水の中で「泳ぐ」トレーニングというのは、陸上で走ったり跳んだりするトレーニングと比べて、肉体にかかる負荷が低いと考えられます。
そこで、プールで実施する競泳の練習でも、「強度」を高めるためにチューブを使用したトレーニング方法があります。
・チューブを引っ張って泳ぐ「レジストチューブ」
・チューブに引っ張られて泳ぐ「アシストチューブ」
上記2つのトレーニング方法で、全力100mクロールのパフォーマンスへどのような影響があるのか?
どちらのトレーニング方法がタイム短縮に繋がるのか?ということを比較研究した論文をご紹介したいと思います。
論文紹介
題名:Assisted and resisted sprint training in swimming
著者:Sébastien Giroldら
公開日:2006年8月
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16937967/
論文結論:3週間(週3回)のトレーニング期間では、レジストチューブ群によるパフォーマンス向上効果が最も高かった。
✅3週間の期間後、100mテストのパフォーマンスはそれぞれ、レジスト群(2%)向上、アシスト群(0.8%)向上、コントロール群では(0.3%)向上であった。
✅アシストチューブ群では、3週間後のテストで「ストローク長」の低下および「ストロークレート」の増加が見られた。
✅レジストチューブ群では、3週間後のテストで「ストローク長」は維持、「ストロークレート」は100m後半の50mのみ増加が見られた。
論文内容:3グループに分かれて3週間のトレーニング期間の前後で100mテストを実施しました。
■37名(男性16名/女性21名)、平均年齢17.5歳の競泳選手が3週間の実験に参加しました。
■レジストチューブ群(15名)、アシストチューブ群(11名)、コントロール群(11名)の3グループへ無作為に分けられました。
■実験期間中、月曜から金曜まで週10回(1日2回,1回あたり1.5時間)の練習を実施。トレーニング量は週の平均45.5kmであった。練習内容は、朝はクロールで有酸素性運動が中心、夕方はテクニック練習やメドレーで中強度トレーニングが実施されました。
■月・水・金の夕方に週3回、各グループに分かれてのスプリントトレーニングが実施されました。
🔽レジストチューブ群は、30秒スプリント/30秒レストを6回(計6分)
🔽アシストチューブ群は、25mスプリントを12回(計6分)
🔽コントロール群は、約1分サイクルでの50mスプリントを6回(計6分)
私見まとめ
3週間(週3回)のトレーニング期間として、アシストチューブか?レジストチューブか?と問われたら、「レジストチューブ」のほうが100mクロールパフォーマンス(タイム短縮)にとって良い効果をもたらした可能性が示唆されました。
本ブログでは、毎度のように言っていますが、
「条件」が変われば結果も変わる。という可能性も当然のように認識しておきたいところです。
今回紹介した研究の被験者たちは、効果を測定するためのテストにおいて、どのグループでの平均タイム(100mクロール)でも「60秒以上」かかっていました。
なので、その競技者層にとってはレジストチューブが効率的であったのかも知れません。
研究データはありませんが、平均タイムが「50秒」くらいの集団にとってはアシストチューブが効率的なのかも知れません。
※個人的な現場感覚としては「50秒」くらいの集団でもレジストチューブがトレーニング効果は高いのかなと感じています。
現場レベルでは、たくさんの科学的データの情報を浴び、色んなことを想像しながら粛々とトレーニングを実践していくのであります。
当チームが使用しているチューブはコチラです↑