泳ぎの練習も大切だけど、壁を蹴る練習も大切だよ【競泳レース分析】

ターン動作の比較

なんだか軽やかなタイトルにしてしまいました。

水泳選手の競技練習というと、練習時間のほとんどを「泳ぎ」の練習に使います。

特にジュニア選手、小学生年代では「バタ足ガンバり続ける。腕をとにかく回し続ける」といった感じでもタイムは伸びます。

むしろ、そういった練習のほうが短期的に競技結果を見ると、優先順位が高いのかもしれません。

短期的には効果が見えづらいけど、長期的には重要になるだろうという視点。

そんな視点でのトレーニングも取り入れて行けたら良いなと個人的には思ってます。

今記事では、「泳ぎ」以外の部分の重要性を示している競泳レース分析に関する研究論文をご紹介します。

そういったレース分析から、日々のトレーニングへどのように落とし込んでいったら良いのか。

また、ご自身にとって現時点での優先度は?ということを考える上での参考になりましたら幸いです。

目次

論文紹介①

題名:Swimming turn performance: the distinguishing factor in 1500 m world championship freestyle races?
著者:Marek Polachら
公開日:2021年6月30日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/labs/pmc/articles/PMC8243611/

論文結論

✅1500m自由形の世界選手権では、(ターン前5mとターン後5m)区間タイムの違いが、メダルの色(順位)を変動させるほどの差が見られました。

■2018世界短水路および2019世界選手権での1500m自由形決勝競技をレース分析しています。


論文紹介②

題名:Key Factors Related to Short Course 100 m Breaststroke Performance
著者:Bjørn Harald Olstadら
公開日:2020年8月27日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/labs/pmc/articles/PMC7503867/

論文結論

✅短水路100m平泳ぎの合計タイムは、ターン後10m区間のタイムと相関関係が強く見られました。

■ターン後10m区間が速いほど、レースタイムが速い。ターン前後の重要性が示されています。

私見まとめ

今記事では、『ターン』に焦点をあてたレース分析の論文をざっくりと取り上げました。

当たり前ですが、ターンばかりに注意とエネルギーを配分してしまうと、他の区間でより良いパフォーマンスを発揮できなくなります。レースを「トータルで」見ていく視点が必要になりますよね。

紹介した研究論文中では、ターン動作そして壁を蹴ってから5mおよび10m区間の重要性が示唆されています。

そのために、ターン時の壁蹴りをいかに「強く・素早く」動作できるか?このような視点から練習していく必要があると思います。

どうしたら「壁蹴り」を強く・素早く動作できるようになるか?

そういった意識を持ち、ターン動作を反復して練習するしかない。

という答えになってしまうのですが、そういった意識およびイメージを持ちやすくするためにも「スクワット」トレーニングをオススメしています。

ターン動作の改善に、なぜ「スクワット」を勧めるのか?

簡単に説明してみたいと思います。

こちら2枚の画像が見えますでしょうか↑

両者を比べると、左の人は「ターン後5m通過が遅い人。スクワットで深くまでしゃがめない人」、右の人は「ターン後5m通過が速い人。スクワットで深くまでしゃがめる人」です。

このように、ターン動作では「深くしゃがむ」姿勢でチカラを発揮することとなります。なのでスクワットをオススメしています。

だいぶざっくりした勧め方になっちゃいました。別の機会で深堀りしたいと思っています。


スクワットについての過去記事↓

No.129 飛び込みスタートとスクワットジャンプの関係【論文紹介】

No.137 ジャンプ力を高める準備運動(PAP)【スクワットの深さ】

No.153 【スクワット】バーベル位置の比較研究について

トレーニングにスクワットを取り入れていく決意をした人は、スクワットを適切に教えてくれそうな人に対価を払って教えてもらうことがオススメです。

しかし独学も否定はしません。その場合は、徐々に負荷としゃがむ深さを増して行ったらよいよ。

レース分析してから実際に泳ぐまでに陥りやすい落とし穴

レース全体を(スタート局面・ターン局面・泳動作局面)などのように細分化することは、トレーニングを計画することにとって重要な考え方であると思います。

しかし当たり前ですが、「トレーニングを計画すること」と「実際に動作を行うこと」は異なります。

とくに陥りやすい落とし穴としては、

レース分析やトレーニング計画と同じノリで「動作」も細分化すると、どうしても内的意識(インターナルフォーカス)になりがちです。

※内的意識の例(肘の角度は~とか、骨盤は~~だ!とか、肩甲骨を回旋させるとか)

多くのスポーツ動作は外的意識(エクスターナルフォーカス)によって、パフォーマンスが向上する可能性が高いことが示唆されています。

No.87 【運動イメージが与える影響】エクスターナルフォーカス/インターナルフォーカス【論文紹介】

パフォーマンスアップには多角的なアプローチが必要なんですね〜きっと。


余談

「単発のセミナー」と「中長期的なコーチング」との違い

例えば、セミナーなどで「運動している際の意識」を教わることによって、受け手のパフォーマンスが向上することがあります。

しかし、一過性であることを経験した人もいるかもしれません。

調理で例えたら

「単発のセミナー」を、調理で言ったら最後の味付け。いや、お皿への盛り付け的な感じでしょうか。

「長期的なコーチング」は、食材から育てていくような過程でしょうか。

短期で伸ばす方法と、長期で伸ばす取り組み。

これらを使い分けたり同時並行で出来たらいいな〜。

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