サイキングアップ(Psyching-up)という言葉があります。
「psych」という単語は、興奮させる。名詞としては心理。というような意味があるようです。
サイキングアップを日本語訳すると、「気分を高める」というような意味になります。
このような気分を高める(サイキングアップ)技法を使って、運動パフォーマンスが向上するのか?
という効果を調査した研究論文をご紹介したいと思います。
論文紹介:「スプリント走」へのサイキングアップ効果
題名:Effects of Psyching-Up on Sprint Performance
著者:Sarra Hammoudi-Nassibら
公開日:2017年8月
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24476774/
論文結論:サイキングアップ効果あり
<実験参加者>
・12名の男性陸上選手(スプリンター)平均年齢20歳
<実験内容>
・30mの全力ランニングでパフォーマンスを調査
・4つの条件でパフォーマンスを比較。
①サイキングアップ(イメージ):「30秒間で、最高のパフォーマンスをしている自分をイメージ」という指示
②サイキングアップ(感情表現):「30秒間で、興奮したり怒ったりして自分の感情を高めるように」という指示
③コントロール群(プラセボ):「30秒間で、自分の心拍数を測定して」という指示。「良い結果になる」という偽の言葉を与えた
④コントロール群(数字に集中):「30秒間で、1000から7ずつ引いていって」という指示
■サイキングアップによって、スプリントパフォーマンスの向上が見られた。
※①サイキングアップ(イメージ)では、0m-10m区間の速度と0m-30m区間の速度の両方が向上した。
※②サイキングアップ(感情表現)では、0m-10m区間の速度のみに向上が見られた。
論文紹介:「ベンチプレス」へのサイキングアップ効果
題名:”Psyching-up” Enhances Force Production During the Bench Press Exercise
著者:David A Todら
公開日:2005年8月
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16095409/
論文結論:サイキングアップ効果あり
<実験参加者>
・12名の男性(平均年齢27歳)と8名の女性(平均年齢20歳)
・筋力トレーニングの経験あり。
<実験内容>
・Biodexという評価装置を使用してベンチプレスの力発揮を測定。
・サイキングアップと対照群2つ(attention-placebo / cognitive distraction)の3つで比較。
■サイキングアップで、力発揮の数値が有意に増加していた。
私見まとめ
いわゆるイメージ効果(サイキングアップ)についての効果が見られたという結果でした。
【瞬発的なチカラ発揮】が必要とされるパフォーマンスにおいて、有効だと考えられます。
持久的なパフォーマンスでは、どうなのでしょうか?
ペース配分などもパフォーマンスへの影響が大きいので、単純に効果を測定することが難しいのかもしれません。また時間を見つけて調べてみたいと思います。
「身体が先か?心が先か?」
簡単に2分割は出来ませんが、
身体を鍛えること、身体からアプローチすることで「メンタル・精神」が向上するという側面もあるでしょう。
今回、ご紹介したサイキングアップのような手法は
「心が身体を強くした」とも言えます。短期的な作用としては、このような効果も期待ができると考えられます。
ですが、やはり「そもそもの身体」があってこその精神。
健康という状態も含めてこそ、精神が成り立っていると理解しています。
その場面によって優先されるべきアプローチを見極める必要があるかもしれませんね。
多角的にアスリート皆さんのパフォーマンスアップをサポートしていきたいと思います。