前回の記事で、運動するときに必要なエネルギー「ATP」という言葉について触れました。
今回の記事では、「ATP」を作り出す【エネルギー生産システム】についてまとめます。
アスリートに皆さんにとっても必須な基礎知識です。取り組んでいるトレーニングへの理解も深まるかと思います。
教科書的な内容になることが予想されます…。
エネルギー生産システム
①ホスファゲン系(別名:ATP-PCr)
PCr(クレアチンリン酸)を用いて「ATP」が作られます。
・クレアチンリン酸⇨ATP
・ADP+ADP⇨ATP+AMP
※クレアチンリン酸からATPが生産されます。ADPという物質からATPを生産するシステムもあります。
②解糖系
糖(グルコース)を用いて「ATP」が作られます。
・糖⇨ピルビン酸⇨(糖分解の量が少ない場合)⇨アセチルCoA
・糖⇨ピルビン酸⇨(糖分解の量が多い場合)⇨乳酸
※糖からピルビン酸へ分解されるときにATPが生産されます。
※乳酸については別の機会に取り上げたいと思います。
③ミトコンドリア系(別名:酸化系)
糖・脂質を用いて「ATP」が作られます。
・糖⇨ピルビン酸⇨アセチルCoA⇨ミトコンドリアへ
・糖⇨ピルビン酸⇨乳酸⇨ミトコンドリアへ
・脂肪をβ酸化(ミトコンドリア)
※ミトコンドリア以降でATPが生産されます。
エネルギー供給の時間(速度)的な特徴
①ホスファゲン系(別名:ATP-PCr)
爆発的エネルギーシステム
稼働時間:0〜6秒
減衰時間:約1.3秒あたりから
②解糖系
高強度エネルギーシステム
稼働時間:3〜60秒
減衰時間:20〜30秒あたりから
③ミトコンドリア系(別名:酸化系)
持久的エネルギーシステム
稼働時間:3秒〜
減衰時間:9秒程で生産ピーク値となり減衰はあまり見られない。
全力運動の時間別システム稼働【割合】
Aerobic=有酸素性エネルギー=上記システム③=酸素が介在する過程
Anaerobic=無酸素性エネルギー=上記システム①と②=酸素が介在しない過程
【12秒】
有酸素性エネルギー(1):無酸素性エネルギー(9)
【20秒】
有酸素性エネルギー(2):無酸素性エネルギー(8)
【30秒】
有酸素性エネルギー(3):無酸素性エネルギー(7)
【45秒】
有酸素性エネルギー(4):無酸素性エネルギー(6)
【75秒】
有酸素性エネルギー(5):無酸素性エネルギー(5)
【2分】
有酸素性エネルギー(6):無酸素性エネルギー(4)
【3分】
有酸素性エネルギー(7):無酸素性エネルギー(3)
【4分】
有酸素性エネルギー(8):無酸素性エネルギー(2)
※hari-sports YY まとめ(参考論文より)
まとめ
エネルギー回路を認識して、
普段のトレーニングに取り組むことを推奨しています。練習に対する理解度が高まり「練習の質」が向上するかもしれません。
指導者であれば、トレーニング作成に対する「指標」となります。
目の前の選手が、その練習に取り組む際の「目安や根拠」となるでしょう。
私としても、キチンと内容を理解して落とし込み
取り組む選手たちがムダな方向へ苦しむことの無いように、練習を構成していきたいという思いです。
参考論文
In vivo ATP synthesis rates in single human muscles during high intensity exercise
著者:Glenn Walter
公開日:1999年9月15日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2269548/
Energy system interaction and relative contribution during maximal exercise.
著者:Gastin PB
公開日:2001年8月
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11547894
Energy system contribution during 200- to 1500-m running in highly trained athletes
著者:Spencer MRら
公開日:2001年1月
https://journals.lww.com/acsm-msse/Fulltext/2001/01000/Energy_system_contribution_during_200__to_1500_m.24.aspx
Interaction among Skeletal Muscle Metabolic Energy Systems during Intense Exercise
著者:Julien S. Bakerら
公開日:2010年12月6日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3005844/
Anaerobic Contribution Determined in Swimming Distances: Relation with Performance
著者:Eduardo Z. Camposら
公開日:2017年10月10日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5641383/