コーチや指導者の「声かけ」を再考してみる。ネガティブとポジティブ

スポーツ選手の練習中、コーチや指導者の方々はどのような「声かけ」を意識していますか?

「褒める・叱る」という話題性のあるテーマにも繋がってくるかもしれません。

今回の記事では、ネガティブ言語フィードバックとポジティブ言語フィードバックによる効果について研究された論文を引用させていただきながら考えを巡らせてみたいと思います。


前回は、言語フィードバックと動画による視覚的フィードバックについて記事を更新しました。宜しければ、そちらもご覧ください。

目次

論文紹介

題名:The effects of positive and negative verbal feedback on repeated force production
著者:Israel Halperinら
公開日:2020年7月18日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32692988/

論文結論:ネガティブ言葉を受けたあとのパフォーマンスが最も高かった

✅ネガティブ言葉を受けた場合が、ポジティブ言葉および言葉なしの場合よりも、力の大きさとEMG活動が大きいことが示唆された。

✅「ポジティブ言葉」と「言葉なし」を比較したところ、言語フィードバックがあった場合のほうがパフォーマンス向上が見られた。

論文内容:(ネガティブ言葉/ポジティブ言葉/言葉なし)の3種類で比較

■22名(男性11名/女性11名)が実験に参加。

■参加者は定期的なレジスタンストレーニング経験者であった。

■実験は「肘の屈曲」最大収縮(MVC)で測定された。

■12回の最大収縮中に3種類の「言葉によるフィードバック」を与えた。
(1)ポジティブ言葉「Great effort」「Excellent values」「Looking strong」
(2)ネガティブ言葉「You’re not trying」「Low values」「You can do better」
(3)言葉フィードバック無し

■最大収縮中の「力の測定」および「筋電図(EMG)」が分析されました。

私見まとめ

「肘の屈曲運動」最大収縮中にネガティブ言葉を与えることで、ポジティブ言葉を与えるよりも、より大きな力発揮が得られる可能性があることが分かりました。

論文という性質上、「どのようなニュアンスで言葉を与えたか?」という感覚的な部分は分かりませんでした。

怒号のようにネガティブ言葉を与えたのか?励ますようにネガティブ言語を与えたのか?

それらによっても結果は異なってくるのかもしれません。


個人的には「短期的な視点」と「中長期的な視点」で今回の結果を解釈したほうが良いのではないかと思いました。

短期的な即時効果として、ネガティブな言葉を与えることで力発揮を促進するケースが多いことは現場の感覚としても多少あります。

ですが長い目で見ると、いつもネガティブな言葉を与え続けていることの問題点も大きいと考えられます。

心理学では、学習性無力感という言葉があります。逃げられない状態で嫌悪な刺激を受け続けることで、やがてその刺激にただただ耐えるだけで無反応となってしまう。
ここまでの状態とは行かないまでも、長期的にネガティブな言葉を受け続けることによる影響も頭に入れて言葉を選んでいきたいものです。


■最近見た映画

「セッション」

音楽教師が生徒に、とんでもなく強烈なネガティブ言葉を浴びせ続けて才能を伸ばしていくというストーリー…。決してマネしようとは思えなかったが、映画としては面白かったです。。

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