。
平泳ぎキックについての動作イメージへの「声かけ」については、
DASHオンラインの方で共有させていただきたいと思います。
今回紹介した論文のような、筋肉活動のタイミングに関する知識を、なんとなく知っておくだけでも
水泳動作における理想の【姿勢】へ近づけるかもしれません。
学術的な知見や、現場で実際に体験して得られる知見、
どちらも融合して、スイミングや水泳教室での一般スクールや低年齢層への指導に活かしていけたら良いな。と強く感じています。
文字で運動を理解することと、実際にコーチ・指導者として目の前の人(選手や生徒)への「声かけ」は一致しませんもんね。