【スクワット】バーベル位置の比較研究について

トレーニング

多くのアスリートが、筋力トレーニングを実施していると思います。その中でも「スクワット」に取り組んでいる人が多いのではないでしょうか。

ハイバー(High bar)スクワットか?
ローバー(Low bar)スクワットか?

今記事では、バーベルバックスクワットで「バーベルを背負う位置の違い」について考察してみます。

スポンサーリンク

私見まとめ

結論

スポーツ選手が競技練習以外で筋力向上(股関節伸展筋群)を目的としたスクワットを実施する場合、

各個人のやりやすいポジションで良い。

「やりやすいポジション」とは何か?と考えると、

「深くしゃがみやすい」という視点で実践していただけたら良いかと思います。

※「深く」とは、大腿部が床と並行になるまでしゃがむ【パラレル】スクワットもしくは、股関節が膝関節よりも床に近くなるまでしゃがむ【フル】スクワットを想定しています。

姿勢の違い

股関節

ローバースクワットのほうが屈曲が深くなり、ハイバースクワットのほうが浅くなる傾向にある。

膝関節

ローバースクワットのほうが屈曲が浅くなり、ハイバースクワットのほうが深くなる傾向にある。

足関節

ローバースクワットのほうが脛骨の傾きが強く、ハイバースクワットのほうが脛骨の傾きが弱い傾向にある。

筋電図(EMG)の活動量による違い

EMGは筋収縮のタイミングを見るものであると考えられるため、筋収縮の大きさ(活動量)を比較検討する意味があるのかどうかは研究者では無い私にはイマイチ分かりませんが述べてみます。

股関節の伸展筋肉

ローバースクワットのほうが、深くしゃがむにつれて、体幹部が前傾し、股関節の屈曲が大きくなりやすい。

そして、ローバーのほうが股関節伸展筋群(大殿筋、ハムストリングス)の筋活動量が大きくなる傾向が見られます。

膝関節の伸展筋肉

ハイバースクワットのほうが、深くしゃがむにつれて膝関節の屈曲が見られる。それによって大腿部前面(大腿直筋や内側広筋)の筋活動は大きくなる傾向が見られます。

体幹部の後面

ハイバースクワットのほうが、脊柱起立筋の下部繊維が有意に筋活動が高かったとする報告もあります。

※参考論文①

ハイバーで、体幹部をローバースクワットのように前傾させるようにすれば脊柱起立筋への負荷も高まりそうであるが、スクワットの目的をきちんと設定した上で取り組みたいものです。

私的な経験談

ハイバーでフルスクワットを取り組んでいた時に、仙骨に近い部位の腰を痛めた経験あり…。

体幹部の前面

腹直筋および外腹斜筋の筋活動を調査した研究では、ハイバーとローバーとの間に有意な違いは認められなかったが、

ハイバースクワットのほうが、腹部筋肉の活動が大きくなる傾向にあると思われます。

肩が痛くなる問題(個人的にはココが本題)

トレーニング指導者によっては、「スクワットではバーベルを背負わせない!肩に余計なストレスがかかってしまう」という主張の人もいるようです。

肩関節および肩甲骨の可動性(柔軟性)が低い人にとっては、「バーベルを背負う(特にローバースクワット)」という姿勢で、肩前面の筋肉がストレッチされ過ぎてしまう。それによって痛みや違和感を与えてしまう可能性が少なからず考えられます。

そういった点に敏感な人は、トレーニング指導のプロに教えてもらうことをお勧めします。

私が指導する場合

ほとんどの選手で、スクワットを実施する場合は「ハイバー」を取り入れています。

当然、選手個々の骨格などによって多少の変化はありますが、

「ローバースクワット」でストレングスを高めていく時間的投資や肩痛める問題を考えると、「ハイバースクワット」で進めていくほうが投資対効果が大きいケースが多くあるように考えています。

ですが、トレーニングの「いち刺激」としてローバースクワットを導入することもあります。

ローバースクワットのように体幹部の前傾姿勢での刺激を取り入れたい場合は「グッドモーニング」を導入したりします。


バーベルを背負う位置について

2020:Roland van den Tillaar and Eric Helms
こちらの研究で採用されていた方法を紹介します。

ハイバー(High bar)スクワット

頚椎7番(C7)の直下で僧帽筋の上部で、バーベルを背負いました。

ローバー(Low bar)スクワット

三角筋後部のすぐ上で肩甲棘に沿って、バーベルを背負いました。

参考論文①

内容:5RMでハイバーとローバーを比較。参加者10名の平均重量は158kgでした。

題名:The Effects of Barbell Placement on Kinematics and Muscle Activation Around the Sticking Region in Squats
著者:Roland van den Tillaarら
公開日:2020年11月11日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7739732/

結果(EMG):ハイバースクワットのほうが、大腿直筋・内側広筋・脊柱起立筋下部の筋活動が高かった。

参考論文②

内容:6RMでハイバーとローバーを比較。参加者12名の平均重量は102kgでした。

題名:Comparison of Muscle Activation and Kinematics in 6-RM Squatting with Low and High Barbell Placement
著者:Roland van den Tillaar and Eric Helms
公開日:2020年8月31日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7706642/

結果(EMG):筋活動に有意差は見られなかった。

結果(速度):ハイバースクワットでは、回数を重ねるにつれて(特に3回目以降)バーベル移動(上昇局面の)速度が遅くなっていった。

参考論文③

内容:パワーリフティング選手12名が参加。1RMの60%,65%,70%でハイバーとローバーを比較。

題名:Muscle activation varies between high-bar and low-bar back squat
著者:Michal Murawaら
公開日:2020年6月8日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7289144/

結果(EMG):ローバーのほうが、股関節伸展筋群(posterior muscle chain)のEMG数値が有意に高かった。

タイトルとURLをコピーしました