前回の記事(No.107)では、
足関節の筋力低下が、転倒のリスクを高める。
という内容のブログ記事でした。
今回の記事では、
水泳の「ドルフィンキック」と「足関節」についての論文を取り上げてみます。
水泳指導の現場では、
「ドルフィン速い人は足首が柔らかいから、ストレッチをして柔軟性を高めろ!」
「ドルフィンキックは膝を曲げないで打てー!」
といった指導が多くあります。
間違ってはいないと思います。ですが、どういった論理から出てくる指導なのか。そういった視点も持ち合わせていきたいと考えています。
最後に述べる「私見まとめ」では、上記の指導例2つについて考察してみます。
論文紹介
ドルフィンキックに対する「足関節」の筋力と柔軟性の影響
題名:The effect of ankle muscle strength and flexibility on dolphin kick performance in competitive swimmers.
著者:Willems TMら
公開日:2014年6月28日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24984154
論文結果
①:足関節の「背屈・内旋」筋力が強い人ほど、ドルフィンのタイムが速かった(相関関係)
②:足関節の「底屈・外旋」筋力は、ドルフィンのタイムに影響が見られなかった(相関関係)
③:足関節の「底屈・内旋」柔軟性は、ドルフィンのタイムに影響が見られなかった(相関関係)
④:足関節をテープ貼付で可動域(回外)制限したところ、ドルフィンのタイムに悪影響が見られた
⑤:足関節をテープ貼付で可動域(回外)制限したところ、ダウンキック中に膝屈曲が見られるようになった
※背屈とか回外などの関節運動用語がパッと出てこない方は前回の記事(No.107)をご覧ください。
研究概要
・26名(平均年齢16歳)の競泳選手が被験者として参加。
・陸上で、足関節の可動域(ROM)や筋力を測定。
・プールで、ドルフィンキックを全力で10m以上泳いで計測。
私見まとめ
今記事でご紹介した論文では、
実験参加者が、若い&競泳競技者でした。
実験参加者の方々は、日頃の練習によって、ある程度の「足首の柔軟性」を獲得していることが予想されます。
今後の実験では、
・足関節の筋力向上がドルフィン速度に影響するのか?
・足関節の柔軟性向上がドルフィン速度に影響するのか?
このような実験が行われることが期待されます。
さて、ここからは冒頭で述べました
「指導例2つ」について考えてみます。
指導例①「ドルフィン速い人は足首が柔らかいから、ストレッチをして柔軟性を高めろ」
足首の柔軟性とドルフィン速度には相関関係が見られませんでしたので、
「柔らかい」イコール「ドルフィン速い」
ということは言えないでしょう。
足首の柔軟性と【可動域内での筋力】が重要である。ということは言えそうです。
つまり、ストレッチだけでなく
足首の筋力向上を目的としたエクササイズも実施したほうが良いでしょう。
指導例②「ドルフィンキックは膝を曲げないで打てー!」
たしかに、
足首の柔軟性が高くて、なおかつ足首の筋力が高い人は
膝関節の屈曲が小さいのかもしれません。
この実験から分かることは、
「足首の回外運動を制限したときに、ドルフィンダウンキック中に膝屈曲の増加が見られるようになった」
ということです。
つまり、
足首が硬い人は硬いなりに、柔らかい人は柔らかいなりに
個々人の柔軟性や筋力に応じた「ドルフィン動作」を獲得している。
と言えます。
日頃から水泳運動の習慣がある人が
ドルフィン動作を「意識」だけで、パフォーマンス向上させられるというのは
とても少ない範囲だと思います。
もし意識で即時にパフォーマンス向上させられるとしたら
「ただの練習不足」か「間違った意識で運動していた」というケースでしょう。
ですので、
競技歴もある程度あり、様々な意識で運動を実施してきた方々は
「筋力向上」をターゲットにしていくと良いでしょう。
そうすることで、
今までは出来なかった「技術の獲得」も期待できることと思います。
競技動作の反復だけでは頭打ちです。
しばらくの期間は、競技会も無いでしょう。
せっかくの機会だと捉えて
ご自身のフィジカルを高めて
まだ見ぬ技術を獲得しにいきましょう。
なんだか変なまとめ方になってしまいました…。
足関節の筋力強化に利用しやすいセラバンドのループタイプ。