【パドルを使った練習では、何を目的にしているのか?】
私自身、今回ご紹介する研究論文を読むまでは、明確なパドル使用の目的は無かったな。と考えされられました。
なんとなくチカラが付きそう、とか。パワーが発揮されそう、とか。
今記事では、
競泳選手のスイム練習時に使用される「パドル」についての研究論文を紹介いたします。
以前、オンラインでディスカッションをさせていただいた「角川さん」が筆頭著者の研究論文を引用させていただきます。
コチラがその時のオンラインディスカッション↓
テーマは「バタ足」についてでしたが、動画の最後でちょっぴりだけパドルの研究について触れられております…。
論文紹介:パドル使用時の「パワー」や「泳速度」を調査
題名:The Effect of Using Paddles on Hand Propulsive Forces and Froude Efficiency in Arm-Stroke-Only Front-Crawl Swimming at Various Velocities
著者:Takaaki Tsunokawaら
公開日:2019年3月9日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30861470/
論文結論:「パドル」と「素手」の違いについて
(同じ泳速度の場合)
・素手もパドル使用時も、推進力と抵抗力に差は無かった。
・パドル使用時は、「ストロークレート」と「手の速度」が低下しました。
・(Pk)が減少しました。※1
・パドルを使用して、素手と同じ速度で泳いだ場合は、トレーニング負荷の減少が示唆されました。
※1:論文内に “(Pk)was determined by the product of the resultant forces acting on the hand and the mean hand velocity, and not only by the magnitude of the resultant forces, PK is lower even with the same resultant force when resultant hand velocity is low.” という記載があります。
何度か読み返し、他の文献も読んでみましたが…スミマセン、非研究者の私にはさっぱり分かりませんでした〜
私の超訳としては、(Pk)は「手部のチカラを算出した数値」ではないか、と予想しました。。いつか角川さんに教えてもらいます。
角川さんの論文内で引用されている文献で(Pk)の算出方法についてはコチラの論文内で述べられているようです(2013:Vassilios Gourgoulis)
論文内容
<実験参加者>
・8名の男性水泳選手(平均年齢20歳)
・100m自由形の記録は52〜55秒(長水路)
<実験内容>
・参加者は、素手とパドル使用をそれぞれ10回ずつの計20回を実験。
・壁を蹴って16mを泳ぎました。
・手には圧力測定装置で、手掌側と手背側との圧力差を計測
・水中モーションキャプチャによる分析も実施されました。
私見まとめ
パドルを使って泳ぐと、なんとなく「パワー発揮」が大きくなりそうな気がしていました。
しかし、そうではない。パドルによって「推進効率」が高まるのだ。
それによって、素手とパドル使用時とで、同じ泳速度の場合は
パドルを使用しているほうが「トレーニング負荷」が減少しているかもしれないぞ!
ということが分かりました。
パワー向上を狙いとして、高強度トレーニングでパドルを使用する時は、
素手と同じ「ストロークレート(テンポ)」に近づける努力をすること
または、素手を上回る「泳速度」を発揮することが重要となりそうです。
また、今回の研究結果から、
パドル使用時に低強度でたくさん泳いでいてもパワーは向上していないことが考えられます。
私自身がパドルを付けて泳ぐと、素手よりもめっちゃ速く泳げます。パドルを使用すると、通常のスイム時とかなり異なるフォームになっている実感もあります。
具体的には、入水直後からフィニッシュ局面まで長く押せている感覚。それによって体の浮き具合が異なるため、体幹部の姿勢制御もスイムとは異なっているようす。
ですが、一方でパドルを付けても素手とあまり変わらない泳速度の選手もいます。
その差は何でしょうね。
現時点での私の感覚としては、
「素手でも上手に泳げている人はパドル付けても変わらない」
もしくは
「パドルを動かす筋力が圧倒的に足りていない」
このどちらかなのかな〜?と考えています。
今記事でご紹介した、角川さんの実験で使用されていたパドルは、ストロークメーカーの黄色でした↓
個人的にはアシックスのパドルも好きです。
他のパドルよりも水に浮くように設計されています。
道具に良し悪しは無い。と考えています。いつも使う側である人間の問題です。