鍼治療の効果と作用機序について【水泳トレーナー】

私(山﨑)は、競技コーチとしても活動をしておりますが

それよりも前に「はり師・きゅう師」の国家資格を取得しました。

スポーツ現場で「選手の役に立つためには鍼灸師資格が必要だ」という考えに至ったためでした。

その理由は、長くなるので…また別の機会に書きたいと思います。


今記事では、「慢性的な痛み」に対して、鍼治療は効果があるのか?

また、鍼治療はどのような作用機序なのか?

という点について述べられている論文をご紹介したいと思います。

目次

論文紹介(1):慢性疼痛に対する鍼治療(メタ分析)

題名:Acupuncture for chronic pain: update of an individual patient data meta-analysis
著者:Andrew J. Vickersら
公開日:2017年12月2日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5927830/

論文結論:慢性的な痛みを抱える人にとって、鍼治療は合理的な選択肢です

■筋骨格系の慢性疼痛、頭痛、変形性関節症の痛みに対して、鍼治療は効果的だと言えます。

■プラセボ効果だけでは説明が出来ません(皮膚を貫通する鍼治療では、それ以上の効果が確認されます)

論文内容:39の研究論文で合計20,827名の患者さんを分析

・様々な国(アメリカ、オーストラリア、中国、ドイツ、イギリス)の患者データから分析されました。

・慢性頭痛、背中や首の痛み、変形性関節症、肩の痛みなどの症状を持つ患者さんが主な対象となっています。


論文紹介(2):鍼治療による「痛み改善」作用について

題名:Acupuncture for the Treatment of Pain – A Mega-Placebo?
著者:Frauke Musial
公開日:2019年10月17日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6811493/

論文結論:鍼による刺激が脳(中枢神経系)へ影響し、痛みを抑制していると考えられる

■皮膚からの触覚(C繊維)を刺激することで、痛みが抑制される傾向にあることが分かっている。fMRIで確認される。

■鍼による皮膚を貫通する刺激(得気と呼ばれる刺激)が重要だと考えられる。(DNICやHNCSやCPMと呼ばれるような内因性疼痛調節システム)

■少なからずあるプラセボ効果(鍼治療に対する期待、施術者の態度、作用機序などの説明)


私見まとめ

鍼灸師というのは通常、「経穴」と呼ばれるツボに対してアプローチをします。

数千年に渡る経験的な臨床の蓄積から、症状別にアプローチする「経穴(ツボ)」が用意されています。

今回ご紹介した学術論文は、様々な研究論文を包括的に分析した論文です。

このような論文を「自ら読む」ようになるまでは、

「ナゼかは明確に分からないが、効く」というのが東洋医学的な経験則による鍼灸治療だと思っていました。

まぁ、今でも分からないこと、説明のつかないことは多々あるとは思いますが…。


私の治療家としての師匠の言葉を思い出します。

「信じるためには、思い切り疑え」

「科学的とは、懐疑的・批判的な態度のことだ」

またこれからも鍼灸施術と、一つのツールとして付き合っていけそうです。

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