今記事では、特に科学的な知見などの用意はありません。
読み手が競技者でなくとも考える材料として、気軽に読んでほしいと思います。
説明部分
まず、競泳競技において「テンポ」というのはピッチと言い換えることもできます。
腕のかきが1周(1ストローク)するごとの時間を指します。
そして、「フォーム」というのは形や姿勢を指します。
競泳というのはタイムを競います。
「速度(タイム)」=「推進力(前に進む力)」ー「抵抗力(前に進むのを阻む力)」
以上を踏まえた上で、【速くなるには?】を強引に考えてみます。
これを考える前に前提として、選手の年齢(身体的な成熟度合い)によって考えが揺れることがありますので、あえてココでは18歳の女子高校3年生という限定をします。
やっと本題
あえて「フォームか?テンポか?」どちらか一方しか選べないとしたら
⇨「フォーム」が優先されるべき。と考えています。
速くなるためのフォームというのは、推進力を大きくし、抵抗力を小さくする。これに尽きます。
下手なフォームのまま、テンポを優先させてしまうのは、いくつかリスクが考えられます。
①関節・筋に無理な方向への負担をかけ、ケガに繋がる。
②将来的なタイム短縮に貢献しない。
①に関しては、競泳以外の競技では容易に想像がつくかと思うのですが…。競泳は力を伝えるのがほぼ「水」ですので自覚しづらいスポーツでもあります。水は地面と比較すると反力が少ない。ですが、関節を反復して使用する回数がとても多いのでいわゆるオーバーユースとなってしまいケガに繋がってしまいやすくなります。
②に関しては、いかがでしょうか?イメージが湧くでしょうか?
テンポというのは伸びしろがありません。努力している選手であればあるほどに。それに対してフォームは完成が無いと言っていいほど伸びしろだらけ。
では、短期的にタイムを短縮しなければならないケース(明後日の大会が引退レースなど)の場合はどうでしょう?手っ取り早くタイム短縮につながるのはテンポアップでしょうか?
テンポが著しく遅い選手であれば、テンポアップがタイム短縮に繋がることはあるでしょう。しかし、ほとんどの選手は可能な限りテンポを上げて泳いでいるつもりです。そこからのタイム短縮は大きくない。
レース終盤まで「テンポを維持する」ためには、長期的なトレーニングを積んでいく必要が出てきます。
まとめると
高い技術のフォームを可能な限り維持した状態で、テンポを高める。
これが効率性が高く、効果的かつ効率的であると考えます。
速く動かす!ということばかりを選手に要求する指導者は無知と言わざるをえないでしょう。
競泳だけの話にとどまらず、フィジカルトレーニングや他の競技にも共通する考えでもあるかと思います。
実際に泳ぐ選手の皆さんにはもちろんですが、小学生などの育成時期の指導にあたっている先生方にも再検討してほしい考えです。
工夫による成果が見えやすい、競泳というスポーツならではの楽しさを感じていきたいですね〜。
追記
「もうちょっとバイメカとかにも踏み込んで書いてよ~。」というメッセージが年上の読者さんから届きましたので…もう少し書いてみます。熱中すると話があちこちに行ってしまうので少しだけ。
競泳の科学的側面から見ると、
上記の話でいうところの「フォーム」というのは「ストローク長」と言い換えて考えてみます。
1かきで進んだ距離をストローク長といい、データとして分析します。つまり、フォームが良ければ、1かきで進む距離が増す。
上記の話を陸上競技で置き換えると、ピッチとストライドですね。
当然、「テンポ」も「フォーム(ストローク長)」もどちらも大事であり、タイム短縮に必要な要素であることは間違いありません。
しかし、フォーム(ストローク長)を意識すればするほどにテンポは落ちやすいものです。ましてやレース本番中なんてテンポを上げることに必死で、フォームの意識なんてしてられない人も多いでしょう。
テンポとフォーム(ストローク長)との関係は「トレードオフ」であるとも言えます。
なので、現実的な実践としては、フォームにおいて改善ポイントを1つか2つに絞り、そのポイントを通過した上でテンポを上げる。
誤解を恐れずに言い方を変えると、「テンポを上げるために改善ポイント以外は捨てる。」となります。
このポイントを今よりもたくさん通過するためには、さらなる筋力が必要になります。技術を獲得するための筋力(フィジカル)です。※ココ重要。
技術を高める目的で行う競技練習ばかりでは、辿り着けない領域があります。この話はまたの機会にでも。
もう一度まとめになりますが、取り組む優先順位を敢えて一つに絞るとしたら、選手的にも指導者的にも、フォームが先だと思っています。