腸腰筋の解剖学(筋繊維タイプ)

オンラインスイマーズによるディスカッションのおかげで

ここ最近、ドルフィンキックについて考える機会が多くありました。

ディスカッション中にも出てきた【腸腰筋】について、スイマーの方々から質問や疑問が多かったので

腸腰筋について解剖学的な視点から記事をまとめてみます。

目次

腸腰筋とは

「構成」

大腰筋、小腰筋、腸骨筋という主に「3つの筋肉」を総称して【腸腰筋】と呼びます。


「解剖学」

大腰筋

<起始>
(浅頭)胸椎12番〜腰椎4番
(深頭)腰椎1〜5番

<停止>
(腸骨筋と合流して)大腿骨の小転子

小腰筋

<起始>
胸椎12番〜腰椎1番

<停止>
(大腰筋と合流して)腸恥隆起

※小腰筋は約40%の人口で欠損している(Anderson CN:2016

腸骨筋

<起始>
腸骨内面の上部3分の2、仙骨の外側

<停止>
(大腰筋と合流して)大腿骨の小転子


「作用」

【腸腰筋】

・股関節の屈曲として主に働きます。
・下肢が固定されている場合は、体幹部の屈曲に働きます。

<大腰筋>
股関節の屈曲。股関節の外旋(わずかに)。
※股関節の屈曲時に、腰椎を安定させる機能。
※股関節屈曲(最初の15度)で寛骨臼の大腿骨頭を安定化させる機能。

<小腰筋>
股関節の屈曲。

<腸骨筋>
股関節の屈曲。股関節の外旋。
※骨盤を安定させる機能。


筋肉繊維のタイプ

大腰筋

・タイプⅡa繊維(約60%) ※わずかにタイプⅡx繊維も含む

⇨股関節に近い部位で多く見られる。

※股関節に近い筋繊維では、関節運動の動的な機能。

・タイプⅠ繊維(約40%)

⇨腰椎に近い部位で多く見られる。

※腰椎に近い筋繊維では、固定・安定性といった姿勢保持機能。

Juraj Arbanasら:2009

小腰筋

動物(ウマ)では、
タイプⅠ繊維とタイプⅡ繊維の割合が同じくらい(1:1)であった。

Heli K Hyytiäinenら:2014

腸骨筋

動物(ラット)では、
大腰筋と同様の筋繊維タイプの割合。

Hrvoje Vlahovicら:2017


参考論文

題名:StatPearls(Anatomy, Bony Pelvis and Lower Limb, Iliopsoas Muscle)
著者:Bruno Bordoni; Matthew Varacallo.
公開日:2019年5月11日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK531508/


私見まとめ

今回、腸腰筋の解剖学についてを取り上げてみようと思ったのは、

【筋繊維タイプ】についての考え方を文字にしておこう。と思い立ったからです。

上記の「腸腰筋の繊維タイプ」でも書きましたが、

■関節運動の安定性に働く筋肉は「赤い筋肉(タイプⅠ繊維)」

■関節運動の動的な機能に働く筋肉は「白い筋肉(タイプⅡ繊維)」

このような視点で考えると【関節運動】についての理解も深まりやすい考え、選手の皆さんへ説明するときは用いています。


先日、選手の方から
「ドルフィンキック動作で、股関節屈曲させるのはモモ前の筋肉を使うほうが良いのか?腸腰筋を使うほうが良いのか?」

このようなニュアンスの質問を受けました。

私が、今記事を通して言えることは、

「筋繊維の走行(起始と停止)から考えて、より多くの筋肉が動員される姿勢(動き)づくりをすると良いのでは?」というように答えることが出来ます。

では、実際にどのように現場に活かしているのかはまた別の機会に。

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