とりあえずストレッチ。という習慣を見直してみよう

stretch-habits

競技の「動き」をどのように評価するか?というテーマで資料スライドを作っています。

可動域・柔軟性が不足しているために「やりたい動きが出来ない」というケースもあると思います。

そんな時は、いわゆるストレッチが最善なのか?

関節可動域を改善するために効果的な手段は何か?

柔軟性を手に入れたら、失うものもあるのか?

このようなことについての考えを巡らせていきたいと思います。

今記事ではまず、5つの研究論文を引用してから、最後に私見まとめを書き出しております。

いつも通り、面倒な方は「私見まとめ」へ

目次

なぜ、ストレッチで可動域は向上するのか?

3週間、毎日2回の静的ストレッチ(30秒×4セット)を実施して観察した研究があります。

静的ストレッチを実施したグループは、3週間後の測定で、約20%の可動域が向上。

論文結論

3週間のストレッチ期間後、

筋腱の硬度や神経興奮性の変化やストレッチ中の筋活動など、いくつかの変化が見られたが、

関節可動域が向上した大きな要因は「stretch tolerance(ストレッチ耐性)」である。

A J Blazevichら:2014

ストレッチの強さはどのくらいが良い?

4週間(週に3日)の静的ストレッチ(60秒×3セット)を実施して比較した研究があります。

ストレッチの強さを「0(not pain at all)~10(very,very painful)」の11段階で表現した場合、

■HI-SS(High Intensity Static Stretching)グループ

「6~7」の範囲でストレッチするように求められた。

■LI-SS(Low Intensty Static Stretching)グループ

「0~1」の範囲でストレッチするように求められた。

論文結論

4週間のストレッチ期間後、

関節可動域の向上は、どちらのグループでも見られたが、

✅LI-SS(少し弱めの静的ストレッチ)よりもHI-SS(少し強めの静的ストレッチ)のほうが大きく向上していた。

Masatoshi Nakamuraら:2021

関節可動域アップには、ストレッチ?それとも筋トレ?

ROM(関節可動域)の改善に対して効果的であるとされている、ストレッチと筋トレ。

その効果はどちらが上なのか?または同等なのか?

という点についてを調査したメタアナリシス論文を紹介します。

論文結論

筋トレ(strength training)とストレッチは、どちらもROM(関節可動域)改善に効果が認められた。

ROM改善において、統計的な差は見られなかった。

しかし、研究の質や不足により、現時点で明確な結論を出すことは困難。

José Afonsoら:2021

ストレッチのデメリット(運動パフォーマンスの低下)

週3回のペースで計10回の静的ストレッチ(30秒×3セット)を実施し、モモ裏(ハムスト筋)に対する静的ストレッチによる運動パフォーマンスへの影響を調査した研究があります。

論文結論

静的ストレッチを実施したグループは、

✅運動パフォーマンス(トリプルホップテスト)の低下および、エキセントリックピークトルク減少したことが認められた。

Germanna M Barbosaら:2020

一方では、このような研究結果も

ジュニア(8-10歳)体操選手における研究。

週3回の静的ストレッチ(片脚は30秒×3セット、反対側脚は90秒×1セット)を9週間に渡り実施。

✅ジャンプ力(CMJ)テストは、変化なしであった。

Olyvia Dontiら:2020

成人の場合、静的ストレッチによって運動パフォーマンスの低下が一時的にみられることが示唆されているが、年齢や運動習慣によっては静的ストレッチのマイナス影響を受けないケースもあるようす。

私見まとめ

いわゆるストレッチを継続的に実施することで、可動域が向上します。

なぜ、可動域が広がるのか?というのを、意訳して答えると

「筋肉が伸ばされることに慣れたから」

紹介した研究論文を読むと、筋の活動や神経(脊髄レベル)の興奮抑制などは関与が否定されているようです。

「stretch tolerance」が最重要な要因であるとのことです。

スポーツ選手は、何でもかんでもストレッチしてて良いのか?

競技者やコーチの方々から「ストレッチってしたほうが良いの??」と聞かれたら、何と答えるか。

回答①:目的による

例えば、「疲労回復のために静的ストレッチをしたほうが良いか?」と聞かれたら、『する必要はない。飯食ってコロコロして寝よう』と答えるかと思います。

しかし、競技動作における”やりたい動き”を獲得するために関節可動域が足りなくて出来ていないという現状がある場合などは、『やったほうが良いけど、レジスタンストレーニングでも可動域は向上するから、とりあえずどんな動きが獲得したいのか教えて』って答えます。

回答②:環境による

例えば、「今から12時間ぶっ通しで座りっぱなしなんだけど、ストレッチしたほうが良い?」って聞かれたら、『座りっぱなしよりは立ち上がったりしてストレッチしたほうが良いと思う』って答えるよ。。

今記事で言いたいこと

スポーツ指導者としては、「とりあえずストレッチやれ」って感じの慣習を一度見直してみる。というのが良いかと。

すでに述べましたが、ストレッチは関節可動域を向上させる効果は明らかにあります。それに費やす時間もそこまで多大ではないかと。

ですが、ストレッチによるデメリットのようなものも示唆されてきています。

スポーツ競技動作において、【獲得したい動き】に対して、可動域が足りず出来ない。という現状があるならば『ストレッチを実施する』という選択もアリでしょう。

その場合は、動作の評価を適切にね!

筋力トレーニングも関節可動域の改善に効果的であることが分かってきています。が、バーベルを用いたトレーニングなどは筋力向上のためにフォームを習得すべきです。ストレッチを最優先の目的として筋トレを実施するのはなんだかなぁ~と思うよ。あくまで副産物として「筋力向上のための筋トレってスゲー」的な捉え方のほうが良いかと。

個々人における優先度を見極められるようになりたいの。

  • URLをコピーしました!
目次