技術・テクニック向上への取り組みをもっとデザインしよう

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競泳は、タイムを競うスポーツです。

泳ぐ速度は、「1ストロークで進む距離×ストロークの頻度」で決まります。

泳いでいる距離のほかに、スタート・ターン・水中動作もタイムに直結する要素です。

それらを向上させるために【技術】は欠かせません。しかし多くの現場では、まずはひたすら量を泳いで体力を向上させる手法”だけ”が横行しています。

そこで今記事では、【技術】を高めるための方法について、近年注目されている「制約主導型アプローチ」という手法についての基礎知識のようなものをそっと書き置きしてみたいと思います。

目次

制約主導型アプローチとは?

✅Newell氏(1986)によって提唱されたモデルが原型だとされています。

個人・課題・環境という3つの制約の相互作用の結果、運動パターンが生じると指摘しています。

これら3つの制約を操作することによって、運動パターン(つまり技術)に変化があることとなります。

参考文献

(2023:Kotryna K. Fraser and Jill Kochanek)(2019:Fabian W. Otteら)(2023:Jia Yi Chowら)

※制約主導型アプローチ(CLA)などによる学習プロセスを包括して説明する上位概念に「エコロジカル・ダイナミクス」というものがあります。今記事では取り扱えるようなものではないので割愛させていただきます。またどこかの機会で。

テニスの練習で制約主導型アプローチを取り入れてみた研究

<研究の目的>
・本研究の目的は、制約主導型アプローチを応用し、8週間の介入を通じて、バックハンドストロークの発達に焦点を当て、これらの操作が子どもたちの試合中の行動とテニス特有の技能テストの成績に及ぼす影響を調査することであった。

✅制約を設けられた練習グループでは、従来型の練習グループと比較して、
– フォアハンドとバックハンドの割合が改善
– バックハンドの成功率が向上
– 技術的習熟度の向上
これらが見られた。

<参加者>
・テニス歴6ヶ月以上の16名が実験に参加。平均年齢7歳。
・制約主導介入群8名、対象群8名の2グループに分けられた。

<介入方法>
・週1回1時間の実験コーチング(合計8週間)が実施された。
・両グループとも同じコーチングを受け、同じドリルや練習を実施した。唯一の違いは、制約主導介入群で「追加の制約」が設けられたこと。
・追加の制約とは、練習中の試合ルールや採点方式を変更し、バックハンドの機会を増やすようにデザインされた。

2018:Anna Fitzpatrickら

看護師教育にも制約主導型アプローチを取り入れてみようという提言

✅看護学生が、注射針を(ダミーの腕で)打つ練習をする際、制約(質問をされてその質問に答える)を加えられると、注射針を打つことに集中しているだけの場合に比べて注射の精度は低下する。しかし、そのような制約を与えられた練習をすることによって、技能へのプラスの影響を与える。

2023:Peter G. Renden , Jeroen Dikken

水泳で抵抗パラシュートを着用することで技術に影響を与える

✅抵抗パラシュート介入群では、スプリント時のストロークレートを増加させ、推進局面の継続性を向上させ、泳速度向上が見られた。

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様々なテンポで泳ぐトレーニングは、泳ぐ技術を向上させる

✅テンポ・コーディネーション実験群では、ストローク長を伸ばし、推進効率を改善させ、泳速度を向上させる可能性が示唆された。

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私見まとめ

制約主導型アプローチという聞き慣れないワードが出てきました。

物事を理解するとき、対立軸で比較して見ると表面的に分かりますくなりますのであえて比較してみます。

反復練習型アプローチ vs 制約主導型アプローチ

反復練習では、ロールモデル(型)となる動作を繰り返し模倣することによって、運動パターンを学習することを目的としています。

一方で制約主導では、コーチや指導者から設定された制約の中で、運動パターンを探索していくことを目的としています。

つまり、簡単な言葉でまとめると

反復練習型アプローチは、受動的なテクニック学習

制約主導型アプローチは、能動的なテクニック学習

このように言えると思います。

どちらが良い悪いという優劣は無いです。選手の習熟度や理解度によって良い感じに使い分けるべし。

制約主導型アプローチで練習をデザインするときに注意すべきこと

それは、制約を「デザインした理由」を選手たちへ説明することが出来るようにしておくことです。

水泳練習の紹介

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