水泳の練習内容に関する研究をご紹介します。
SIT(スプリントインターバルトレーニング)で、インターバル中のリカバリー効果を比較調査した研究論文となります。
比較された内容は以下の2点です。
■アクティブ(active)レスト vs パッシブ(passive)レスト
■インターバル45秒間 vs インターバル120秒間
論文紹介
題名:Influence of different rest intervals during active or passive recovery on repeated sprint swimming performance
著者:Argyris G Toubekisら
公開日:2004年11月20日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15778899/
【参加者】
16名(男性8名/女性8名)のレクリエーション水泳選手(平均年齢21歳)が実験に参加
※週に2〜3回程度、泳いでいる被験者です。
【実験内容】
4種類のトライアルを実施。
⑴25m×8本、1本ずつ45秒インターバル(アクティブレスト)
⑵25m×8本、1本ずつ120秒インターバル(アクティブレスト)
⑶25m×8本、1本ずつ45秒インターバル(パッシブレスト)
⑷25m×8本、1本ずつ120秒インターバル(パッシブレスト)
※アクティブレストは100mレースの60%泳速度で泳ぎました。
■25mスプリントの8本目が終了後、6分間の休憩を取り、50mスプリントを実施。
【結果】
✅パッシブレストに比べてアクティブレストでは、インターバルの長さに関わらず、スプリントのパフォーマンスの低下が明らかであった。
✅25mスプリント8本の後に取った6分レストは、アクティブまたはパッシブに関わらず、その後に実施された50mスプリント泳に影響の差は見られなかった。
✅血中乳酸濃度は、パッシブに比べて、アクティブレストを実施した場合のほうが明らかに低下していた。
私見まとめ
パッシブレスト(動かずに回復) vs アクティブレスト(動いて回復)
アクティブレストを実施した時のほうがパフォーマンス(25m×8本の平均タイム)が低かったという結果でした。
アクティブレストは、100mトライアルの60%泳速度で実施されました。
この強度でのアクティブレストでは、回復よりも体力消耗が上回ったのかもしれません。もっと低い強度でのアクティブレストを実施した場合は結果がどうなるのか気になります。
血中乳酸濃度は?
アクティブレストを実施した場合はパッシブレストに比べて、「血中乳酸濃度」の数値低下が明らかであるという結果が出ています。
乳酸を疲労の原因物質であると考えると、矛盾を感じるかもしれません。
※「乳酸=疲労物質」だと思われている方は、知識のアップデートが遅れているかもしれません。当ブログ記事などでも紹介しておりますので探してご覧ください。
乳酸の時系列を簡単に説明
25m×8本スプリント(高強度運動)を実施することによって、解糖系というエネルギー回路が多く働き、乳酸が発生。
その後、アクティブレスト(低強度運動)を実施することによって、全身血流が増加し、乳酸がクリアランスされたと考えられます。
また、高強度運動によって発生した「乳酸」は、活動エネルギーとして、筋肉や心臓で再利用されることが分かっています。
※この現象を学術的には、「乳酸クリアランス」や「乳酸シャトル」と呼ばれたりしています。私はイメージしやすいように「乳酸リサイクル」と呼ぶことが多いです。
乳酸の働き
(1)エネルギー源となる
(2)糖新生の前駆体
(3)シグナル伝達の物質
(2021:George A. Brooks)
主に上記のような働きがあると考えられています。