小学生ジュニア世代の水泳選手を指導しているコーチから質問をいただきました。
「クイックターンで大切なことって何?」
大切なことを挙げだすとキリがないかもしれません…。ですので、
今記事では、クイックターン(フリップターン)で優先度の高いコト・学術的に言われていること
これらをまとめていきたいと思います。
クイックターンとは
水泳のレースというのは大別すると、3つの要素から成り立っています。
スタート・ストローク・ターン
この中の「ターン」について少し掘り下げて考えていきます。
クイックターン・フリップターン・タンブルターン
この3つは名称が異なるだけで、同じ「ターン」を指しています。
日本では「クイックターン」という名前で呼ばれることが多いようです。
英語圏では「フリップターン」で記述されているのを多く目にします。
クイックターン(フリップターン)を構成する要素
6つの要素で構成されていると言われます。
①アプローチ:近づく(approach)
②ローテーション:回転(rotation)
③壁との接触(wall contact)
④グライド(glide)
⑤水中推進(under water propulsion)
⑥ストローク再開(stroke resumption)
どのくらいの距離で壁を蹴れば良いのか?
Tuck Index 0.7 程度にすることがターン前後のタイム短縮に役立つ可能性が示唆されています。
※タックインデックスとは、脚を真っ直ぐ伸ばした時の「大転子から壁までの距離」とターン時の「大転子から壁までの距離」との比率。ターン時÷真っ直ぐ。
重要度が高いのは「壁との接触時間」
ターン動作では、180°向きを変え、泳ぐ速度よりも大きな速度を発揮することが出来るボーナス区間です。
「壁を蹴る」ことを、ジャンプとして考えてみます。
高くジャンプするためには、反動を利用することが良いと考えられます。
ジャンプにおける反動とは、カウンタームーブメントとも呼ばれます。
反動ジャンプ(カウンタームーブメント・ジャンプ)
以下の2つ、どちらが高くジャンプできるでしょうか?
A.しゃがんだ状態からジャンプ
(カウンタームーブメント無し)
B.立った状態からしゃがむ反動を利用してジャンプ
(カウンタームーブメント有り)
おそらく、多くの人がB.パターンの反動ありジャンプのほうが高く飛べるのではないでしょうか。
反動(カウンタームーブメント)とは、筋肉のSSC
SSC(Stretch Shortening Cycle)とは、筋肉の「伸長-短縮」によって発揮される瞬発的な動作を指します。
水泳の「ターン動作」も同様だと考えています。
回転(ターン動作)中に、ジャンプできる姿勢を作ろう
まずは、しっかりと「しゃがむ」姿勢が作れる体を手に入れることが必要となってきます。
No.165 泳ぎの練習も大切だけど、壁を蹴る練習も大切だよ【競泳レース分析】
ターン前で泳速度を落とし過ぎないようにしよう
なぜでしょうか?
ターン前で減速が大きくなってしまうと、反動を利用できなくなってしまうことが考えられます。
反動ありのジャンプで、より遠くへ・より強い力を壁に与えるためには
『しゃがむ速さ』も大切です。
じゃあどうする?(まとめ)
ターンをより良い区間にするために試していきたいポイント
①ターン前の”ひとかき”は呼吸しない
②Tuck Indexは約0.7程度にすることがターン前後のタイム短縮に役立つ可能性があることが明らかになった。
③WCT(壁との接触時間)を長くする意識でチカラを壁へ最大限に伝える
④反動(カウンタームーブメント・SSC)を利用して壁を蹴る
参考論文①
題名:Not Breathing During the Approach Phase Ameliorates Freestyle Turn Performance in Prepubertal Swimmers
著者:Emanuela Faelliら
公開日:2021年10月5日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/labs/pmc/articles/PMC8525611/
論文結論
(クロール泳)ターン前の最後の”ひとかき”で呼吸をしないほうが良い。
✔ターン回転時間の短縮・壁に足が接地するまでの時間短縮・壁を蹴るまでの速度の増加などが見られました。
参考論文②
題名:The biomechanics of freestyle and butterfly turn technique in elite swimmers
著者:Emily Nicolら
公開日:2019年1月29日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30694108/
論文結論
✔クロール泳のターンでは、壁に与えるチカラを大きくすることに重点を置くべきであると言えます。(男性でも女性でも)
参考論文③
題名:Kinetic Analysis of Swimming Flip-Turn Push-Off Techniques
著者:Wendi Weimarら
公開日:2019年1月28日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/labs/pmc/articles/PMC6409673/
論文結論
クロール泳のターン動作では、カウンタームーブメント・テクニックを使用したほうが有益である可能性が示唆されました。
✔カウンタームーブメント・テクニックは、壁に足が接地し、膝や股関節を曲げてから力強く壁を蹴るような形。
✔No-カウンタームーブメント・テクニックは、壁に足が接地する前に、壁に向けて足を力強く蹴るような形。
参考論文④
題名:Improving tumble turn performance in swimming—the impact of wall contact time and tuck index
著者:Sina Davidら
公開日:2022年7月22日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9354539/
論文結論
✔WCT(壁との接触時間)の最終局面時に高いチカラを生成するように意識することが推奨される。そのためには、十分な長さのWCTが必要である。
✔タックインデックスを0.7程度にすることがターン前後のタイム短縮に役立つ可能性があることが明らかになった。
※タックインデックスとは、脚を真っ直ぐ伸ばした時の「大転子から壁までの距離」とターン時の「大転子から壁までの距離」との比率。ターン時÷真っ直ぐ。
ターン後の「水深」によって抵抗を減らせるかもよ
No.168 【水泳】スタート・ターン後はどのくらいの水深にいたら良いのか?
— YY (@hari_sports_YY) October 19, 2021
余談
私の記事について以下のようなフィードバックをいただくことがあります、
「論理を順序だててから最後に結論を持ってくるから読むのに時間かかるんだわ。しっかり読めばわかるんだけども。」
ごめんなさい。結論を最初に持ってくるのも試してみてはいるのですが、どうもダメでw