ゆっくり泳ぐのと、全力で泳ぐのとでは、体の中で起きていることは違うのか?水泳の練習強度による違いについて

  • URLをコピーしました!

スイミングの現場で、コーチたちは日々選手に「この強度で泳いで」「次は全力で」と指示を出していますよね。

その強度の違いによって、体の中では何が起きているのかな?

「強度を変えれば効果が変わる」なんて当たり前だと思うかもしれないけど、その「当たり前」を少しでも理解していくと、日々の練習メニューの解像度がアップするかもだよ。みんなでアップデートしてこ。

目次

この記事を通して読者に伝えたいこと

運動強度の変化によって、体の中で使われるエネルギー供給システムが根本的に異なる。

それらを理解することで、「なんとなく」練習を組む日々の作業から、
「意図を持った」練習を組むというクリエイティブな仕事へと進化するかも。

きっと、練習メニューを選手の皆さんへ説明するときの言葉にも魂が乗ってくよ。

あわせて読みたい
運動のエネルギー供給システムについて【ATP基礎知識】 前回の記事で、運動するときに必要なエネルギー「ATP」という言葉について触れました。 今回の記事では、「ATP」を作り出す【エネルギー生産システム】についてまとめま...
運動エネルギーの基礎知識はバッチリ?

研究論文の紹介

題名:Acute metabolite responses to swimming exercise of different intensities in highly trained male and female swimmers
著者:Andew D. Govusら
公開日:2025年8月26日
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.14814/phy2.70532

【対象者】16名の高レベルスイマー(男性9名・女性7名/16〜24歳)

実験の流れ

▶︎クリティカルスピード(CS)測定:12×25m全力泳(レスト5秒間)で各自の基準スピードを算出

▶︎3つの強度で泳ぐ実験
– 中強度:5×400m -CSより低い強度-
– 高強度:3×(8×100m) -CS相当-
– 最大強度:3×(35mDiveMax+50mDiveMax×2) -CSより高い強度-

▶︎血液サンプル採取と代謝分析:各セット前後に1mL採血し、1,000種類以上の代謝物を分析

論文結論

✅脂質代謝vs糖質代謝の使い分け

▶︎中強度域では:
– 脂肪酸(ステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸など)が大幅に増加
– 体はじっくりと脂肪を燃やしてエネルギーを作っている状態
– 持続的なエネルギー供給に適している

▶︎最大強度域では:
– 乳酸、ピルビン酸、アラニンが急激に上昇
– 糖質を一気に分解してエネルギーを作る代謝が優位
– 短時間で大きなパワーを発揮できるが、持続性は低い

✅男女差の存在

▶︎特に最大強度域では男女で異なる代謝反応を示した。男性選手では脂肪酸の増加が女性より少ない傾向があり、これは筋肉量や体脂肪率の違い、さらにはホルモンの違いが影響している可能性があるとのこと。

✅血液内の測定技術が進歩している

▶︎従来の血中乳酸測定だけでは見えなかった代謝の全体像を、わずか1mLの血液サンプルで詳細に把握できることが実証された。

私見まとめ

私たちのスポーツ指導現場にはまだまだ「なんとなく」の指導が多いよね。

実際に取り組む選手の体の中では、泳ぐ強度が変わるだけでエネルギーの使われ方がまるで別物になってる。
脂肪をメインに燃やしているのか、糖を一気に分解しているのか。
それを知らずに「強度を変える」というのは、まるで地図を持たずに山を登るようなものだね。

トレーニングの作り手としての態度

トレーニングを作る側としては、「身体にどんな反応を起こしたいか」を明確にしていきたいね。
つまり、どの代謝システムを狙って刺激を入れるかを意図して設計すること。それが選手に説明するさい大切かな。

例えば、同じ100m×10本のメニューでも、
レストの設定や強度設定により狙う代謝反応を変えれば、まったく別の練習になる。
それを理解していないと、練習はただの「作業」で終わっちゃうのよね。

とはいえ経験則も大切よね

経験は大切だ。
だけど、経験則だけで現場を動かしていると、
選手の成長を「コーチのイメージしている範囲内」に閉じ込めてしまう危険があるようにも思う。

一方で、科学的な知見も、
現場で選手とカスタマイズする実感がなければ、ただの数字の羅列でしかない。

大事なのは、経験と科学を行ったり来たりするような姿勢だね。
感覚的に「こういった練習が良さそう」と思ったら、
その背景にある生理的・代謝的な理由を考えてみる。たまにはそんなチャレンジングな姿勢も良いかも。

ジュニア育成の現場にこそ「代謝の理解」を持ち込もう

ジュニア期の指導は、結果を急がず、代謝の土台をつくることが何より大切だね。

ハイボリューム練習ばかりで、筋力向上やスプリント能力を育てないのは、
アクセルを全開にしてもエンジン出力が弱い車を走らせているようなもの。

逆に、脂質代謝を育てずに高強度ばかりやらせるのは、
燃費の悪いエンジンで、常にアクセルを踏み続けるようなもの。

短期的な成果は出ても、長期的な成長は止まってしまいがち。
「目先の結果」よりも「育てる」
この視点を持てるかどうかが、10年後に選手が「水泳を楽しめているか」を左右するのかも。

あわせて読みたい
細胞を飽きさせない。ミトコンドリアを刺激し続けよう【トレーニングの適応について】 「去年と同じメニューで、同じように追い込んでいるのに、記録が伸びない。」「昔のやり方にこだわって、新しい方法を取り入れるのが怖い。」 そんな声を、現場でたくさ...
トレーニング計画についても勉強しよう!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

山﨑 裕太のアバター 山﨑 裕太 コーチ

アスリートのコーチングが仕事
オリンピック選手指導
趣味は飲みニケーション
相談はお気軽にね

目次