「筋トレ」と「スイム練習」を同時に鍛え上げていくことについて

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水泳競技は、50mでは約20秒・1500mでは約15分といった運動時間で競技が完結します。

ウエイトリフティング競技や跳躍競技などの「瞬間的」なスポーツとは異なり、水泳競技は、ある程度の運動時間を要します。

そのため、高い「持久力」が求められる競技です。

しかし、スタートやターンなどの動作では「筋力」が必要な場面も多くあります。

持久力と筋力、どちらも同時進行で効率よく高めていきたい。

そのために効率的な取り組み方はあるのか?

持久力トレーニングと筋力トレーニングが、それぞれのトレーニング効果を「干渉」するようなマイナス面があるのか?

そのようなことについて、考えを巡らせてみたいと思います。

目次

コンカレント・トレーニングの研究論文紹介

「筋力トレ」と「持久力トレ」を同時に取り組んだら、筋力向上効果が低下した。

コンカレント・トレーニングについての問題提起は、1980年に発表された研究論文が始まりではないかと考えられます。

(R C Hickson:1980)

こちらの研究では、実験グループを3つに分けてトレーニング効果を比較しました。

①筋力トレーニンググループ
②持久力トレーニンググループ
③筋トレ・持久トレどちらもグループ

10週間のトレーニング結果は

■持久力(Vo2max)の向上は、「②持久トレグループ」と「③どちらもグループ」で見られた。「①筋トレグループ」では見られなかった。

■筋力の向上は、「①筋トレグループ」で顕著だった。「③どちらもグループ」では、ある程度の向上は見られたが、「①筋トレグループ」と比べて明らかに向上効果は低いことが分かった。

「筋力トレーニング」の前に「持久力トレーニング」を実施すると…

30分以上の持久力トレーニングを実施した直後は、筋力パフォーマンスが低下してしまう可能性が示唆されています。

さらに、30分未満でも中強度〜高強度の持久力トレーニングを実施した直後は、筋力に対してマイナスの影響がある可能性が高いです。

(Adrian Markov:2021)

持久力トレーニングへ取り組んだ直後に、

筋力向上を狙いとしたトレーニングを実施する場合は、

『低強度かつ30分未満』での内容としておくことが良いかもしれませんね。

「筋力トレーニング」と「持久力トレーニング」を同時進行で取り組んでいっても、筋力向上および筋肥大のトレーニング効果に対する負の影響は無い

「持久力(有酸素)トレーニング」と「筋力トレーニング」の同時進行は、「筋力トレーニングのみ」と比較しても、

最大筋力と筋肥大の発達(トレーニング効果)を妨げない可能性が示唆された。

(Moritz Schumann:2021)

私見まとめ

今記事では、水泳選手がパフォーマンスを向上させるための

「筋力向上トレーニング」と「持久力向上トレーニング」を同時に取り組んでいく

【コンカレントトレーニング】について考える材料を提示してきました。

上記で紹介した研究論文から考えると、トレーニングの順序についてはそこまで拘る必要は無いかもしれません。

やはり重要なことは『継続的』に取り組めるようなスケジュールを組むこと

1回きりのトレーニングという短期的な切り取りで見たら、

トレーニングの順序や時間や強度などといったビミョーな部分が気になっちゃいます。

ですが、時間にも環境にも、限りはあります。

なので中長期的に継続して取り組んでいけるような現実的なスケジュールが望ましいでしょう。

そういった中で、可能な限り、より良いと思えるものに取り組んでいきたいものです。

トレーニングは、取り組んだ【刺激】に適応する

ココが今記事の本題かもしれません。

ウエイト(レジスタンス)トレーニングを実施した場合は、筋力向上や筋肥大が望めるでしょう。有酸素的な持久力の向上は非効率です。

逆に、有酸素持久的なトレーニングを実施した場合は、筋力向上を望むのはナンセンスでしょう。

つまり、取り組むトレーニングによって特異的な適応が発生すると言えます。

このような視点から、

ウエイトを用いたレジスタンス運動で、サーキットトレーニングを実施して筋力の向上を望むのは”効率が良いことなのか?”考えさせられます。

トレーニングで向上させたい能力値を設定したら、そのやり方(手段)を吟味していくクセを身につけたいわね。

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