【競技の時間帯】夕方だから速いのか?朝だから遅いのか?

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東京オリンピック2020大会が開催されています。

感染症の蔓延という厳しい社会情勢の中でも、対策をしながら前を向き、自分自身ができることを精一杯に取り組んでいるアスリートの方々の姿を見ることが出来て、とても勇気を貰っています。

今大会の競泳競技では、「予選」が夕方から夜に実施され、「準決勝および決勝」は朝から昼に実施されています。

一般的には、夕方に運動パフォーマンスが高まり、朝は運動パフォーマンスが低い。

というように考えられていることが多いようです。

今記事では、水泳のタイムが時間帯によって変動するのか?について研究された論文をご紹介したいと思います。

目次

論文紹介①

題名:Circadian Effects on Performance and Effort in Collegiate Swimmers
著者:Austin Andersonら
公開日:2018年8月3日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/labs/pmc/articles/PMC6083775/

論文結論

✅自己申告制の質問票(MEQスコア)による、「夜型」の人は、朝(7:00)の200mトライアルで約6%ほど遅い傾向が見られた。

✅ 自己申告制の質問票(MEQスコア)による、「朝型」の人は、夕方(19:00)の200mトライアルで約3%ほど遅い傾向が見られた。

✅特定の遺伝子型を持つ被験者は、朝(7:00)のトライアルでは3~6%遅い傾向が見られた。

(Participants homozygous for the PER34,4 length variant (rs57875989) or who possess a single G-allele at PER3 SNP rs228697 swam 3–6% slower in the morning.)

論文内容

<参加者>

・水泳選手27名(男性8名/女性19名)

・年齢は18~22歳

・アメリカのコルゲート大学の水泳部に所属している集団

<水泳テスト>

・7:00と19:00の2つの時間帯で、200mクロールを実施。

・テスト前のウォームアップは、10分間を設けられた。

<クロノタイプ(朝型か夜型か)調査>

・質問票(MEQスコア)による調査が実施されました。

・毛髪から遺伝子型(PER3)の検査が実施されました。

論文紹介②

題名:The influence of time of day on the performance of adolescent swimmers
著者:Rodolfo Soares Mendes Nunesら
公開日:2021年4月11日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33843407/

論文結論

✅50mクロールでは、男女ともに時間帯による影響は見られなかった。

✅400mクロールでは、男性で、朝よりも「夕方」のほうが速かった。女性では、時間帯による影響は見られなかった。

論文内容

<参加者>

・競泳選手33名(男性20名/女性13名)

・年齢は13歳~16歳

・6年間以上、競泳に取り組んでいる集団。普段の練習は、朝と夕の両方で行われている。

<水泳テスト>

・8:00と18:00の2つの時間帯で、50mと400mクロールをそれぞれ実施。

・テスト前のウォームアップは、心拍数を最大の50%以下で800m泳いだ。

<クロノタイプ(朝型か夜型か)調査>

・遺伝子調査なし

・質問票による調査が実施されました。

私見まとめ

上記でご紹介させていただいた論文も含めて他の研究結果も読む限り、

水泳パフォーマンスは時間帯によって変わるのか?

という問いに対する答えは「個々人の遺伝」による影響が大きいようです。

遺伝による影響の次に大きい要因は、「習慣」であるように個人的には考えました。

つまり、普段の練習時間を実施している時間帯であれば高いパフォーマンスを発揮しやすい。と考えられます。

この習慣による影響がどの程度あるのかは不明ですが、少なからず「言い訳」は減らすことが出来るでしょう。

「なぜ、朝の競技(準決勝)でタイムが遅いのか?」を考えてみる

遺伝的な要因の他には何かあるのか?

東京五輪2020大会では、予選が夕方~夜の時間帯にかけて実施され、翌日の朝に準決勝があるという日程によって「睡眠時間の減少」が考えられます。

睡眠時間を確保すれば、起床してから競技までの活動時間が短くなります。

起床後は心拍数が低く、体がリラックスした状態(副交感神経の活動が優位)ですので、運動パフォーマンスが低い状態である可能性が示唆されています。

No.117 起床後の運動パフォーマンスについて

余談

日本代表の選手の皆さん、およびスタッフの皆様!引き続き応援しております。

新型コロナ感染症が心配な中で、チームが集まる期間も少なかったかと思います。

競泳は個人競技だからこそ、誰かの顔を思い浮かべて頑張る瞬間に大きな力が発揮されることもあるでしょう。

私は選手の皆さんにとっての「誰か」になれるように精一杯の応援をしたいと思います。

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