クロールをスプリント(短い距離を全力)で泳ぐとき、なんとなく気付いていることがあります。
「呼吸をしないほうが速いんじゃないか」問題。
呼吸動作の「あり・なし」で何が異なるのか?
呼吸動作をしないことでタイムが短縮するのならば、そのためのトレーニングをして取り入れるべきです。
今回の記事では、「クロールスプリント泳での呼吸動作あり・なし」についてを調査した論文を引用してご紹介していきます。
論文紹介
題名:Upper limb kinematic differences between breathing and non-breathing conditions in front crawl sprint swimming
著者:Carla B McCabeら
公開日:2015年10月3日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26456423/
論文結論:「呼吸なし」のほうが、タイムが速かった。
以下、主な結果
■(エントリー動作)呼吸ありの場合、重心の推進速度が低下。肩の屈曲/外転/回旋が減少。
■(プル動作)呼吸ありの場合、重心の推進速度が低下。動作時間が長い。肩の外転が減少。
■(プッシュ動作)呼吸ありの場合、動作時間が短い。肘の伸展が減少。手部の速度が速い。
■(リカバリー動作)呼吸ありの場合、肩のローリングが大きい。
論文内容:
<参加者>
・10名(男性)のクロール水泳選手
・平均年齢18歳、体重72kg、身長182cm
・50mクロールベストタイムは平均すると25秒(長水路)
<実験内容>
・各選手がウォーミングアップ後、25mクロールスプリントを2回実施
・1回は呼吸動作あり、もう1回は呼吸動作なし
・被験者は、全身に19個のマーカーを装着して動作も分析されました。
私見まとめ
「クロールのスプリント時に呼吸動作をすると、速度が落ちてタイムが遅くなる。」
という結果に納得でした。
今回ご紹介した論文では、「呼吸動作の中でも、どの動作段階で泳速度が落ちているのか?」についてを具体的に調査して示してくれています。
「呼吸動作時には、顔を上げるため、肩のローリングが大きくなる」という点くらいしか、ぼんやりと認識していませんでした。。
■呼吸ありのエントリー動作では、肩の外転が減少。肩ローリングの角度が低下。
こういった結果に対して、「じゃあエントリー動作では、もっと突き刺すように入水してみよう」とか「ローリングのタイミングを早めてみよう」など
バイオメカニクスで示された結果を現場で活かすためには、仮説を立てて、どんどん試していく。という作業を繰り返して螺旋階段的にパフォーマンス向上させていきたいと思います。