No.90の記事では、量質転化について取り上げました。
「量」vs「質」という構図は議論が尽きませんし、
このトピックについてディスカッションするのは個人的にも好きです。
水泳選手の水中トレーニングでは、
Rushallという人が2011年に提唱したとされる【USRPT】というトレーニング方法があります。
このRushallさんは、このように言います。
「トレーニングを積み上げた選手の場合、
レースの速度よりも遅いトレーニング強度で練習するのは
a waste of time(時間の無駄)」
日本だけでなく、世界的に見ても
水泳選手の水中トレーニングというのは
High Volume Training(量の多いトレーニング)が多くの現場で実施されているようです。
つまり、Rushallさんは
「量よりも質が重要だ」ということを言っています。
※2011年に発表されてから2019年の今もずっと同じ考えなのかどうかは分かりませんけどね。
学びを進めているうちに考えが変わることなんて当たり前のようにあります。
今回の記事では、
【USRPT】について書かれている論文をご紹介します。
USRPTとは
USRPT(Ultra-Short Race-Pace Training)
ウルトラ ショート レースペース トレーニング
日本語訳としては、
「超短距離レース速度トレーニング」となりますでしょうか。
論文紹介
Ultra-Short Race-Pace Training (USRPT) In Swimming: Current Perspectives
著者:Frank Nugentら
公開日:2019年10月7日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6789176/
まず、こちらの論文の内容としましては
【USRPT】の効果についてをレビューする目的で調査した論文となります。
1347件の研究を調査し、
USRPTでの効果について研究された論文が一つも無かったため
水泳競技の説明やUSRPTについての内容を解説したものとなっています。
その中で記述されているUSRPTの方法論的な部分を引用して紹介したいと思います。
USRPTのコンセプト
各選手にとっての最高のパフォーマンス速度で「繰り返し泳ぐ」という練習です。
USRPTの典型例
50m×20本(1本終えるごとに20秒程の休憩)
速度は200mレースペースを目標とします。
USRPTのトレーニング量
多くの水泳選手が実施している水中トレーニング量は、
「1週間に約40km」
であるのに対して
USRPTでは
「1週間に約9〜11km」であるといいます。
USRPTの特異性
Rushallさんは、
「水泳競技」と「トレーニング内容」の両者が異なるほどに、価値は低くなる。
というような考えのようです。
ですので、水泳レースという運動とは程遠いであろう
・レジスタンス(ウエイト)トレーニング
・クロストレーニング
・低強度のトレーニング
このような運動は、USRPTと一緒に実施するべきでは無いとのことです。
USRPTその他
USRPTによる生理学的な説明やエネルギー回路の説明などは論文中に述べられています。
具体的な距離設定・本数設定・レスト設定などは
紹介した論文中には述べられていません。
興味がある人は以下のリンクを貼り付けておきますので探してみて下さい。
The ULTRA-SHORT RACE-PACE TRAINING INTERNATIONAL ASSOCIATION
私見まとめ
私の意見としては、
競技力の高いアスリートでも、競技練習以外のトレーニングは必要である。
という考えです。
具体的には、
競技運動において、「より高い技術」を得るための体力強化としてです。
競技運動よりも時間的な効率よく、狙った身体部分を改善できる手段であると思っています。
ですが、ここで私が大切にしている考え方を述べておきます。
USRPTというトレーニング理論について、
全体的な理解が「間違っている」からと言って
部分的なところも全てが「間違っている」ものではありません。
レジスタンストレーニングや低強度でのトレーニングや切り取ったドリル練習などについての考えが、仮に間違っているとしても
USRPTという水泳トレーニング方法も間違っているのだ。と結論付けるのは浅はかすぎるでしょう。
完璧な正解というのが無い世界ですから
スポーツ指導者としては
論理的に考え、多くのことから学んで実践していきたいものです。