競技力向上を目指す運動指導の指導者として、選手に対してどのような手段で「フィードバックするか?」という問題に頭を悩ますことが多いです。
・言葉だけで抽象的なイメージをフィードバックしたほうが良いのか?
・撮影した動画をただただ選手へ見せるだけでよいのか?
・トップアスリートの数値と比較してフィードバックしてあげたほうが良いのか?
今記事では、「水泳の初心者に対するフィードバック方法」についての研究論文をご紹介したいと思います。
競技力の高いレベル層にも当てはめるのは難しいかもしれませんが、思考の一助にはなるのではないかと考えています。
フィードバック(feedback:名詞)とは?
反応、意見。出力側の結果を入力側へ戻すこと。
参考:研究社 新英和中辞典
論文紹介
題名:THE EFFECTS OF VERBAL AND VISUAL FEEDBACK ON PERFORMANCE AND LEARNING FREESTYLE SWIMMING IN NOVICE SWIMMERS
著者:Maria Giannousiら
公開日:2017年
https://hrcak.srce.hr/ojs/index.php/kinesiology/article/view/5774
論文結論:視覚的および言語的なフィードバックを組み合わせた方法が、スキルとパフォーマンス向上に、より効果的であると考えられる。
✅動画を用いた視覚的なフォードバックを用いた群のほうが、言語フィードバック群よりも効果的であったことが示唆されました。
✅動画を用いて自身の動きを確認した群が最も効果的なフィードバックであることが示唆されました。
✅練習後にまとめてフィードバックを受け取る従来的な方法は、最も効果が低かったようです。
論文内容:水泳初心者を4種類のフィードバック方法に分けて、効果を比較
■競泳経験の無い、男子学生60名が実験に参加。
■4つのグループへ無作為に分けられました。
(1)セルフモデリング(自身の泳ぎを動画で確認)+言語フィードバック群
(2)エキスパートモデリング(上級者の泳ぎを動画で確認)+言語フィードバック群
(3)言語フィードバックのみ群(毎回の練習前と途中で言語フィードバック)
(4)コントロール群(特に指定なし:練習後にまとめて言語フィードバック)
■実験介入期間は7週間。週に1回(40分)の水泳練習を実施。
■クロールの正しい手の動きと呼吸方法についてのドリルに取り組まれました。
■実験前後で、スキル(ストローク技術)およびタイム(泳速)に関して評価をしました。
私見まとめ
今回ご紹介した研究の結果から「セルフモデリング」および指導者からの言語的なフィードバック方法が最も効果的であったということが分かりました。
指導対象となる方々の年齢によっては異なる結果になったかもしれません。
例えば、より若年層(未就学や学童期)では「セルフモデリング(自身の動画観察)」よりも「エキスパートモデリング(上級者の動画観察)」のほうがスキル獲得やパフォーマンス向上にとって効果的かもしれません。
指導の対象者がどのようなフィードバックを好むかという志向的な問題もあるかと思います。お互いに目標へ向かってよりよいと考える手段を実践していきたいものです。
ここで、私が大切にしている「対立物の相互浸透」という考えを書き記しておきたいと思います。
コーチが選手化し、選手がコーチ化すること。そうやって認識を深め、指導現場を発展させていきたいと考えています。