水泳の競技では、スタート後およびターン後の15mまで水中動作が許可されています。(平泳ぎ競技以外の種目において)
スタート後およびターン後の区間は、レース全体の中で最も速度の大きい区間です。
この区間の重要性は、長水路・短水路を問わず認識されてきているように感じています。
レースタイム短縮を目指すうえで、泳ぎを改善していくことと並んで重要な「水中ドルフィンキック」についてまとめていきます。
ドルフィンキックについて過去に書いた記事はコチラ↓
まずは言葉の整理を
今記事で出てくる言葉の意味合いとして以下に整理しておきます↓
ドルフィンキック
水中での伏臥位(下向き)ドルフィンキックのことを指しています。
アップキック
ドルフィンキック中の、足部が最下点に位置しているところから蹴り上げられていく動作を指します
ダウンキック
ドルフィンキック中の、足部が最上点に位置しているところから蹴り下ろされていく動作を指します。
ドルフィンキックが速い選手の特徴ポイント
足先の最高速度の平均値が大きい
ドルフィンキックが苦手な選手も得意な選手も、ダウンキックにおける足先の最高速度は、そこまで大きな差がないことが分かっています。
しかし、アップキック中の足先の最高速度において、ドルフィンキックが苦手な選手ほど低速である傾向があります。
キック頻度が高い
キック振幅が大きい
アップキックとダウンキックとの対称性が高い
上半身の抵抗値が低い
コチラの画像を見てください↓
この画像は、進行方向に対して上半身による抵抗が大きな形となっています。この上半身による迎え角を小さくするような取り組みも大切やね。
参考文献
題名:The Relationship Between Undulatory Underwater Kick Performance Determinants and Underwater Velocity in Competitive Swimmers: A Systematic Review
著者:Rani Westら
公開日:2022年7月28日
https://sportsmedicine-open.springeropen.com/articles/10.1186/s40798-022-00485-0
題名:Relationships between kinematics and undulatory underwater swimming performance
著者:Allison J Higgsら
公開日:2016年7月19日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27431482/
題名:Importance of sagittal kick symmetry for underwater dolphin kick performance
著者:Ryan R Atkisonら
公開日:2013年11月27日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24290609/
私見まとめ
ドルフィンキックが速い人の特徴とされている項目を述べてきました。
勘の良い読者の皆さんは気付いているかと思いますが、ドルフィンキックを速くなるために上記に取り組む場合、「トレードオフ(両立が困難な点)」がどうしても出てきます。
例えば、キック頻度を高めようとしたらキック振幅は小さくなりがちになるでしょう。その結果、十分に足先を加速しきれずに足先の最高速度も小さくなってしまうことになるかもしれません。
これらのトレードオフを克服していこうとする過程が、速くなるための通る道なのかもしれませんね。
手っ取り早く取り組むべきは「抵抗を減らす」ための動作
推進力を高めるためには、身体の構造的な強さが必要になってくると思います。つまり、筋肉や腱を強化し、筋力やスピードを獲得していくこと。それはある程度の中長期的に計画をもって取り組んでいくことが大切でしょう。
しかし、抵抗を減らすためには「動作中の姿勢」が重要になってくると思います。
ですので、上記「速い選手の特徴」で述べた「上半身の抵抗値が低い」と「アップキックとダウンキックとの対称性が高い」この2つから取り組んでみることをオススメしたいと思います。これらはつまり、身体操作のような能力が求められる項目となります。