No.147の記事では、アシストチューブとレジストチューブによるトレーニング効果を調査した研究論文をご紹介しました。
結果は、
・アシストチューブトレーニング群では、「ストローク長」の低下および「ストロークレート」の増加が見られた。
・レジストチューブトレーニング群では、「ストローク長」は維持、「ストロークレート」は100m後半の50mのみ増加が見られた。
このようなことが示唆されていました。
今記事では、4種類のスプリントトレーニングにおける「手部推進力」を主に調査した研究論文をご紹介したいと思います。
筆頭著者はオンラインディスカッションにもご登壇いただいた角川隆明先生(筑波大学)です。
論文紹介
題名:競泳競技のスプリントトレーニングにおける手部推進力と機械的パワーに関する研究
著者:角川隆明氏, 古賀大樹氏, 萬久博敏氏
公開日:2021年4月
http://sports-performance.jp/paper/2105/2105.pdf
論文結論:アシストチューブが最も高い泳速度を示したが、手部推進力およびパワーは他の試技と比較して最も低い値だった
✅Resist試技は、他の試技と比較して有意に高い手部推進力が示唆された。
論文内容:4種類のスプリントトレーニングを調査
■参加者は男子競泳選手5名 (身長1.85±0.05m,体重73.2±5.1kg,年齢20±1歳)
■参加者の100m自由形ベストタイムは51.34±0.84秒
■4種類のスプリントトレーニングを各自が1回ずつ実施
①Push-off試技:水中から壁を蹴ってスタートし、25mを最大努力で泳ぐ試技
②Float試技:水面に浮いた状態からホイッスルによる合図で泳ぎ始め、最大努力で泳ぐ試技
③Assist試技:ゴム製チューブを装着した状態で水中から壁を蹴ってスタートし、前方からチューブに牽引され25mを最大努力で泳ぐ試技
④Resist試技:ゴム製チューブを装着した状態で水中から壁を蹴ってスタートし、後方からチューブに牽引され10秒間最大努力で泳ぐ試技
■試技中は、手部の圧力およびモーションキャプチャによる動作分析が計測され、パワーが推定されました。
私見まとめ
当チームでも、研究内で調査された4種類のスプリントトレーニングを実施しています。
しかし私自身、アシストチューブを実施するときに「なにを目的とするべきか?」という問いにイマイチ明確な考えを持てずにいました。
今記事から、アシストチューブでは「パワー向上を目指すのではなく、ストローク長を向上させるような技術を獲得する意識で取り組む」という考えを得ました。
アシストチューブでは、何も意識せず取り組むと余計に「テンポ(ストローク頻度)が上がる」ように感じていました。それはつまりストローク長の減少を招きます。
このような問いに対して「一つの道」を教えてくださった研究でした。著者の皆様ありがとうございます。
当ブログ読者の皆さんにも、ぜひとも論文フルテキストを読んでいただき、それぞれが感じたこと考えたことを共有してほしいと思います。