イソマルツロース(パラチノース)という糖質をご存知でしょうか?
スポーツ現場でも注目度が高まっているイソマルツロースについてまとめます。
イソマルツロース(パラチノース)まとめ
三井製糖が世界で初めて、
「砂糖」に酵素を与えることによってイソマルツロースを製造。
グルコースとフルクトースから構成される二糖類です。蜂蜜の中にも、ごく微量ですが含まれているようです。
パラチノースという用語は、三井製糖株式会社によって商標登録がされています。
以下に、他の糖質と比較して
イソマルツロースの優れている点や特徴を記載します。
①インスリンの分泌が穏やか
他の糖質と比べて、消化吸収がゆるやかとなります。
その結果、血糖値の上昇もゆるやかで、インスリン分泌も抑えられるということです。
しかし、消化吸収は遅いですが
カロリーとしては他の糖と同じで完全に消費されます。
②脂肪のエネルギー利用率が高まる
インスリンの働きは、糖を取り込み貯蔵します。それと同時に、脂肪の分解を抑制もします。
イソマルツロースは他の糖よりも、インスリン分泌が低いです。
様々な研究により、運動時の脂肪をエネルギーとして利用される率が増加することが分かっています。
③食欲を抑える作用がある
イソマルツロースは、他の糖と比べて
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)という消化管ホルモンの分泌が高まります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4015665/
このホルモンが脳へ信号を与え、食欲が抑制されるということが分かっています。
イソマルツロース摂取によるデメリット
運動中にイソマルツロースを多量に飲むと、胃腸障害が起こることがあるようです。
消化吸収に時間がかかるということは、それなりにリスクもあるということですね。
Ingesting Isomaltulose Versus Fructose-Maltodextrin During Prolonged Moderate-Heavy Exercise Increases Fat Oxidation but Impairs Gastrointestinal Comfort and Cycling Performance.
著者:Oosthuyse Tら
公開日:2015年10月
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25811946/
論文紹介①
題名:パラチノース摂取後のサイクリングパフォーマンス
Substrate Utilization and Cycling Performance Following Palatinose™ Ingestion: A Randomized, Double-Blind, Controlled Trial
著者:Daniel Königら
公開日:2016年6月23日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4963866/
内容:
20名(26〜32歳)の男性アスリートが実験に参加。
普段トレーニングされているアスリートが参加者でした。
実験の順序としては、
①実験ドリンク→②休憩45分→③サイクリング90分間(60%VO2max)→④最大努力のタイムトライアルテスト(体重1kgあたり6.5KJのカロリー消費するまで)
※実験ドリンクは2種類、750mlの水に対して①イソマルツロース75gか②マルトデキストリン75g
結論:サイクリングのパフォーマンス向上が見られた。
イソマルツロース摂取群では、脂肪のエネルギー利用率が高まりました。
それにより糖のエネルギー利用が抑えられていました。
最後のタイムトライアルテストでは、イソマルツロース摂取群が約30分間
マルトデキストリン摂取群が約31分間という結果でした。
つまり、イソマルツロース摂取群のほうがサイクリングパフォーマンスが高かったということになります。
※今回の論文研究デザインでは、結果が統計的有意性のレベルに達しなかったと記述があります。
統計的には効果ありと言えないということです。
論文紹介②
題名:イソマルツロース摂取による、若年男性のサイクリング(自転車こぎ)パフォーマンスと胃腸への影響
The effects of isomaltulose ingestion on gastric parameters and cycling performance in young men
著者:Masashi Miyashitaら
公開日:2019年6月13日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6599884/
内容:
14名(20歳前半)の健康的な男性が実験に参加。
トレーニングは特にされていない参加者でした。
実験の順序としては、
①休憩30分→②実験ドリンク→③休憩30分→④サイクリング60分間(75%心拍数)→⑤最大努力のサイクリングテスト15分間
※実験ドリンクは2種類、500mlの水に対して①イソマルツロース50gか②マルトデキストリン50g
結論:サイクリングのパフォーマンス向上は見られなかった。
イソマルツロースを摂取することにより、マルトデキストリンと比べて
血糖値およびインスリン分泌は明らかに低い数値となりました。
しかし、今回の実験デザインではサイクリングパフォーマンステストの改善が見られなかった。
まとめ
今回の記事では、2つの論文を紹介しました。
結論だけを見ると矛盾している内容です。
それぞれの実験デザインをみると、サイクリング運動時間が違ったり
糖質の摂取量が異なったりという点はあります。
運動パフォーマンスに与える効果は、ズバッと明らかにはなりませんでしたが
体への影響という点では、上記でもまとめた内容が裏付けとして明らかになっています。
論文紹介②の本文中にも記述がありますが、
イソマルツロースの運動パフォーマンスへの影響は、さらなる研究が必要である。ということです。
我々現場の人間は、研究者の皆さんによる報告を待ちたいと思います。