「パドルを使った練習について」たま〜に話に出てくるテーマです。
レースでは素手で泳ぐのだから、必要ない!水泳技術に悪影響を与えるのではないか?という視点からの疑問を持つ人もいらっしゃるようです。
道具やツール自体に良し悪しは無く、使う側の問題があるだけだと思いますので使い手次第でしょう。
パドルを着用すると、運動学的には「何が」変化する傾向にあるのか?
今記事では、「クロールスイム100mオールアウトでのパドルの有無の影響」を比較した論文をご紹介していきます。
どのような【運動学的な特性】があるのかを知ることで、ご自身のトレーニングや指導現場に生かしていただけたら幸いです。
過去記事では、パドル着用で「手部の掌側と背側との圧力差」について研究された論文も紹介しました。合わせてご覧いただければと思います。
No.121 水泳トレーニング【パドルの役割】論文紹介
論文紹介
題名:The Influence of Different Hand Paddle Size on 100-m Front Crawl Kinematics
著者:Daniel López-Plazaら
公開日:2012年10月23日
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3590827/
論文結論:パドルを着用するとストローク長が高くなり、ストロークレートが低下する傾向にある
🔽100mオールアウト中の前半50mでは、速度の有意な違いは認められなかったが、後半の50mではパドル有りのほうが有意に速度が高かった。
🔽ストローク長は、パドル無しと比べるとパドル有りのほうが有意に高かった。
🔽ストロークレート(テンポ)では、有意差は認められなかったが、パドル無しよりも着用していたほうが低下傾向にあった。
論文内容:クロール100mオールアウトを3本で比較!
■9名のスペイン国内(エリートレベル)水泳選手(女性4名/男性5名)が実験に参加
■長水路プールでクロール100mオールアウトを3本(パドル無し/小さめパドル着用/大きめパドル着用)実施
■ウォームアップ後、テストを実施しました。各テスト間の休憩時間は30分。
私見まとめ
クロールでパドルを用いた運動学を調査した研究論文はいくつかありますが、
プルブイを着用したいわゆる「プル」練習だったり、短い距離(25m程度)での実験が多いようです。
今回ご紹介している論文では、「スイム」にパドルを用いて実験しています。
選手の方や指導者の方々によって「パドルを使用する目的」はかなり異なるかと思います。
もし、私が「パドルを用いるスイム練習では何の改善を目的とするのか?」と聞かれたら、
「腕のストローク技術を改善するため」と答えようと思います。
実用例
ストロークレート(テンポ)がやけに速く、入水からキャッチ段階で、腕が直ぐに落ちてしまう人に対して、小さめ(手のひら)サイズのパドルを着用して【キャッチで姿勢を作る】体性感覚を得ることを目的とします。
私見②
個人的に考えさせられた点は、結論の1番目で記載したところでした。
【100mオールアウト中の前半50mでは、速度の有意な違いは認められなかったが、後半の50mではパドル有りのほうが有意に速度が高かった】
データを見ると、後半50mで泳速度の落ち幅が少ないことも分かります。
パドルを着用すると、ストロークレートが低下するから後半も疲れにくいのか?タイムが速いから疲れないうちにゴールするのか?ストローク効率が向上して消費エネルギーが小さくなるからなのか?
研究者の方々が示してくださる知見を学び、現場でたくさん思考してたくさん仮説を立てて試していきたいと思います。
上記の実用例に対するオススメパドルは、ストロークメーカーの「小さめサイズ」↓