水泳選手の多くが「肩の痛み」を経験していたり、現在進行系で悩まされている人もいるかと思います。
肩の痛みを抱える選手では、肩峰下インピンジメントや筋腱の損傷や運動学的な機能不全などが見られる傾向にあります。
(No.77 水泳肩【スイマーズショルダー】について)
今記事では、水泳選手による「スイム練習が肩関節に与える影響」についての研究論文をご紹介いたします。
論文紹介
題名:The short-term effect of swimming training load on shoulder rotational range of motion, shoulder joint position sense and pectoralis minor length
著者:Emma Higsonら
公開日:2018年5月12日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6134534/
論文結論:スイム練習後は、肩関節の位置感覚および関節可動域(ROM)に負の影響がありました
☑肩関節の位置感覚は、スイム練習後に、エラー(誤差)が大きくなりました。
☑肩関節の外旋可動域は、スイム練習後に、減少が見られました。
☑小胸筋の長さ(短縮)テストは、スイム練習後に、減少が見られました。
論文内容:エリート水泳競技者16名を対象とした研究
■16名(男性9名/女性7名)のエリートスイマーが実験に参加しました。
■スイム練習の前後で、肩関節のテスト測定が実施されました。
■スイム練習は、約2時間の典型的な強化期トレーニング。
■肩関節の測定項目は、主に3つ(内旋外旋ROM/関節位置覚テスト/小胸筋の長さ(短縮)テスト)
私見まとめ
水泳(スイム)練習は、1回の練習で3000m程度の距離を泳ぎます。
全てがクロール泳の場合、1回の練習で片方の肩を約「600」も回転させることになります。
トレーニングによる酷使によって、エリート水泳選手は肩関節が「弛緩(laxity)」している傾向にあるようです。
そのような状態は、肩関節の傷害発生リスクが高まることも指摘されています。
(M J Zemekら:1996) (Mya Lay Seinら:2010)
こういった内容の記事を書くと、
「量的なトレーニングは不要だ」というような部分だけを切り取って、声高らかに振りかざす人が出てきます。
当然ですが、けっして量的なトレーニングが不要なわけではありません。
量も一つの刺激として取り組む時期があっても良いと思いますし、あったほうが良いとも思います。そのへんは程度と認識の問題です…。
競技コーチ・運動指導者・トレーニング量の多いアスリートの方々は、傷害発生リスクが高いことを認識して、
日頃から、関節の「安定性」「位置感覚」を高めるエクササイズを日々のルーティンとして実践することを強くオススメしたいと思います。