トライアスロンはスイム、バイク、ランの3つの運動で構成されています。
そのうち「スイム」は最初のセクション。
スイムは環境面で大きく分けると、オープンウォーター(海や湖)とプールという2つがあります。
それぞれの環境がアスリートのパフォーマンスにどのように影響するかを理解することはとっても大切。
今記事では、オープンウォーターとプール、それぞれの環境がパフォーマンスに与える影響について深掘りしてみます。
トライアスリートおよびトライアスロン指導者の皆さんのお役に立てればと思います\(^^)/
【研究紹介】オープンウォーターとプールとのパフォーマンス比較
14名の世界クラスのトライアスリート(男性10名、女性4名)を対象に、オープンウォーターとプールでの1500mスイミングテストを実施。
各テストでは、スイムのパフォーマンス、運動学的変数(ストローク頻度、ストローク長)、および生理学的変数(心拍数、血中乳酸濃度)が比較されました。
パフォーマンスと運動学的な変数
研究の結果、オープンウォーターではプールに比べて、泳ぐ速度が低下し、ストロークレート(SR)は増加。
ストローク長(SL)は短くなりました。
これは、オープンウォーターの環境(波、流れ、風など)がスイミングの運動学に影響を与えるためです。
特に、オープンウォーターでは、選手が目印(ブイ)を確認するために頭を上げる必要があり、その結果、SLが短くなる傾向が見られる。
また、プールでは壁けり・ターンがあるため、オープンウォーターに比べて速くなることがわかりました。
生理学的な変数
心拍数、血中乳酸濃度、および運動後の酸素摂取量は、オープンウォーターとプールの間で大きな差は見られませんでした。
これは、エリートトライアスリートが異なる環境でも、同じ努力度を維持できる能力を持っているためと考えられます。
トレーニングへの応用
これらの結果は、トライアスリートとコーチにとって、とても大切な認識を与えてくれますね。
オープンウォーターのような変化する環境に適応するために、特定のトレーニングセッションを設けることが普段の練習において重要でしょう。
たとえば、オープンウォーター環境でのトレーニングでは、ストローク頻度(SR)を高いまま維持する技術と持久力を練習することが有効です。
また、運動学的変数を観察・モニタリングすることで、効率的なスイミング技術を習得し、競技環境でのパフォーマンスを最大化することができます。
特に、ストローク頻度(SR)やストローク長(SL)の変化を観察し、選手がオープンウォーターの特性に適応できるよう指導することが重要となるでしょう。
私見まとめ
オープンウォーター環境とプール環境を比べてみると、泳ぎのパフォーマンスに影響を与え、泳速度や運動学的変数の違いが見られます。
しかし、生理学的変数に関しては、オープンウォーターとプールの間に大きな差は見られませんでした。
トライアスリートは、オープンウォーターの特性を認識し、それに適応するためのトレーニングを積むことで、競技全体のパフォーマンスを向上させていきましょう。
トライアスリートがプールでの練習で取り入れるべきポイントは?
ストローク頻度(SR)とストローク長(SL)の調整
プールでも意識的にストロークレートを上げる練習を行い、オープンウォーターでの泳ぎに対応できるように。
例えば、100m×8本(行きの50mでテンポを上げる/帰りの50mではテンポを落としてストローク長を伸ばす)
このように両方の要素を練習に取り入れてみましょう。
方向確認(ヘッドアップ)の練習
オープンウォーター環境ではヘッドアップで方向を確認する動作が必要です。
プールでも、25mや50mのスプリント練習の際、特定のターンポイントでヘッドアップ(顔を上げて進行方向を確認する)練習を取り入れます。
これにより、オープンウォーター環境での視覚的な情報収集能力を鍛えていきましょう。
ターンでの加速効果を減らすような練習
プールの練習では、オープンウォーター環境とは違って、壁をける動作により加速をすることが可能です。
そのためプールでの練習で、ターンによる加速を省いて、「壁をけらずに」スタートするような練習を取り入れみましょう。
これにより、オープンウォーターでの連続した泳ぎを想定し、運動の持久力を高めることを期待します。
インターバルトレーニングと持久力トレーニングのバランス
オープンウォーターでは長時間の持久力が必要となります。
一方で、トライアスロンにおける「スイム」レース中は、スパートや戦術的なペース配分も必須でしょう。
これらを考慮して、長距離を一定ペースで泳ぐ持久力練習と、短い距離を全力で泳ぐインターバルトレーニングをバランスよく取り入れていきましょう。